第一章 中学時代

第一話 病の壁①

ある日いつも通り鬼監督に500球投げ込み練習をさせられていた時だった。

突然足に「ズキッ!!」という痛みが走り、気づくと

『ゔっ!?』

バタンッ……


意識を失っていた。

「おい磐田、何してんだ。ふざけんなや立て!………ん?意識失ってる?磐田?………磐田?!

救急車!救急車!」



意識が戻った時、目を開けるとそこは知らない天井だった。

母が医師の説明を聞いているようなので目を再び閉じ聞いてみると、

「息子さんがかかられた病気は、治療方法がまだみつかっていない病気です。治療法がわからない以上、我々もどうすることもできず…。」

「そうですか…。それで一樹はたすかるんですか?」

「ほぼ症例がないものですから、我々もわかりません…。」

ショックだった。野球のことも全く考えれないくらいに。

足が壊死しかけたらしいが何とか持ち堪えたようだ。いつ再発するかもわからないらしい。だが、俺は足を自由に動かすことが難しくなってしまった。

とにかく生きることができてよかったというのが本音だ。


翌日、颯太が病室を訪ねてきた。

「おーい、きたよ!」

「おう、ありがとう!」

「具合はどう?」

「まだわからんわ。誰が助けてくれたん?」

「一応監督だけど、あいつサボってるとか言ってなかなか気づかなかったからね、やっぱりあの人は指導者向いてないよね。」

「そうなん!?もう最悪やん!」

「ねえ、ところでさあ、いきなりこんなこと聞くのもアレだけど」

「どうしたん?」

「野球は続ける?」

俺はしばらく黙り込んだ。確かにこのチームには心優しい仲間がたくさんいる。だが、この足で野球をすることは不可能に近いこともわかっているはずだ。「また急に倒れたら今度こそ助かることはないのではないのか」とか思ってしまう。本当は野球をしたいのに。

颯太とはずっとバッテリーを組んでいて親友だ。その思い出をこんなことで終わらせたくないと思って、結果的に颯太には「また頑張るよ。」と言ってしまった。

自分でもこれから先のことを何もわかっちゃいないのに。


足が自由に動かせない中、病院の中にいた時にもリハビリや上半身の使い方の勉強を一生懸命して颯太と野球をまたするという目標に向かってひたすらに努力した。


そして3ヶ月後、ついに退院の日を迎える。


                       ー続くー

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