第12話 任務同行③

「ここですか?」


 ユウの目の前にあったのは小さな建物だった。木材で創られ、その耐性は見るからに危うい。一階建ての本当に小さな建物だった。


「えぇ。もしもの時のためにって作られたみたい。さっき遭遇したのは親子って言ったでしょう? その親子疲れたから休憩するためにここを使うとするために遭遇したみたい」

「なるほど。それで、ここにいるんでしょうか?」

「何とも言えないわね。ただ、今日は私たち以外に人はいないはずよ」


 つまり、少しでも物音がすればモンスターがいる可能性があるということか。いよいよ、対峙するのかもしれない。そう思うと、ユウは鼓動が止まらない。


「さて、行く前に確認よ」

「はい」

「私はサポート。つまり、軽い魔法攻撃による援護。今回はレベル上げのために君が主体で戦ってね」

「分かってます」


 さすがにその辺はユウも分かっている。今回はレベルを上げるために来た。あくまで戦うのは自分主体でこの人はサポートなのだ。それでも、やらなくきゃ行けないからやるのだ。


「続いて敵の魔法。説明した通り、電気の攻撃。レベル7だから私たちにとっては大したのではないけど、君の場合数回当たるとちょっとヤバいかも。避けれるときは必死で避けて」

「頑張ります」


 避けれるときじゃなくても避け気だった。敵の攻撃なんて絶対に痛い。痛いのは嫌だ。ユウはそう思いながら、頷く。


「よし、じゃあ行くわよ」

「行くって……、いきなり開けるんですか?」

「まさか。まずはいるかどうかの確認。私がかるーく魔力を流すわ。モンスターってのは魔力に敏感だから。いたらきっと暴れて、出てくるわ」


 それって、絶対に建物が壊れるじゃんとユウは思う。仕方のないことかもしれないが、いいのだろうか? そんな目で見ているとマエが安心させるようにウィンクする。


「その辺の許可は得てるわ。街の人は大丈夫だって」

「そうなんですか」


 まぁ、命を失うよりもマシということなのだろうか。申し訳ないなと思いつつ、それならしっかりやろうとユウは思う。


「じゃあ、行くわよ」


 そう言うと、マエは持っていた長い杖を地面に刺す。そして、魔力を少し流した。ユウはその光景を見ながら、剣を構える。そして、建物を見据えた。


 数秒足らずに、物音が聞こえた。そして、その瞬間、建物を盛大に破壊して、何かが飛び出してくる。ユウとマエは咄嗟に後ろに避けた。


「Quuuuuuuuuuuuuuuuuu」


 人知ならざる咆哮が森の中を響く。薄汚れた灰色の身体に、一見は愛らしい顔つき。が、その瞳には殺意しか映っていない。レベル7のモンスター、巨大鼠(ビック・マウス)である。


 巨大鼠(ビック・マウス)はユウの方を見て、そして突進してきた。ユウは大慌てで、避ける。

 分かっていたが、やっぱり今までのモンスターより早い。そして、力も強い。まだ見てはいないがおまけに魔法もある。どうやって倒すか、ユウはそれを考える。


「すみません、援護お願いします!」


 しばらく考えた後、とりあえず斬りかかることにした。正直、怖くて仕方ない。でも、何かしないと何も分からないのでどうしようもない。そう思ったユウは駆けだす。


「穿て、刻め──風傷槍エア・ベスレ


 マエの詠唱が響く。斬りかかろうとするユウを支援するかのように、二つの風で形成された槍が発射された。二つの槍は、鼠の目めがけて発射される。

 が、その瞬間、大気中に電気が轟いた。刹那、槍は落とされる。そして、そのままの勢いでユウめがけて雷が駆ける。


「うわぁぁあぁっぁ」


 叫び声を上げつつ、ユウは必死で逃げた。あれに当たったら、絶対にマズい。絶対に焼け焦げて死ぬ。心臓の鼓動が止まらない。死にたくない。ユウはその思いで何とか雷から逃げる。


