③
開けた駿府公園。
お堀にそって園内にはいって進むと、おあつらえむきに青い空と芝生の緑がコントラストになっている。
聖さんのトレーニング。
最初のうちは。
「ほらはう。このボールとれるか?」
「とれるよ~かんたーん」
という軽いものだったが。
「はう、もう少しランニングのペースをあげるんだ。ライオンに追いかけられてると思って」
「うむむむ……」
「まだだな。それじゃ、大魔神に追いかけられていたらどうだ」
「うむむ~っ。まじんくるーーっ」
木陰の下、ベンチで見物しながら思う。
……聖さん、徐々にエスカレートしてる?
はうはバテ気味だ。
「よし、次はここに向かって思いっきりボールを蹴ってみよう」
「むー。えいっ」
はうのシュート、見事空振り。
「そんなんじゃ、いざというとき、ままが襲われたらどうするんだ」
「うん、えいえいっ」
とうぜん、初心者一歳児のボールはコントロールめちゃくちゃで力も激よわだ。
となりでは小学生のスポーツ男子たちが鮮やかにボールをパスしてゴールしている。
その光景と、これまでの疲れが刺激になってしまったらしい。
じわと、息子の瞳に涙がにじむ。
「ボクもーできないっ! やらないっ」
地団駄踏んで茂みのほうへ走っていってしまった。
「はう……!」
聖さんもついに、我に返ったように。
「しまった……。警察学校時代の習慣が出て……。つい厳しくしすぎました……」
「聖さん、だいじょうぶ。ちょっとはうと話してきます」
わたしは、はうを追いかけて茂みに向かった。
宅配家族 ほか @kaho884
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