才能無しは喰らって生きる ~Level0少年コウ、未発見スキル【喰種】で英雄へ至るまで~

@into2214

第一話 誕生

第一話 誕生


雪は、音を殺して降り積もっていた。


白一色の世界で、少年は腹を抱えてうずくまっている。

名前はコウ。年は十三。


……もう何日、何も食べていないだろう。


最後に口にしたのは、誰かが捨てた硬くなったパンの欠片だった。

それも三日前だ。


「……寒い……」


指先の感覚がない。

息をするだけで、肺が痛んだ。


才能判定の儀式の日。

剣も、魔法も、何一つ反応しなかった。


【Level0】


その言葉を聞いた瞬間、

周囲の目が冷たい石に変わった。


父は何も言わなかった。

母は泣きながら――だが、扉は確かに閉められた。


雪の下に、黒い影が見えた。


近寄って、ようやくそれが“人”だとわかる。


凍死体。


青白い顔。見開いたままの目。

既に魂は抜け落ちている。


「……」


吐き気が込み上げる。

足が震え、逃げろと頭が叫ぶ。


だが腹が鳴った。


生きたい。


ただ、それだけだった。


コウは歯を食いしばり、

凍った肉に歯を立てた。


次の瞬間――


――――――――――

【ユニークスキル《喰種》が発動しました】

【対象:人族】

【スキル《剣術弱》を獲得しました】

――――――――――


視界が赤く染まり、

頭の奥に“知らない記憶”が流れ込んでくる。


剣の握り方。

足の運び。

間合い。


コウは雪の中で、血まみれの口のまま呆然と立ち尽くした。


「……これが……」


才能?


その夜、少年は初めて“力”を手に入れた。

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