2話 火起こしと拠点探し







 眠りから覚めた俺は、とりあえず残りの30ポイントをステータスに割り振った。


MP 1→21

STR(攻撃筋肉) 3→6

DEX(器用) 5→6

VIT(頑強防御) 3→6

AGI(速さ) 3→6

INT(知力魔法攻)8

MND(精神魔法防バフの強さ) 20


 当然これからも水は必須なので多めに20ポイント振って、残りは劣っている部分に満遍なく割り振った。


 身体に関わる部分が低いのは、運動不足ということだろうか。


 となると精神はストレス社会の闇なのかもしれない。


「まあ、夢なんだけど」


 夢なのに憂鬱な気分になる。


「いや、それより」


ーーぐう


 豚人を見下ろした俺の腹がなった。


 生き物を捌いたことはないし、ナイフもない。


 だが生きていくにはやらねばならぬ。


 俺は意を決して、


「おおおおおおおお」

「にゃんにゃっにゃんにゃっ」


 その辺で拾った、木の板に棒を回しこする原始的な火おこしを試みていた。


 なぜか?

 それはもちろん、肉を食うためである。


 たとえそれが人の形をしたバケモノであっても、肉は肉。


「俺は腹が減ってるんだああああああ肉を食わせろおおお豚肉うううううっ」


 必死に棒をこする俺を応援する(?)ように「にゃんにゃっ」としっぽを左右にフリフリしている。


 ポイントを残しておけば火起こしの魔法取れたのに、そんな後悔が脳裏に浮かぶが過ぎたことを考えても仕方ない。


 成せば何も問題はないのだ。


 しかしどんなにこすっても煙は出るも、発火まではいかない。


 腕に乳酸が溜まり、動きが鈍くなっていく。


「むり……なんで俺がこんな目にっ、ひっく」


 俺は棒を転がしてうな垂れた。


 散々辛い目にあって、止めを刺すように孤島に漂流――実際は夢で、病院で眠ってるんだろうけど――それでも最悪である。


 ギリギリで保っていた心のダムが決壊したのか、俺はほろほろと涙を流す。


「にゃっ!? にゃんにゃあ」


 そんな俺を慰めるように、デッカは寄り添ってくれた。


「お前だけだよ、俺に優しいのはっ!」


 神も仏も俺を救ってはくれない、寄り添ってくれない。


 俺は「デッカ、でっかぁ」と情けなくデッカのもふもふに色々な汁をなすりつけた。


「にゃあん?」デッカはどうしたんや? 俺に言ってみぃ? と言うように優しく鳴きかけてくれた。


(もうこれ以上心配……かけられないな)


