と、さいしょこそ真面目にやっていたが。


 ――12月20日 「ままは美人」と3回言おう。


 ――12月21日 「ままはすてき、優しい」と5回言う。


 だんだんアドベントに入れるメモがめんどくさくなった&エゴが混じって来た。

 そんなある日のこと。



 昼食の終わり際、さりげなく息子に訊いてみる。


「ところではう、サンタさんになにお願いするの?」


「あ、美人のまま~‼」


「うん、そのミッションもうクリアしたからいいよ」


「ぷっふふ。ナイショだよ~!」


「え?」


 丸い尻を突きだし、口元に手をあてて言う。


「はうとサンタさんだけのひみつだもん! ぷっふふ!」



「聖さん。緊急事態が発生しました」


「なるほど。はうが欲しいものを教えてくれないと……」


 息子が寝静まった深夜。

 キッチンにて、夫婦の極秘会議が催されていた。


「それは困りましたね」


「イブまであと2日しかないのに! どうやって用意しよう‼」


 頭をかきむしるわたしを夫が制する。


「落ち着いて。俺に考えがあります」


「ほんと?」


 夫はまるでどこかの執事のように胸に手をあて請け負った。


「お任せを」



「はう、今日は楽しかったか」


「うん! ままとシチュー食べた!」


「いっぱい食べたんだってな。偉いぞ」


「はうえらい~ふんっ」


「クリスマスまでもうすぐだな。きっとサンタさん、はうにプレゼントくれると思うぞ」


「わーーっ! いえーい!」


「それで」


 ちら、と、キッチンで洗い物をしていたわたしは夫と目配せする。

 作戦A、決行。



「サンタさんは遠い空からたくさんの子どもたちにプレゼントを配るんだ。だから間違えられないように、きちんとハウの希望を伝えたほうがいいな」


 きょと、と、飛行機おもちゃで遊んでいたはうが動きを止める。


「きぼー?」


 しめた!

 聖さんはニコリ笑って頷く。


「よし、今からサンタさんにお手紙を書こう」



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