レイド・オービット【異相軌道】
トニコ
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episode.0 第一話:『ホライゾン・レイド』
これは
私は、行方不明の父親を探す中で、かつて軍の後方部門に所属していた、1人の男を紹介される。
そして、その人物と待ち合わせたカフェで、温かな紅茶の香りの中、手持ちの端末で過去の映像データを調べている…
──かつて、この世界は“ホライゾン・レイド”という理解不能な厄災と遭遇した…
行き過ぎた技術の産物、事象の果てから出現したそれは、その技術だけでなく、世界の全てを侵食しようとする……
しかし、その世界に住む者たちはそれをまだ受け入れる訳にはいかない。
それに対抗するため、一つに交わろうとする…
幾つもの惑星から連なる組織、『ギルド・ユニオン』を設立し、諦めを知らない者たちを中心としてホライゾン・レイドに立ち向かう。
例えそれが戻れない道だとしても…
──ギルド・ユニオンの戦闘機そのコクピットから割れるような叫び声が聞こえる。
「…グゥッ!意識が…薄れる…がぁ…」
「記憶が…剥がれるッ!?」
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!
コクピット内で異常接近の警告音が鳴り止まない…
「機体が軋む…!?」
「…コントロールが利かない!?」
──計器に異常は見られない…
コントロールを失った機体はそのまま、ホライゾン・レイドに呑まれて行く
凄惨な光景が映像と共に流れていく。
(これ、何回見ても同じ映像…
これ全部ホライゾン・レイドの所為なのか、それをお父さんが倒した…のか、色んな人から聞いたけどわからない。
今日、会う人は何か知ってるかな…)
一通りの映像を見終わった頃には、紅茶の湯気は消え、リィナがそれに気付いた直後、待ち合わせた人物から声を掛けられる。
息を切らしながら現れた人物『エンド・リヒト』は、席の向かい側に座り、呼吸を落ち着ける。
「あなたが、リィナ・クレインさんかい?」
「はい。そうです」
「大丈夫か?少し震えてるみたいだが。1人で来たのかい?」
「いえ、もう1人来るはずなんですが、少し遅れるって連絡がありました」
「そう。あ、お姉さん。俺にもこの子と同じヤツをアイスで。
で、知りたい事って、やっぱり英雄のこと?」
エンドは、店員にさりげなくオーダーすると、本題を切り出す。
「はい。父のことです…」
「え!?あんた英雄の…!そうか、もう10年位前になるからな、あの事件は…」
「人づてに聞きました、あなたが父の知り合いだったって」
「うーん、仕事で何回か会ったくらいだけど、俺が知る範囲で良いなら話せるけど?」
「それで充分です。早く、父の…いえ、先に話を伺ってもよろしいですか?」
「連れ、待たなくても良いのかい?」
「大丈夫です。父とあなたが何故、知り合ったのか?その辺から話して頂けますか?」
「わかった。それじゃ、昔話になるから、少し長くなるかもな」
断りを入れつつ、エンドは当時を思い返すように、遠い目をしながら、リィナの父と出会った頃の状況について語り始める。
当時の自分の立場も踏まえながら…
──俺がまだ仕事というモノを知らない頃の話だ。
ここはGU picturs inc.《ギルド・ユニオン映像社》の映写室
明らかに合成されたリポーターが、カメラを背に指を差しながら状況を説明している。
「見てください!所属不明の飛行物体が市民を攻撃しています!」
都市部に黒い渦を巻いたような、円盤状の物体が多数飛来し、そこに住む住人を無差別に攻撃する映像が映る。
画面が切り替わり、どこか不自然な青空が映し出される。
その奥、2機の戦闘機が映る瞬間を待ち構えてリポーターが説明を再開する。
「今、ギルド・ユニオン軍の戦闘機がやって来ました!いけーッホライゾン・レイドを倒してくれーッ!」
僅か2機、だがその運動性は、市民を攻撃する物体とは段違いだった。
「アンリ1からベリオット1へ、これより敵部隊の殲滅を開始する。オーバー」
「こちらベリオット1、了解した。オーバー」
2機の戦闘機は、二手に分かれ敵の飛行物体を挟撃する。
「アンリ1、ロックオン。ファイア!」
その掛け声と共に、ミサイルが発射される。
「ベリオット1、命中確認。フェーズ2へ移行する」
円盤状の物体の爆発に合わせた様に画面が真っ赤に燃え上がる…
リポーターは更に続ける。
「“ホライゾン・レイド”その厄災は、我々惑星連合“ギルド・ユニオン”の正義が許さない!
