幕間No.1 理科部冒険記
※このエピソードは、中学時代に文化祭に向けて制作した演劇「理科部冒険記」の台本の内容を移植した番外編となります。
「プロローグ」の原作に該当するため、本編のネタバレを含む場合がございます。予めご了承ください。
本編とのストーリーや設定、表現の差異などの改変点にも着目しつつ、本シリーズにおける始発点を楽しんで頂けたら幸いです。
・ ・ ・
(暗転)
主人公「理科部の3分クッキング〜!」
主人公「さあ今回もやって参りました、」
主人公「理科部の3分クッキングのお時間です!」
主人公「司会は私、ヨシヒコでお送り致します。」
主人公「その前に、部屋が真っ暗なので、照明をつけますね!」
(照明を光らせる)
(光に包まれる)
主人公「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」(倒れる)
(暗転)
・ ・ ・
主人公「はっ…!?」
戦士「気がついたか。」
主人公「ここはどこだ!?あなたは…」
戦士「落ち着くんだ。」
戦士「私の名前はリカブ・インだ。この町で戦士をしている。」
戦士「君は昨晩、私が夕飯の買い出しに出かけていた所に」
戦士「空から落ちてきたんだ。」
主人公「空から!?でも僕は…」
戦士「ああ。不思議なことに傷一つ無かった。」
戦士「だが君は意識を失った状態だったから」
戦士「ここ…つまり私の家で保護したんだ。」
戦士「それで聞くが、君はどうして空からおちてきたんだ?」
主人公「分かりません…。突然光に飲まれて…。」
主人公「気がついたらここに居たんです…。」
戦士「ふむ…光に飲まれてか…。」
戦士「君、名前は?」
主人公「ヨシヒコです。」
戦士「ヨコヒシ君。」
主人公「あの…ヨコヒシじゃなくてヨシヒ…」
戦士「君は我々の住む世界とは違う"異世界"から」
戦士「この世界に来たようだ。」
主人公「…え?」
主人公「あの…何処を見て僕を異世界人と判断したんですか?」
戦士「異世界からやって来た人間は皆、その」
戦士「"I am 異世界人"と書かれたシャツを着ているんだ。」
主人公「うっわ何コレ恥ずかしい!」
主人公「こんなシャツ着た覚え無いんだけど!?」
戦士「この世界ではそう珍しいことじゃない。」
戦士「異世界から何かのはずみでこの世界に飛ばされてきた」
戦士「人間は数多くいるんだ。」
主人公「いや、あの、待って下さい、」
主人公「僕は元の世界に帰れるんですか?」
戦士「分からない…。戻れないかもしれない。」
主人公「そんな…。」
戦士「君にとって受け入れがたいことだろう。」
戦士「それと、非常に心苦しいが、私の安月給では」
戦士「君を養うことが出来ない。」
戦士「君が一人で生きていくには仕事に就く必要がある。」
戦士「明日、ハローワークを見に行こう。」
主人公「分かりました…。この世界で生きる覚悟を決めます。」
主人公「そういえばリカブさん、戦士をしていると」
主人公「言っていましたけど、何と戦っているんですか?」
戦士「ああ…まだ話していなかったな。」
戦士「この世界にはモンスターと呼ばれる怪物が蔓延している。」
主人公「…モンスターも怪物も同じ意味だと思うんですが…」
戦士「その元凶は魔王と呼ばれる怪物の長にある。」
主人公「あれ?無視されてる?」
戦士「その為、我々は魔王を倒す手段を模索し続けている。」
戦士「この世界に魔王がいる限り、平和が訪れることは」
戦士「決して無いんだ。」
主人公「"覚悟を決める"とは言ったけど…」
主人公「それにしてもとんでもない所に来てしまったな…。」
(次の日)
戦士「着いたぞ。ここだ。」
主人公(中に入り)「すいません、仕事をさがしてるんですが…。」
ハロワ職員「分かりました。3番カウンターへどうぞ。」
3番職員「よお!」
戦士「一応我々は客なんだぞ。敬語を使ったらどうだ!」
3番職員「うるせえ!そんなの知るか!」
3番職員「俺は今日で退職なんだ!今の俺は無敵なんだ!」
3番職員「ヒャッハァァァァァァァ!!!」
主人公「無責任過ぎる…。すいません職員さん!他の人呼んで下さい!」
ハロワ職員「では、ここから80km先の92374番カウンターへどうぞ。」
主人公・戦士「遠っ!?」
(20時間後)
