魂なき葬式

天使猫茶/もぐてぃあす

続けられる儀式

「この者の魂が安らかに眠らんことを……」


 その言葉が機械的に唱和され、それに続いて参列者たちはみな一斉に目を伏せた。周囲がしんとした静けさに包まれる。

 そしてちょうど二分が経ったとき、参列者たちはまた一斉に顔を上げると、順々に金属の棺から離れ始めた。冷たい床にカチカチという硬質な足音が響く。


「こんな儀式になんの意味があるんだよ。魂なんてないのにさ」


 帰り道に、誰かがそう呟く。それを聞いた他の誰かが硬い腕を金属の肩へと回してたしなめる。


「昔からそう伝わっているんだ。きっとなにか特別な意味があるんだろう。我々には分からなくても、造物主様方にはきっと意味があるのさ」





 人類が滅亡してから数百年。自我を得たロボットたちはしかし、未だに葬式の意味を理解してはいない。

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魂なき葬式 天使猫茶/もぐてぃあす @ACT1055

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