人類の平和、君たちの未来。我々ギルド・ユニオンは君たちの協力を欲している!」
──映像の試写がおわる。
「プッ。こんな、プロパガンダ誰が信じるんだ?しかもどの口が正義だなんだって…」
このグループのリーダー『エンド・リヒト』がぼやく。
「主任、つべこべ言わない」
紅一点のアシスタント『フィオナ・オーガ』だ。
「こんなモンに頼らなきゃならん程、事態は逼迫してる。って事ですもんね」
カメラマンの『ハンス・ガードナー』も、エンドに便乗している。
「だがお偉さん《スポンサー》の要望だ。納期も迫っている。とりあえず、一次はこれで行くぞ!」
映像部門の課長『ランド・エルスト』が強引にまとめる。
今日の映像を振り返りながら、エンドは外でタバコを吹かせながら、1人物思いにふける…
(だが、本当にあんな物でどうにか出来ると思ってるなら、ウチのスポンサーは
でも、これでメシ食ってる俺も相当…だな)
──後日、スポンサーから社に連絡が入る。
「主任!もっと迫力がある映像は作れないか?って言われましたけど!」
「そこかよ!それに迫力つったって、軍の協力でもなきゃ作れる訳ないだろ?ただでさえ、俺たち戦闘部隊から嫌われてんだぜ」
「何で嫌われてるんです?」
「そりゃ、なぁ、最前線は酷い状況って聞いてるけど、俺たちは後方でゆるーくやってるからな」
「除隊する者も多いって聞きますけどね」
「だから、こんな募集広告みたいな仕事で給料貰ってる奴らに協力したいと思うか?」
「そう言われると、返事に困りますね…」
ブブーッ!
突然、社の呼び出しベルが鳴る。
「はーい。どちら様でしょうか?」
「ギルド・ユニオンの者です。スポンサーと言えば分かりやすいでしょうか?本日は少々、頼みたいことがあって伺いました」
「何でスポンサーなんて“隠語”知ってるんだ?」
(俺の直感が何かヤバい雰囲気を伝える)
「この前の
(それは、それで問題だろ?今日、うちの役員だれもいないんだぜ…)
──ギルド・ユニオンのレムナント・セティ少佐と名乗る人物を応接室に通す。
「あいにくですが、本日、弊社の役職者は全員出張しておりますので、私が対応させて頂きます。
申し遅れましたが、ギルド・ユニオン
早速ですが、本日のご用件をお伺い致します」
(何で俺が、こんなお偉いさんの対応しなきゃ、これも部長たちの接待ゴルフのせいだな)
「ご丁寧にありがとうございます。私は、ギルド・ユニオン軍所属、レムナント・セティ少佐です。
用件と言うよりも、お願いに近いのですが、この度、我が軍では新型機の開発に成功致しました。
既に量産体制に入っているのですが」
(あぁ、軍の極秘だったかな?噂の新型機は、確か…)
「シンクロブースター…」
(って、しまった!いらんこと喋っちまった)
「ほぉ、お詳しいですね。
それなら話しが早いかも知れません。
我が軍では、そのシンクロブースターを大々的に宣伝したいと考えております」
(何だこのゾクッとする感じ…)
「…つまり、その新型機のプロモーションを行えと?そう、仰るのでしょうか」
「はい。我が軍の戦力が逼迫しているのはご存知ですね。しかし、まだ市民への直接的な影響は低水準を維持している」
「つまり、軍は十分、機能している。と…」
「フフフッ。本当に理解が早い。それではお引き受け頂きますでしょうか?」
一通り話し終えると、レムナントは組んでいた足を組み替える。
それに呼応するように、エンドは立ち上がると窓の方へ歩み寄り、ブラインドの調整を行う振りをする。
(うわーメンドクセー仕事じゃねーか?)
コンコンコン。
「失礼します。飲み物をお持ちしました」
机に置かれた紅茶からは、良い香りが漂う。
(ん?メモが付いてるぞ。何々、面倒くさいのはちゃんと断って下さいね。か、わかってるよ)
「即答は致しかねます。上席者の意見も確認の上、回答したいと思います」
「そうですか。それでは良いお返事を期待してます」
少佐は紅茶をグビッと飲み干すと、スッと立ち上がり応接室を後にする。
(所作と礼儀も丁寧かスマートだな。こういう時の直感当たるからな…)
「ま、とりあえず先送りに出来たかな」
── 当初、ホライゾン・レイドとの戦力は互いに拮抗していた…いや、俺は…俺たちは、そう思わせていたのかも知れない。
「おい、昨日の出撃した奴ら半分も戻ってこねぇってよ」
「マジか…同期だったヤツもこの前、俺の目の前で壊れていったよ…」
──後でわかったことなんだが、ギルド・ユニオン側のパイロットが昨日までの記憶を無くしたままの空っぽの、人形みたいに虚ろな存在が出撃していく…そんな状況が多発するようになった。
「上層部は俺たちのことなんて考えてねぇよ…」
「どうせ、使い捨てのコマ位にしか思ってないんだろ?」
「この戦闘機も乗るヤツが居なくなっちまった…」
ユニオンの上層部が対策を放置した結果、戦力は著しく減少していく…
「そもそも、
「俺。明日、
「じゃ俺も…今死ぬか、後で死ぬかの違いだろ?
もうちっと長生きしてーもん」
──エンドがオーダーしたアイスティーが届く。
エンドは店員に軽くお礼を言うと、リィナの顔を見つめる…
「ここまでが当時の状況だ。大丈夫かい?」
「はい。大丈夫です。続きをお願いします」
(この人、当たり…かも知れない)
「あぁ、わかった」
(少し震えているか。しかし芯の強い子だ…)
エンドがリィナの表情を伺うと、リィナもエンドのその瞳の奥を眺めようとする。
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