9万職員「すいませんねー。このハローワーク、混雑しているもので…」
戦士「このハローワークのカウンターは何番まであるのだ?」
9万職員「数えたこと無いんで分からないです。」
主人公「歩き疲れた…。」
9万職員「お疲れ様です。と、言いたい所ですが、」
9万職員「今から職業適性検査を受けていただきます。」
主人公「ええ…。」
9万職員「すぐ終わります。こちらのあみだくじをやって下さい。」
主人公「え?あみだくじで適性検査すんの?」
主人公「まあやるけど…。5番の線で。」
9万職員「どうやら、あなたには勇者の素質があるようです。」
戦士「なんと!?ヨシヒコ君、凄いでは無いか!」
主人公「えっ?え?勇者?」
戦士「我々人類が魔王を倒す為の唯一の希望だ!」
戦士「そうとなれば、私は君に協力しよう!」
主人公「待って!?尚更あみだくじで分かるような物じゃ無いと思うんですけど!?」
9万職員「魔王討伐に行かれるのですね…。」
主人公「言ってない言ってない!」
9万職員「ならば私も協力しましょう!」
9万職員「実は私、副業で魔術師をしているんです。」
戦士「ほう、それは頼もしい!是非頼む!」
主人公「待って下さい!僕は魔王討伐なんて…」
戦士「大丈夫だ、今の君には勇者の資格がある!」
主人公「ただあみだくじ引いただけなんですけど!?」
9万職員「勇者様…我々を信用…」
主人公「してないよ?むしろ怪しいと思ってるよ?」
戦士「ヨシヒコ君、怖いのは分かっている。」
主人公「リカブさん…?」
戦士「だが君が動かなければ、この世界の人々は」
戦士「危険にさらされたままだ。頼む…」(土下座)
主人公「…分かりました。やります。」
9万職員「ヤッタァァァァァ!」
戦士「ありがとう、"勇者"…」
戦士「そうと決まれば、すぐにタクシーで魔王城に行こう!」
主人公「え?諸悪の根源の元にタクシーで向かうの?」
9万職員「この辺りは交通網が発展してますからね。」
主人公「交通網の発展とか言うレベルじゃないですよねそれ。」
(タクシー乗り場へ移動)
戦士「魔王城まで。3人で頼む。」
運転手「了解しました。ブッ飛ばして行きますね。」
主人公「ブッ飛ばさないで下さい。」
9万職員「なんで私だけトランクなんですか?」
運転手「ボンネットに乗るよりマシでしょう。」
運転手「では、発進します。」
(魔王城へ移動)
運転手「長旅お疲れ様でした。」
主人公「ゆうて30分位だった気が…。」
戦士「"近くて便利、魔王城!"ってキャッチコピーでCM出してる位だしな。」
主人公「そうだったんですか…?」
運転手「それで、代金の方ですが、1人で8000円の所、」
運転手「3名でのご乗車なので、8000の3乗で、5120億円になります。」
戦士「ふざけるな!法外だ!」
9万職員「トランクに乗せといてそれは無いですよ!」
主人公「ボッタクリだ!人間のすることじゃない!」
運転手「"人間のすることじゃない"…?」
運転手「貴様…何故俺が人間じゃないと分かった…?」
主人公「え?」
9万職員「へ?」
戦士「ん?」
運転手「そうさ!俺の正体はモンスターさ!」
運転手「魔王軍の資金不足解消の為に、こうして」
運転手「タクシー運転手として働いてきたのさ!」
主人公「も、モンスター…」
9万職員「気を付けて下さい…!」
運転手「俺の正体を知った以上、生かしておくわけにはいかん!」
運転手(拳銃を取り出し、構える)「消えて貰おう!」
運転手(拳銃を撃つ)
戦士「危ない!」(銃弾を盾で防ぐ)
戦士「貴様、戦いで武器を使うとは卑怯な!」
戦士「制裁を受けるがいい!」(ロケット砲を取り出し、撃つ)
運転手「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
門番「何事だ!」
戦士「お前もだ!喰らえぇ!」(ロケット砲を撃つ)
門番「何っ!」
門番「ぐはっ!貴様!俺でなければ大怪我だったぞ!」
戦士「馬鹿な…。ロケットランチャーが効かない!?」
門番「貴様…。戦いに兵器を用いるとは…それでも勇者か!」
戦士「勇者は私ではなく後ろにいる彼だ!」
主人公「僕に振らないでくれません!?」
門番「もういい…。茶番は終わりだ…。2人まとめて始末してくれる!」