「逃げてばっかりじゃなにもならないわよ!」


 叱責まじりの声が響く。その声でユウは逃げつつも、鼠の方を見ることにした。そうだ。このモンスターを倒さなけばならないのだ。そう思い、必死で敵を観察する。

 電気は鼠の身体から放たれている。が、腹から放たれていない。狙うなら、ここじゃないか? ユウはそう思う。実際、鼠は雷以外にはこれといって特徴はない。つまり、雷を避けて斬ることが出来れば、行けそうではあるのだ。


「でも、どうやって近づこう……」


 考えついた作戦での問題点はそこだった。鼠は雷を常時放っている。魔力が無くなるまでまつというのもありかもしれないが、そこまで持つ気がしない。マエさんはあくまでサポートのみやるなら自分でやるしかない。


「本当にどうしようか……」


 電気は威力を段々増している。どうあがいても、近づける雰囲気ではない。これがもう少し運動神経の良い奴なら出来るだろうが、残念ながらユウには雷を避けながら斬りかかれる自信がなかった。


「魔法が欲しい……」


 ぼそりと声が出る。今必要なのは遠距離に対応できる魔法、いやこの場で何か役に立つ魔法。何でもいい。この場で役に立つなら何でもいい。なんか、この場で役に立ちそうな魔法が欲しい。


 そう願っていた時だった。ふと、景色が変わる。森ではなく、浅い水辺のような場所。空は朧気な夕日色。そして、目の前には黒くて、少し歪な球体状のナニカ。


「─────」


 ユウは息をのむ。だが、不思議と悪い気はしない。そう思っていると、声が響いた。


*****

          

オメデトウ、アナタハ魔法『深淵なる■■図書ドゥ・バブビリオ』ヲ会得シタ。


*****


「えっ」


 思わず、ユウは声が洩れた。景色は元に変わっている。雷は相駆らずなまま。だが、ユウはそんなことより気になることがあった。

魔法、魔法を習得した? いきなり? 訳が分からない。というか、この声どっかで聞いたことあるな。ユウはそう思いつつも、何の魔法を会得したのか確かめようとする。


その瞬間、頭の中に文字が浮かんだ。


*****


纏衣雷ウル・サンダー

ランク:D

レベル:10

詠唱:なし

使用回数:1回

概要

電気を物や身体にまとわせて放つことが出来る。モンスターの魔法のため、詠唱・魔法名を叫ぶ必要はなし


・あと一枠開いています


*****


 おそらく、あの鼠と同じ魔法ともう一枠開いているという文字。おそらく、あの鼠の魔法をコピーしたのだろうか。あともう1つというのは、もう1つだけコピー出来ること。

 

 何で会得出来たか分からない。突然、出て来た声もあの光景も何が何だか分からない。正直、意味が分からな過ぎて怖い。けど、こうも思う。ワンチャン、行けるんじゃないかと。


 使用できるのは一回だけ。これが大事だ。使いどころを間違えないようにしよう。そう思った後、ユウはマエに目くばせした。必死の視線に何かを察したのか、魔法を放つ準備をする。刹那、鼠はマエの方へと視線を向けた。


 その瞬間、ユウはバレないように鼠の後ろへと回る。


「穿て、刻め────風傷槍エア・ベスレ


 マエが風の槍を放つ。今度は二つではなつ、五つ。風の音を鳴らしながら、鼠へと向かっていく。鼠はそれらを撃ち落とすべく、前へと雷を集中させる。この瞬間だけ、後ろへは雷は放たれていない。


 ユウは駆けだした。自分の全身全霊の速度で。鼠が後ろを振り向く前に。


 剣に魔力を込め、雷を剣に纏わせる。鼠は気づき、振り向く。雷で襲い掛かろうとする。が、その前にユウは剣を振り下ろした。


 斬る瞬間、電気が爆ぜた。斬り口に大量の雷が鼠の体内へと流れ込む。


「Queeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee」


絶叫が森を響き渡った。数秒間、巨大鼠ビック・マウスは悲鳴をとどろかせながら、震えている。

 が、それもすぐに止まった。


「あっ、勝った……?」


 そうして、鼠はようやく死んだのである。

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