第2話 リンドブルムにて
ジークフェルドは大国リンドブルム王国の第2王子だ。
来月から、隣国アルノーへの1年間の留学が決まっていた。
アルノーはリンドブルムより小さい国だが、国王である父エリオットの妹エミリアが王妃として嫁いでおり、王太子や第2王子のクリスはいとこにあたるのだ。
特にクリスは同じ年で、幼い時から交流することが多く、今回もクリスが通うアルノー王立学院の2年生に留学生として編入することになっている。
王立学院は3年編成で、15歳から18歳になる国中すべての貴族の子女が通うことが義務付けられている。
「ジークフェルド王子。陛下がお呼びです。陛下の私室の方へいらしてください。」
王宮を歩いていると、父の側近の一人に声をかけられた。
「執務室ではなく私室?」
この時間帯に父が私室にいることは珍しい。
疑問に思いつつ、その足で父の部屋へ向かった。
コンコン
「父上。ジークフェルドです。」
「入りなさい。」
入室すると同時にへやに飾ってある女性の肖像画が目に入った。
十数年前に亡くなった父の末の妹ユーフェミア王女のものだ。
ユーフェミアは金髪に金色の瞳をもつはかなげな美少女で、父はこの妹を溺愛していたようなのだ。
そして、この絵はジークフェルドの初恋でもあった。
幼心に父の部屋にある妖精のような少女の絵に恋心を抱き、それが亡くなった叔母だと知った時の衝撃は今もはっきりと覚えている。
「父上。お呼びとうかがいましたが?」
「ああ、ジーク。そこに座って。」
父は気さくな人柄で、息子にも家臣にも慕われているのだ。
「おまえ、来月からアルノーに留学するだろう?そこで、一つ用事を頼まれてほしいんだ。」
「用事ですか?」
公式な用事なら執務室に呼ばれてもよさそうなのに、わざわざ私室に呼ぶなんて、何だろう?
ジークが疑問に思ったと同時に、父はあっさり要件を伝えてきた。
「ユーフェミアの娘が来月からアルノーの王立学院の1年生として入学するんだ。その子が幸せに暮らしているか、その目で見てきてほしいんだ。そして困っていることがありそうなら影からでもいいから助けてやってくれないか。」
「ユーフェミアの娘?」
「そこにある絵。お前の初恋だろう?彼女の娘だ。」
「???叔母上は亡くなったんじゃあ?」
ジークの言葉にエリオットは悲しげに目を伏せた。
「ああ、亡くなったよ。1年前にね。」
1年前?
ユーフェミア叔母上の国葬は17年前に行われたはずだ。
ジークの考えが伝わったのか、エリオットがほほえんだ。
「もう時効だろうし、話をきいてくれ。」
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