第二話 病の壁②

いよいよ退院の日。颯太が病院まで迎えにきてくれた。

「おーい、一樹!」

「ありがとう…。わざわざ病院まで来てくれて。」

「どうしたの?せっかく退院したんじゃん!今日はパーっとお祝いしようよ!」

「………」

颯太は昔からちょっと空気が読めない。これから先のことがまだ不安なのにそんな明るくやってられるかよ。

そう言いたい気持ちを堪え、颯太に

「今日は大丈夫。それより練習場に行こう。

「わかったよ。にしても久々だなあ、お前の球受けるの。」

「そうだな…。」

実のところ、退院してからというもの全く球に触っていないし、投げてもいない。

そして、中学校の校庭に着いた。

「投げれるだろうか。まだ倒れてから一回もボールに触ってないんだよ?」

「まぁ、物は試しだよ。キャッチボールしようよ!」

「いいけど…」

俺はもとは変化球で打者からどんどんゴロを奪うピッチャーだったのだが、

「スライダー行くぞー!」

「いいよー!」

『シュュルルル…スパン…。』

「…っ…⁉︎」

全くと言っていいほど曲がらない。他の変化球もどんどん投げたが、ろくな球が一球もない。

「……なんか、ごめんね。」

「いいんだ、大丈夫。」

「今日は一旦終わりにしよう。」

「だな。」


「ただいま。あっ!おーい、ブーちゃん元気にしてたか?」

このブーちゃんはうちのペットのマイクロブタだ。俺がどんな大変な時にもこのブーちゃんに支えてもらった。俺が小学校5年生の時に怪我をして大会に出ることが出来なかった時にも、ずっとそばにいて寄り添ってくれる親友だ。

「おかえりなさい、一樹!」

「パパ、ママ!」

「よかった、よかった!」

「入院中にもたくさん手紙やら書いてくれて本当にありがとう!」

「いいのよ、そんなことより、あんたの退院祝いで今日は外食に行きましょ!」

「ありがとう!」


翌日…

チュンチュン……

キーンコーンカーンコーン…

「気をつけ!礼!おはようございます!」

今日はついに待ちに待った学校だ。3ヶ月振りということもありかなり緊張したが、みんな暖かく迎えてくれたからとても嬉しかった。しかし、そんな楽しい時を過ごしている途中で監督から呼び出しを喰らった。

(うわぁ、、これ嫌な予感しかしねえんだけど)


                 ー続くー


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