開けた駿府公園。

 お堀にそって園内にはいって進むと、おあつらえむきに青い空と芝生の緑がコントラストになっている。


 聖さんのトレーニング。


 最初のうちは。


「ほらはう。このボールとれるか?」


「とれるよ~かんたーん」


 という軽いものだったが。


「はう、もう少しランニングのペースをあげるんだ。ライオンに追いかけられてると思って」

「うむむむ……」

「まだだな。それじゃ、大魔神に追いかけられていたらどうだ」

「うむむ~っ。まじんくるーーっ」


 木陰の下、ベンチで見物しながら思う。

 ……聖さん、徐々にエスカレートしてる?


 はうはバテ気味だ。


「よし、次はここに向かって思いっきりボールを蹴ってみよう」

「むー。えいっ」


 はうのシュート、見事空振り。



「そんなんじゃ、いざというとき、ままが襲われたらどうするんだ」


「うん、えいえいっ」


 とうぜん、初心者一歳児のボールはコントロールめちゃくちゃで力も激よわだ。


 となりでは小学生のスポーツ男子たちが鮮やかにボールをパスしてゴールしている。

 その光景と、これまでの疲れが刺激になってしまったらしい。


 じわと、息子の瞳に涙がにじむ。


「ボクもーできないっ! やらないっ」


 地団駄踏んで茂みのほうへ走っていってしまった。


「はう……!」


 聖さんもついに、我に返ったように。


「しまった……。警察学校時代の習慣が出て……。つい厳しくしすぎました……」


「聖さん、だいじょうぶ。ちょっとはうと話してきます」


 わたしは、はうを追いかけて茂みに向かった。

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