Fantasia the Wizard~ある臆病な青年が魔王を倒すに至るまで~

蒼林檎

第一章 

エピソード1 冒険の始まり

プロローグ in日本

「よぅ、裕。お前、ゲーム当たったってマジか⁉」


 帰りのSHRが終わった時、葉山裕は声がした方に振り向いく。そこには、SHRから解放されたように凄いスピードでこちらに来る友人、菊池英二がいた。


「マジだよ、マジ。今日、明日届くんだ」

「ちぇっ、いいよなぁ~。俺は当たんなかったよ」

「お前なぁ、当たり前に決まってんだよ。あらゆる世界中の人が応募してんだぞ」


 裕の後ろから、坊主頭の友達、霧絵小太郎が身を乗り出してくる。小太郎の言葉に分かっているよと言いたげな態度をししつも、英二は不服げだった。


 ゲーム会社「ユミノクス」。現代から異世界、SFまで幅広い世界観を題材にしRPGゲームを制作している会社だ。最新鋭の技術とシナリオ、そして魅力的なキャラクターたちによって、若者たちの間で瞬く間に大人気となった。


 そんなユミノクスは新たなゲームを発表した。それは異世界RPG『ファンタジア  ジ ウィザード』と言う名前である。


 プレイヤーは主人公を設定し、その主人公で世界を救うというゲームだ。このゲームの最大の特徴は攻略できるヒロイン・ヒーローが豊富なことである。男主人公ならヒロインを、女主人公ならヒーローを攻略できる。攻略できるヒロイン・ヒーローの数はそれぞれで100人以上。それぞれにエンドがあるそうだ。


 まだ発売されていないため、これ以上は分からない。だが、そんなゲームを先にプレイできる者達がいる。それが、事前の抽選で当たった者たちだ。それは、全部で15人。裕はその1人である。


「くそーッ」

「恨むんだったら、お前の運を恨め」

「そういうお前は外れた1人だろーが」

「悪いな、俺はもう発売日まで待つのに切り替えてる」

「くそぉ……」


 その様子を裕は苦笑しながら見ていた。自分はまぐれで当たっただけだ。運の違いでは、英二と同じことを言っていた。この幸運を遠慮なく使わせてもらおう。裕はそう思う。


「2人とも終わったら、感想言うよ」

「ネタバレはするなよ」

「少しでもネタバレしたら殺すからな」

「おっかないこと言うなよ……。ネタバレにならない程度の感想だからさ」


 裕も長いことゲームしているので、そこら辺は分かっている。特にユメノミクスのゲームはストーリーが魅力の1つだ。ネタバレなんて、最もしたらいけないゲームである。


「でも、お前どっちの主人公選ぶの?」

「そりゃ男だよ」

「その理由は?」

「男を攻略して何が楽しいんだよ」


 裕が迷わずにそう言うと、ほかの2人はそりゃそうだと笑いながら納得した。


 もう少し、会話を続けようとした時、チャイムが鳴り響く。その音を聞いた小太郎はあっと慌てたようにする。


「じゃ、そろそろ部活だわ」

「まだ、引退じゃないのか?」

「まだだよ」


 3人はもう高校三年生だった。裕はもう部活を引退したが、運動部である小太郎はまだ引退できていない。やや急ぎめに教室を出て行く。その姿を見送りつつ、裕と英二も帰ることにした。


「なぁ、裕。進路どうするんだ?」

「あぁー」


 帰り道を歩きながら、裕は考える。高校三年生。もう進路を決めなければいけない時期だった。


「推薦で。もう出したよ」


 裕は高校の成績は悪い方では無かった。だいたい、中の上くらいはある。だから、そこそこの大学なら推薦で行ける余裕はあった。とりあえず、やりたい事に適した大学を決め、指定校の枠に志願したところである。


