第14話

 レミエルは固まる。

 確かに、敵に精神がのっとられて居るとはいえ

人を殺すのだ。


 それは当然、天使の存在理由である、人間の守護とは真反対だ。


「ま、そんなに気にする必要はないだろ。」


 サンライトの一言に、レミエルは首を傾げる。


「キョクヤ、あいつとメビウスが交戦したのは

大体2年前。

そして郊外、エンドゾーンで

長期の生命活動を続けられる人間は、確認できていない。

ま、当たり前に食料も腐ってるし

清潔な水もないからな。

今キョクヤと戦うにしても、 

もうアイツは、めちゃくちゃな動きが出来る、

ただの死体だよ。」


 そう。

 デモンズが初めて出現したのは、2030年代。

 そして今は、2074年だ。


 デモンズの出現と同時に、人間が都市の大部分を捨てたことを

みれば、ほとんど生存環境が無いことは

自明の理だ。


 そして、エンドゾーンには

挙句の果てにデモンズが闊歩している。


 はっきり言って、人の体を持ったものが、長時間の

生存を許される環境じゃない。


「なら、もう死んでるから大丈夫

ってこと?」


 レミエルが、サンライトに聞くと

サンライトは答えた。


「ま、倫理的な問題は置いておくとすれば、な。

って、最初から倫理観的な問題か、これ。」


 そのタイミングで、1つの疑問が

自分の脳内をよぎる。


そこまで倫理観スレスレな事をしてまで

何故レミエルは、戦闘に参加しようとしているんだ?


「レミエル。」


「何?」


 メビウスに話しかけられたのがうれしいのか

レミエルは目をキラキラさせて、こちらの方を

クルリと向いてくる。


「そこまでして、なんで戦いたいんだ?」


 見たところ、レミエルは戦闘を好むタイプではなさそうだと、

俺はそう思った。


 それに、人を助けたいのなら、他の活躍方法があるだろう。


 だからこそ、何故?

という疑問が脳裏に浮かんで離れない。


「なんとなく、なんとなくなんだけど。

君を一人にしたくないって、そんな気がして。」

 苦笑いしながら、レミエルはそう答えた。


「っ、、、。」


 頭が割れるような慣れない痛みが、脳内に響く。


「どうしたの?」


 レミエルの声が、脳内に反響するように響く。


 なにか、思い出しそうな、そして同時に

思い出してはいけないような、そんな感覚がする。


 だが、それは徐々に、というより、元より何も無かったかのように

収まって行った。


「大丈夫?」


伏せたメビウスの顔を覗き込むように

レミエルはそう問いかける。


「大丈夫、だ。」


「良かった。」

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