ランスロット EP:1 出逢いと継承

 アヴァロンの辺境に位置する小国リムネー。ランスロットはその王子として生を受け、幼き頃はガラハドと呼ばれた。

 彼が3歳になる頃、リムネーは隣国の侵攻により敗れる。父王は幼い息子を戦火から救うため、森の深奥にある湖の妖精たちへ彼を託した。

 ​湖の妖精たちは慈悲深く、そして好奇心に満ちていた。妖精たちは親代わりとなり、彼を甲斐甲斐しく育て上げた。

 土地に縛られ、湖から離れることのできない妖精たちにとって、外の世界を知る術は迷い人と書物のみ。

 そんな妖精たちの間でとびきりの人気を博していたのが、大都市キャメロットの英雄が織りなす冒険譚だった。

 ​毎夜のように語られる英雄の物語。それを子守唄代わりに育った彼が、未知なる冒険に焦がれるようになったのは必然であった。

 ​

 彼が10歳の頃。妖精たちは祝福と共に、湖に眠る聖剣「アロンダイト」を彼に授けた。

 育ての親たちへ最高の土産話を持ち帰ると約束し、彼は住み慣れた湖を後にする。

 ​しばらくして、旅の中で彼は一人の少年と運命的な出逢いを果たす。

 名を「アクトゥルス」。後に英雄アーサー王の座を継承することになる少年である。

 アクトゥルスは桁外れに強く、すでに死線を潜り抜けたガラハドをして勝てないと思わせるほどの実力を持っていた。

 何度か剣で語り合ううちに、同じ齢、似た境遇を知る二人は意気投合し、無二の相棒として歩み始める。

 ​目指すは大都市キャメロット。その道中、二人は人里を脅かす魔竜の噂を耳にする。

 熟練の兵士ですら逃げ出す相手。周囲は無謀だと止めたが、二人の瞳に恐れの色はなかった。

 三日三晩にわたる激闘の末、彼らは見事に魔竜を討ち果たす。

 その武功はキャメロット王宮にも轟き、二人は異例の若さで「円卓の騎士団」へ騎士見習いとして招かれることとなった。


 円卓の騎士団の任務は、民の救済から魔物討伐まで幅広く、ガラハドとアクトゥルスは修練の日々を駆け抜けていた。

 だが、見習いとなって5年が過ぎた頃、キャメロットを激震が襲う。

 当時の円卓の騎士たちが、「聖杯」探索の遠征において、その殆どが非業の死を遂げたのである。

 ​周辺国と睨み合う今のキャメロットで、最強の戦力たる騎士たちの不在が露見すれば、侵略の引き金となりかねない。

 事態を重く見た当時のアーサー王は、次代の円卓の騎士を選抜すべく、騎士見習い全隊による「御前決闘大会」の開催を宣言した。

 ​ガラハドとアクトゥルス。その実力は群を抜いており、並み居る候補者を次々とねじ伏せていく。最後に立っていたのは、やはりその二人であった。

 互いの全てをぶつけ合う白熱の接戦。その果てに、ガラハドは生涯で初めてアクトゥルスから一本をもぎ取った。

 ​優勝を果たしたガラハドは、円卓の騎士筆頭、最高位の称号である「ランスロット」の座を継承する。

 彼らに敗れた候補者たちも、その実力を認められ次々と円卓の騎士へ任命されていく。

 だが──準優勝であるはずのアクトゥルスだけは、なぜかその場で選ばれることがなかった。

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アルカナム・パラドクス ショートストーリーズ あとりはぎ @ohagi27

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