我が子は可愛く、労働はくそ
J.D
我が子は可愛く、労働はくそ
私は、この世から労働なんぞなくなればいいと思う。
朝から晩まで、カタカタとパソコンに向き合い、小説を書いて、曲も作って。そしてついでに株もチェックして・・・なんなんだ?
楽しいと思うときもある。が、しかしそんなのはほんの一瞬。うまく行った時のみ。
大抵だるいものだ。
私のパソコンはマックブック製なのだが、最早パソコンの見すぎで、マックブックのロゴを見ただけで不買運動を起こしたくなる。
そんな私を癒やすのは、愛しの息子と娘である。
息子は今年で17歳。娘は15歳。
なんと美しい子たちなのだ。
私自身の容姿は知らないが、妻の影響だろう。勿論妻も愛しているが、なにより子どもたちのあの美しさ・・・だめだ、抱きしめ続けたい。
「うっせぇクソ親父抱きついてくるな!」
「ねぇパパほんとにきもいよ!」
と、抱きつこうとするたびに言われる。その癖、あえて少しそっけなく、といっても普通に会話するが、そういう密着した絡みをなくして、言葉数少ない父として振る舞ってみたら、ものの数日で物寂しい顔をする。
可愛すぎるぞ我が子達よ!
長男の名前は春樹という。
元々は女性と見間違うような透き通る肌なのだが、陸上部のために日焼けしている。その日焼け具合がまた美しく、チョコレートのようだ。
少しツリ目(キツネ顔というのだろうか?)気味で、声は男性にしては少し高め。
真面目なのだが、そのせいか少し反抗気味。
そこが可愛くて仕方ない。
娘の名前は
彼女は兄と違い、漆のような髪、大きくぱっちりとした二重、桜のような白い肌の持ち主。
知性あふれる雰囲気で、実際彼女は何度も学年一位を取り続けているらしい(子どもたちの学歴には、申し訳ないが興味ない。勿論褒めさせてもらうが)。
彼女は基本的には優しいのだが、あまりに私が絡みすぎて、気持ち悪いとのこと。
だが最近塩対応が増えて悲しい。
「なんでだと思う?」
「そりゃあなたが気持ち悪いからでしょう?」
妻からも気持ち悪いと言われてしまった。私は終わりなのかも知れない。
*
父をどうにかしてください。
・・・・・・失礼、ご挨拶が先でした。私は綾野恵魅といいます。
先程の父の文を見ていただいたらおわかりかと思いますが、父は狂っています。
なにかにつけては、
「めぐみちゃぁん!それは何を読んでるの?あ、伊豆の踊り子?僕が勧めた本じゃんふふふふふ」
などと言ってくるのです。何が「ふふふふふ」なのでしょう?理解に苦しみます。
挙げ句の果てには、
「めぐみんそういや彼氏は出来たの?」
「・・・・・うん・・・・・」
「そうかぁわっははははは」
と、高笑いして頬をぷにぷにと触ってきたこともあります。ネジが緩んでるのでしょうかあの人は。
かと思えば、急に厳格な態度を見せてきて、かまってほしそうにこちらを見てきます。
大方、私たちが寂しがっていると思っているのでしょう。お馬鹿な人です。
しかし妙に顔がいいのと、多趣味かつ有名な小説家、作詞家作曲家ということもあり、友達からは
「恵魅のお父さん本当に羨ましい!」
などと言われます。娘にセクハラする変態父のどこが羨ましいのでしょう?
・・・まぁ確かに、私が高校受験で苦しんでいた時、忙しくて疲れていたはずなのにずっと悩みを聞き続けてくれたのは、今でもずっと感謝していますが・・・。
それに、私たちが本当にしたいことを見つけやすいようにと、時には疲れた体に鞭打ってパパ自身が付き添ってずっと色々なことをさせてくれているのは、本当にありがたいのですが・・・。
はぁ・・・あれでもう少しまともなら、堂々と大好きと言えるのですが。
・・・・今のは父には内緒です。
*
馬鹿親父を捕まえてください!
・・・あ、すいません。俺は綾野春樹といいます。
俺の親父は、はっきりいって馬鹿です。
この前なんて、俺が一人でリビングで寝てたら、笑い声が聞こえたので目を開けたら、俺の方を向いて父が添い寝をしていました。
あまりに怖かったので、咄嗟に叫んだら、
「はるちゃんったらもぉ、叫んじゃって可愛いぃぃん!」
って、今でもトラウマになってるクソキモいノリでほっぺたをツンツンとなぞってきたのときは、思わず手が出ました。出そうになったのではありません。出ました。
「うふふふふ・・・息子のパンチを受け止めるのは、父の務めだよ」
と、なんでか笑ってました。あまりの恐怖でその夜眠れませんでした。
無駄に有名人だからか、みんなからは
「お前の父さん、ガチえぐいよな?」
「それな。天才って感じする」
天災の間違いじゃないか?
・・・・昔、キャンプに行った時、川に流されそうになったとき、みんな慌てふためく中父だけそのへんのロープを即座に使って
「春樹!掴まれ!」
っていって助けてくれたのは、すごくかっこよかったんです。
あと、俺が成績が下がって陸上やめないといけないってなって鬱になりそうだった時に、
「本当にやめなきゃいけないか?お前なら、どっちも出来るはずだろ?お前は天才なんだから」
っていって励ましてくれたのはすごく、ありがたかった。
・・・いつものさえなけりゃ、もっと尊敬できたのに。
我が子は可愛く、労働はくそ J.D @kuraeharunoto
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