第五話 少女

誰かの声がきこえる。

お前は一生一人だ。誰にも愛されずに死んでいくんだ。でもお前は歩く。だから征けよ。ずっと、もうずっと。


耳をつんざく様な轟音。これまで黙っていた世界がいきなり悲鳴をあげたようだ。目を開けると巨大なクレーターの中にいた。やけに視界が広い。全身から魔力が溢れ、意思とは関係なく蘇生魔法と治癒魔法がかけられている。

夜空の銀河は蛍が飛ぶ川のような容貌で、流れ続けている。

散開星団が来る。

「 」

魔力と触れ合い、星が纏う炎が炎色反応を起こし七色に光る。次々とコウモリに向かって噴水のように小隕石が降り注ぎ、一匹残らず墜落させた。私という器から溢れ、零れ落ちる魔力が宙で虹色の泡沫になって消える。

宇宙が見ている。

魔力の流れから出所を探る。

「 」

浮遊し、コウモリを操っている小さな人影に向かおうとした瞬間、魔法が解けた。

膝から崩れ落ちて、咄嗟に手をつく。

今のは…

周りを見ると隕石が落ちたようなクレーターが私を中心に形成されている。現実とは思えない妄想が頭に浮かんだ。

降ってきた星が私に当たった。

「魔法の起源、イフ。それは宇宙に存在し、神様達がひとつひとつの物質、生き物に分け与える。イフには無限の魔力があるためたまに暴走して星を降らせる。」記憶で先生が言う。

宇宙から直接魔法をかけられた星と触れたことで、瞬間的に無限の魔力を手にした?でも星を操るなんて、ただの人間にはどうやったってできない。それこそ、神様くらいしか…これ以上考えても絡まる自信しかない。神様からのご加護だった、生きていて良かったと考えることにした。

治癒魔法には精神の回復効果もあるのか、私は死にかけたというのに強気に、能天気になっていた。近くに落ちていた太い木の棒を掴み、先ほど掴んだ相手の居場所に飛んで行く。と、その前にテントまで戻りまるを回収した。猛スピードで飛んで行くとそこにはさっきは気づかなかった木で組まれたような大きな柵があった。その向こう側をかけていく小さい背中。まるが拘束魔法をかけ、その人は光る実態のない縄に縛られた。

「ナイス」まるはにゃあと鳴いた。

私より二回りくらい小さなその背中に近づいていく。灰色のマントにフードをかぶっているようだ。フードを取ると褐色の肌と銀色の髪の少女が、大きな目で私を睨みつけていた。


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御茶の魔女 @fuwa_rate

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