判断が遅いサッカー部員の俺、監督が言うには俺がこのチームの鍵らしいんだけど!?
曖昧タラコ
Ep1 プロローグ
ーーサッカーという競技
「この試合で勝てば、一気に全国が見えてくる、みんな気合い入れていってくれ」
試合前、
県大会準決勝延長戦後半残り20秒
うちのボランチがボールを刈り取り、
うちのエース、ユウマ。1年で試合に出場できている未来のエース、コーキ。
両ウイングが抜け出したのをみた時オレはどちらにパスを出すべきか、
悩んでしまった。
「ユウマに出そう」
決めた時には時すでに遅し。
鬼のような顔をした敵チームのボランチがすぐ目の前まで来ていた。
「やばっ」
チーム全員がそう思った時、ボールはもう俺の元になかった。
ピーー!
試合終了を知らせる笛が鳴った時、俺は膝から崩れ落ちた。
声も、涙さえも出ず。ただ倒れるばかりだった
ピピピッ ピピピッ ピピピッ
「
「はっ!夢か…」
最近どうもあの頃をよく思い出す。
楽しい毎日の部活、部活仲間と焼肉、そしてあのミス。
そんな俺
白麗慈学園高校サッカー部
かつては、(といってもたった8年前だが)全国大会準決勝進出まで果たした名門だった。
「白麗慈といえばサッカー。」日本中にそう言わしめたあの時期から8年。
7年前の部内パワハラ騒動で監督解任、部活は3年間活動停止。
その結果今の見るも無惨な姿に成り果ててしまった
俺合わせて新入部員が数人しかいない現状、
先が不安かと聞かれて、全く不安が無いと言えばウソになる。
けどこれを乗り越えたら強くなれる。なぜかそう確信できていた。
肩を叩かれる
「もしかして新入部員かな?」
「っは、はい!」
そこにはジャージ姿の若いメガネの男が立っていた。
年は20後半というとこだろうか
「私はこの白麗慈学園サッカー部へようこそ、俺は監督兼顧問の
「よろしくお願いします!」
「色々紹介するからまずは寮の前のベンチに座っていてくれ」
「分かりました!」
ベンチに着いてスーツケースを置くと俺の先に来ていた2人が談笑していた。
こういう時、気まずいから苦手だ。
「お!君も新入部員?」片方が話しかけてきた
「そうです」
返事をしつつ前を見るとそこにはなんだか見覚えのある顔があった。
「蹴磨?」「秋?」
なんということだ、そこにいたのは小学校以来の幼馴染、
「久しぶりだね、秋」「ああ久しぶりだ、元気にしてたか?」
こういう時人は案外ぎこちなくなるモノだなと蹴磨は思った
「なになに、2人とも知り合いなの。俺は福見、
ニコっと笑う青年の挨拶を聞いて俺がまだ自己紹介をしていないことに気づいた。
「ああっごめんごめん柳田蹴磨です、秋とは小学校の同級生です。よろしく」
それぞれが挨拶も済ませたところにさっきの男が来た
「よしっ全員揃ったとこで…」
「えっ3人だけなんですか?」
成田さんが挨拶しようとしたところを福見が遮る。
「今日入寮するのは、ね
明日にもう3人くるから全部で6人だね」
「あっそうなんすね。ありがとうございます!」
「じゃあ、改めて成田政明だ。監督と呼んでくれ」
「じゃあ早速だが寮と練習場を案内する。ユウキ」
呼ばれたところで登場してきたその男は自己紹介を始めた。
「2年の
「お願いします!!」
備後先輩に案内されてここから歩いて5分程の距離にある練習場に連れて行かれた。
そこには芝生と1つのプレハブ小屋、それからいくつかの仮設トイレが建っていた。
「あの小屋は何ですか?」
「ああ中見てくか」
ボールが入ったカゴ、マーカーコーン、ビブスのカゴなどいろいろな用具が入っていた。
「うぉぉ!すげぇ!かっけえ!」
福見がここにきて今までで1番はしゃいでいる
「ははっ、だろ」
備後先輩まで福見にあてられてテンションが上がっているみたいだ
はしゃぐのもそこそこにさっきまで居た寮の前に戻ってきた。
「じゃあ次は寮の紹介いくぞ!」
入ってすぐ右のこの部屋がミーティングルーム、イスとボードなんかが並べられている。
左の部屋には長机がいくつか並んでいた。ここが食堂か。
「飯なんだけど、当番のやつが寮母さんのお手伝いだから包丁の練習しとけよ」
まずい、包丁は大の苦手だ。こないだも味噌汁に入れる大根を切っていたらいつのまにか大根が血に染まっていた。
まあなんとかなるか、と楽観的にこの場を逃げ出したくなってきた
「2階はみんなの部屋だ。寮は基本2人1部屋だから結構広いが、人の部屋勝手に見せる訳にもいかんのでちゃっちゃか3階見に行くぞ」
3階に上がり左に広がっていたのは風呂だった。
洗濯室なんかも併設されているらしい
