第3話 食べちゃ、だめ?
①
「おいしーいっ」
はうの口周りがてろてろに輝く。
正月三がにち後。
昼頃起きてたっぷりしたブランチ。
ウィンナーやビーンズをトマトで煮込んだ、イングリッシュブレックファーストをがっつり。
目玉焼きを添えて。
「おいひいねぇ、まま」
傍らの息子とともに。
「もうランチはよしとして、夕飯どうしよっか。カレーにでもする?」
「わーーい! ボクカレーだいすきーー‼」
「ちょっと、待ってください」
「聖さん?」
「はう」
聖さんははうの頬を両手で挟み込む。
「さいきんほっぺがますますぷっくりしてきてないか……? なんというか、全体的に、丸い……」
もぐもぐとウインナーを頬張りながら、わたしが応じる。
「やだなぁ聖さん。はうは幼児だよ? いいのいいの、ちょっとくらいぽちゃっとしてたって」
「ですが。あまり太ってしまうのも健康的に心配ですからね。このところの食生活、少し振り返ったほうがいいかもしれません」
「——んー?」
わたしの思考は、ここ一カ月くらいの過去に飛んでいく。
――クリスマス。
「チキンとケーキだよ~! はう、聖さん、メリークリスマス」
「どぉぉぉおっきいケーキ!」
――大晦日
「わー! ごちそう!」
「はう、お肉すきでしょ?」
「おにくいっぱい!」
「おでんも奮発~!」
――正月
「おせちいっぱいつくろう」
「ボクくりとんとんつくるー!」
「お雑煮とおもちもいっぱい買ったもんね!」
「ボクおもちさん食べるー! きのことしょおゆで食べるーー」
「きなこ、な」
「……」
そろ~り、重さをはかる役割のある、四角い悪魔の乗り物に載ってみる。
わたしは、悪魔の雄たけびをあげた。
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