主人公「え?2人?」
戦士「92374番カウンターの職員がいないぞ!」
主人公「あ!あそこにあったタクシーが…。」
9万職員「見て下さい皆さーん!一回タクシーを運転してみたかったんですよー!」
門番「うわっ!?何だ!?タクシーが突っ込んで来るぞ!?」
門番「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」(倒れる)
戦士「92374番カウンターの職員!ここにいたのか!」
戦士「とにかく、門番も倒したし魔王城に乗り込むぞ!」
9万職員「それなら私のタクシーに乗ってって下さい!」
戦士「ヨシヒコ君、君も乗るんだ!」
主人公「え、ちょっと…」
9万職員「発進!」
主人公「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
(魔王城へ侵入)
9万職員「お邪魔しまーす!勇者一行でーす!」
戦士「遂に来たか…悪の根城…」
受付「いらっしゃいませ…こちら魔王城案内窓口です…。」
受付「ご要件は…。」
9万職員「あ、すいません。魔王討伐に来たのですが…。」
受付「その前にお客様…城内での車の走行は禁止でして…。」
9万職員「そうなんですか…。」
主人公「なんでちょっと悲しそうにしてるんですか…。」
戦士「あのタクシーは、92374番カウンターの職員に」
戦士「とって家族のような物なんだろう。」
主人公「いや、さっき拾ったヤツですよね。」
受付「えっと…魔王討伐に来られたのですね…?」
受付「魔王様は現在留守にしております…。ですがもうすぐ…」
魔王「たっだいまぁー!」
受付「お帰りなさいませ。」
魔王「おや?お客様かい?」
受付「こちら、勇者一行です。」
魔王「ほう…お待たせして申し訳ない。私の部屋に案内しよう。」
魔王「着いて来たまえ。」
(魔王の部屋の前に移動)
魔王「よし…来たな勇者一行!ここが私の部屋だ!」
魔王「さあ、中に入るのだ!」
9万職員「はーい!」
主人公「素直…」
9万職員・主人公(魔王の部屋に入ろうとする)
戦士「待った、罠かも知れない!」(爆弾準備)
主人公「リカブさん…それは?」
戦士「爆弾だ!何があるか分からないからな!」
主人公「ちょっと…何考えてるんですか!?」
9万職員「いいですね!私も手伝いましょう!」
戦士「伏せるのだ、ヨシヒコ君!」
(爆発)
魔王手下いっぱい「うわあああああああああ!?」(倒れる)
主人公「な…何だこれは!?」
魔王「何と!?入って来た所を手下どもに襲わせる算段だったのに…」
戦士「次はお前だ!魔王!」
魔王「ふっ…勇者よ、私の手下になれ。そうすれば、世界の半分をお前にやろう。」
主人公(戦士・9万職員と耳打ち)
主人公「うーん、別に世界の半分貰ってもなあ…」
魔王「何だと!?なら、お前の望みは何だ!」
主人公「PS5!」
魔王「待ってろ、今メルカリで検索するから!」
主人公「今です!」
戦士・9万職員(後ろから魔王を羽交い締め)
主人公「いくぞー!準備するから待っていろ!」
(実験準備タイム)
主人公「3…2…1…」
魔王「待て!何をする気だ!」
主人公「デストロイヤァァァァァ!!!」(空気砲発射)
魔王「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」(倒れる)
(空気砲解説タイム)
9万職員「やった!遂に倒したぞ!」
戦士「これで世界の平和は保たれた…!」
主人公「やったー!…ところで、この後何をすれば元の世界に帰れるんですか?」
戦士「いや、帰れないぞ。魔王と異世界に関わりは無いからな。」
主人公「え、じゃあ僕は、今後もこの世界で暮らすんですか?そんなあ…」
戦士「おしまい!!!」
完
・ ・ ・
ここまで読んで下さりありがとうございます。
文化祭において理科部に与えられた上演時間は15分と短く、その都合上かなり急ぎ足なシナリオとなっておりますが、楽しんでいただけたら幸いです。
本シナリオのリメイクにあたる「プロローグ」、続編の「理科部冒険記NEXT」も是非よろしくお願いします。
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