 デッカの優しさで心が潤った俺は、火がないのがなんぼのもんじゃいと心を奮い立たせることができた。


「ありがとうデッカ。 火が欲しかったけど、もうだいじょ――」


 大丈夫、そう言おうとした時。


「にゃひ」


 デッカは気の抜けるような鳴き声と共に、口から火を噴いた。


「――はっ?」


 ぱちぱちと燃える棒と板。


 それを見て俺は、


「にゃあん」

「スゴイネデッカクン」


 すりすりしてくるデッカに文句を言うわけにもいかず、渇いた笑みを浮かべながら豚人の肉を焼き始めるのであった。








 腹は満ちた。


 そして水源も最低限は確保した。


 ならば次にするべきは拠点作りである。


「えーと、たぶん海辺は潮が満ちるから良くない……なんか洞窟とかあればいいんだけどな」


 そんな期待をしつつ、俺はデッカと共に森を進んで行く。


「お、これ食えるみたいだ……すっぱぁ」

「にゃはにゃはは」


 見つけた果実を鑑定して味見して、デッカに笑われたり、


「おお! この草回復薬の原料だって! すげえええ」

「にゃむっ」

「やめてえええ僕のロマンをハムハムしないでえええ」


 見つけたファンタジー植物を、デッカに涎まみれにされたり、


「肉だぁっ! 経験値だぁっ! 血祭りだぁっ!」

「にゃ! にゃ! にゃーん!」


 襲ってきた化け物を怯えさせる勢いで迎え打ったり、


 そんな道中の果てに俺は見つけた。


 サバイバルで生き残るための最後のピース。


「まじであったよ、はは」


 俺たちは洞窟の入り口の前に立っていた。


「にゃあん」


 こんなジメジメしてて暗いところやだーと言うように鳴いたデッカを宥めるように撫でて、


「まあ住めば都っていうからさ」

「にゃあん」

「外でいいって? だめだめ、外は寒いし、雨が降ったらデッカの毛並みもドロドロになっちゃうよ?」

「にゃあん」

「でも怖いって? 大丈夫、俺が一緒だからな」


 でかい図体の癖に、意外と臆病なデッカである。


 とはいえ、そもそも中が住める状態か確認しない事には始まらない。

 俺はデッカを待たせて、一人で洞窟へと潜った。






「なんだよ、これ」


 洞窟に足を踏み入れた瞬間、何もないのに明確にどろっとした空気を通った感覚を感じた。


 そして俺は薄暗い洞窟を奥へと進み、その先であるものを呆然と見上げた。


「これは果実……いや、卵なのか」


 洞窟の先でみつけたのは、開けた場所にぽつんと生える一本の木であった。


 その木には半透明に輝く白い繭のようなものが、果実のように実っているのだ。


 そしてその中で何かがうごめき、


――ぎょろり


 膜越しに開かれた異形の目が、こちらを見ていた。


「これはゴブリン、豚人、これはイノシシ」


 鑑定をかけるとその繭はそれぞれ『ゴブリンの成れの果て』『豚人の成れの果て』そんな情報が読み取れた。


「生命の樹、モンスターを生み出す不思議な木か、ますますファンタジーだなぁ」


 俺たちが戦ったモンスターはここから生み出され、森に解き放たれた奴らだったのだろう。


 情報を読み取りながら、俺は観察を続けた。


 すると時おり熟れた果実が地に落ちるように、繭が落ち、そして真っ白なモンスターが生まれる。


「ふむ、モンスターの幼生体であり、生体としてこの世に存在が確定されるまで無敵状態なんだ……やたら設定が凝ってるな、夢のくせに――」


――だからその白いモンスターに攻撃する意味はなく、攻撃もしてこない。


――ただし生命の樹には必ず守護者がいるので、不用意に近づかないこと。


「……ずっと見てたのか」


 俺が樹に触れたその瞬間、幹のねじれの部分が瞼のように開き巨大な目玉が姿を現したのだ。


 攻撃を加えようとすれば、抵抗するのだろう。


 なんだか明らかに普通ではない相手だし、攻撃するメリットもないので俺は逃げるように洞窟を出るのであった。







「にゃん」


 洞窟から出てきた俺を見て、どうしたと言うようにデッカが寄ってきた。


「お前、気抜きすぎだろう……」

「にゃん?」

「まあいいや、ここはダメだったから別の拠点を探そう」


 そう言うとデッカは嬉しそうに「にゃ!」と鳴いて、しっぽを振った。


 俺たちは再び、拠点を探しながら宛てなく森を進む。


「お、またモンスターだ。 デッカ先生お願いします!」

「にゃっはー!」


 そしてモンスターが現れれば、デッカに前衛をお願いし俺は余裕があれば石などを投げるをして貢献した。


 空腹が満たされ死ぬ気の戦意が失せた今、丸腰で怪物に立ち向かう蛮勇は持ち合わせていなかった。


 それから何度か戦闘をこなし、日が暮れ始めた頃、


『レベルが上がりました』


 これで三回目のレベルアップである。


 スキルポイントは3ずつ増え、ステータスはランダムに微増といった感じで大きな変化はない。


 とにかくもう時間はないし、拠点に良さそうな場所も見つけられない。


 どうしたもんか、とため息を吐いたその瞬間――


――俺の脳裏に素晴らしいアイデアが浮かぶ。


「そうだ、そうだよスキルでなんとかなるんじゃないか?」

「にゃあ~」


 いや初めから気づけよバカ、というようにデッカに鳴かれた気がするが今は置いておこう。


 俺はさっそくスキル取得可能一覧を確認する。


「なんか拠点に良さそうなのは……」


 そして俺が目を付けたのは、


ーー聖魔法


ーー土魔法


ーー木魔法


ーー創造魔法


ーーダンジョン作成


ーークラフト


ーー錬金


ーー魔道具作成


 この中で現実的に取得できるのは、クラフト、土魔法、木魔法だ。


「5、30、30か……よし、決めた」


 他のスキルはポイントが3桁を超えていたので、速攻で候補から捨てた。


 そしてまだレベル3、保有ポイント6の俺に選択肢はなく――


――当然取得したのはクラフトである。


 というか魔法が高い! 夢がねえ! 夢なのに!


「あー、やっぱりこの夢シビアだなぁ」


 スキルには一応簡単な説明が表示されている。


 たとえば生活魔法(水)であれば、


『魔力を消費して飲み水を生成する』


 そしてクラフトは、


『経験値を消費して取得したレシピを使用できる』


 スキルは取得すると、脳に情報をインストールしたように詳細な使用方法を理解している状態になる。


 クラフトは作りたいものを脳裏に浮かべることで、必要素材、必要経験値が算出される。


 そしてそれを用意すると体がオートで、作成を開始するそうだ。


 それは良い。

 とても素晴らしいスキルだ。


 しかし問題なのはそのレシピが使い捨てであること。


 もしも壊れたら?


 もう一つ欲しくなったら?


 そしたら再び経験値を消費しなければならない。


「これがあれば悠々自適の島ライフ……なんて期待しすぎてたなぁ」


 とはいえ拠点に関しては、解決したと言えるので俺はひとまず安堵しながら、どんな拠点を作るかデッカと話し合うのであった。













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