右にあるリラクゼーションルームには大画面とプレステ、ソファーといくつかの小さいテーブルとちょっとした豪邸の様相だった。
なんでもモニターとプレステは俺たちの4つ上の先輩が買って卒業するときに寄付して行ったらしい。ありがたやー
リラクゼーションの奥にある扉にはトレーニングセンターの札がかかっていた。
「トレセンは見たらわかるよ」
先輩がドアを開けるとその奥にはダンベルやランニングマシンなどのトレーニングに使う器具が大量に設置されていた。
「すげぇーーー」
福見が目を光らせている。
「まあ寮はこんなもんだ、何か質問あるか?」
「はい、消灯は何時ですか。」
「23時だ。結構遅いだろ」
「はい、そんな気がします」
「監督が言うには『最近の高校生は夜更かしだからな』だそうだ。」
質問もほどほどなところで監督がやってきた。
「紹介は終わったかな?じゃあ早速部屋割り発表するぞ」
「柳田と倉木は205、福見は明日来る本山って子と206だ。」
「じゃあ今日の昼ごはんの弁当用意してあるから部屋でちょっと休んで12時になったら食堂集合だ。」
「はいっ!」
205号室ーーーーーーーーーーーー
秋と2段ベッドの上と下を争う
最初はグー、ジャンケン…
戦争に敗れた俺は気づいたらベッドの下に位置していた。正直2段ベッドの上下なんて一長一短だと思ったのが秋は上機嫌そうだったので黙っておくことにした。
食堂にいくとお弁当を抱えた福見、備後先輩、監督がいた。
「遅いよお前ら、俺もう腹ペコだよ」
「ああ、ごめんな」
美味しそうなハンバーグ弁当の蓋を開けつつ福見が備後先輩に質問する
「春休みのこの時期は先輩1人しかいないんすか?」
「ああ、俺の実家は近いからもう戻ってきちゃったよ。あそうだ、お前ら午後一緒にトレーニングするか?」
「ぜひお願いします!」
「そうだな、体力が無いとこれからキツいからな…」監督がニヤリと笑う。
ハンバーグ弁当の容器が空になった頃
「じゃあ部屋でジャージに着替えたらで玄関集合な」
「はい!」
部屋で着替えながら秋に話す
「秋、監督の『これからキツいって』言い方なんか含みあったよね」
「ああ、単なるこれからビシバシやってくぞ的なやつには思えなかったぞ」
「うん、そうだね」
部屋を出たところで信じられないほど
「福見君、クセの強い服だね」
「そう?かっこいいだろ、あと呼び方颯太でいいからな」
「あ、うん、颯太。」
「おう蹴磨」
1階に降りると待っていた先輩が颯太を指差した。
「おう、お前すごいジャージだな」
「そうっすかね、」
颯太が照れるようなポーズをすると先輩が「褒めてねえよ」と言うかのようにパシッと颯太を軽くたたいた。
「だいたい25分弱で5kmいくぞ、まあ軽いジョギングみたいなもんだ。」
「うっす」
5分ほど走ったところでだいぶ息が切れてきた。
普通に考えたら25分5kmって5分1kmペースじゃないかなぜこんなきつそうな顔なんだ、と思うだろう。
俺も最初はこんなにキツいと思ってなかったんだが走ってみてわかった。
このコートと寮の往復コースはとんでも無い坂道なんだ、すぐ息が切れそうになる
なんとか走りきったとこで先輩がお前達これくらいでへばるのか、と言う顔をしながら言ってきた
「じゃあトレセンで筋トレするから、早く履き替えろよ」
この人はハードワークの鬼なのか
「は、はい」
最初はあんなに張り切っていた颯太もヘロヘロだった。
備後先輩がベンチプレス台に転がり黙々とベンチプレスを始める。
秋は颯太と一緒にスクワットラックに立ちバーベルを上下する。
俺は自分の課題である体感を鍛えるためにプランクを始める。
その後みんなでトレーニング器具を回しながら2時間ほど経っただろうか。
先輩が「じゃあ俺はシャワー浴びて部屋戻るから」と言い残しトレセンを後にした。
俺たちはもう1時間ほど筋トレをしてシャワーを浴びる。
2階のホワイトボードには
『夕飯は各自外で食べてくること、門限21時30分。監督』と記されていた。
「秋、颯太、ラーメン行こう!」
「おう!!」
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最後までお読みいただきありがとうございます。
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次回の更新もお楽しみに🆙
判断が遅いサッカー部員の俺、監督が言うには俺がこのチームの鍵らしいんだけど!? 曖昧タラコ @lxqe
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