「へぇ~。どこ行くんだ?」

「XX大学の文学部」

「お前が文学部かぁ~」


 意外そうな顔で英二は言う。裕は学校司書になりたいなと漠然と思っていた。小学校から高校まで学校の図書館に通い続けていた裕はそこで働いてみたいと思っていた。


「でも、いいじゃん。お前らしくて」

「そういう英二はどこに行くのさ」

「俺? 一般で△△大学の法学部か」

「あー、確か弁護士になりたいんだっけ?」

「そっ」


 英二は一年生の頃から弁護士になりたいと言っていたのを思い出す。彼は父親がとある事件の容疑者になり、冤罪を喰らいそうになりそうだったところを弁護士に助けてもらった過去がある。それ以来、弁護士を志していた。だから、部活はせず、予備校に通っている。


「頑張れよ」

「それは、お互いだろ」

「あぁ」


 いつの間にか、駅についた。裕と英二はそれぞれ別の路線に乗って帰る。ここでお別れだ。改札口を2人は通る。


「んじゃ、またな。ちゃんと、感想くれよ」

「1日じゃ無理だからね。じゃあ、休日明けに」


 2人はいつも通り別れる。裕は次に来る電車の時刻を確認する。まだ時間はありそうなのを確認した裕は、少しゆっくりと歩いていく。早く明日にならないかな。そう思いながら、ホームへと向かっていった。




「裕~! アンタ宛のが届いたわよ~」


 翌日、裕は部屋で勉強をしていると姉の声が聞こえた。裕は急いで部屋から出て、階段を降りる。何が届いたかすぐに分かった。


「ほい、これ」


 アルバイトから帰ったであろう姉は裕に届いた荷物を渡す。部屋にいくのすら待ちきれなかった裕はすぐに段ボールを空ける。そこには、『ファンタジア ジ ウィザード』と書かれたゲームがあった。


「あっ、ユメノミクスの。そういや、アンタ先行抽選で当たったんだっけ」

「そうそう。終わったら、姉さんもやる?」

「んじゃ、お言葉に甘えて」


 姉はそう言うと自分の部屋へと行った。裕はそれを見た後、同じように部屋に戻っていく。そして、部屋に入るとさっそく勉強道具たちを片付け、準備を始める。一通り終えると、ゲームケースを開ける。そして、カセットと共に入ってあったゲームの説明を読んだ。


*****


 光暦300年、様々な国と人種が存在する異世界、ファンタジアはかつてない災害に見舞われていた。

 それは、『暴虐の魔王』ベルゼーンとその配下たちによる侵略である。

 圧倒的な力を持つ魔王ベルゼーンは世界を支配することを目論んでいた。

 世界は貴方の力を求めています。武器を取り、仲間を集め、世界を救う旅に出ましょう‼


*****


「もの凄い王道だなぁ……」


 ストーリーのあらすじを読んだ裕はそう呟く。彼は、ネット小説とかも読むがここまで王道のなのは正直久しぶりだった。

 でも、だからこそやる気は起きる。

 王道というのは、人々に人気だから王道になった。少なくとも、裕はそう思っている。魔王を倒す物語。いいね、主人公を動かし、ゲームの世界を救うのも悪くない。裕はそう思い、さらに説明を読み進めていく。


*****

 このゲームの設定について。


能力

・レベル

このゲームはレベルを上げていきます。レベルは敵を倒したり、困難な事を解決していくことで経験値が溜まり、上がっていきます。最大はレベル100まで。レベルが上がると、スキルが着く場合もあり、ステータス、スキルや魔法のレベルも上がります。レベル100まで頑張っていきましょう!


・クラス

このゲームには出来ることによって、それぞれクラスがあります。種類は7つあり、

・剣を使って戦う剣士

・魔法を使ってみんなをサポートする魔法使い

・魔法と剣を組み合わせられる器用な魔法剣士

・槍と共に誰よりも早く動く槍兵

・遠距離から矢を放ち、敵を狙撃する弓兵

・盾を使い仲間を守る盾兵

・気配を消し、敵を急襲する暗殺者

です。それぞれ長所と短所がありますが、プレイヤーがやりたいなと思う職業を選びましょう。ただし、途中で変えることは出来ません。慎重に選びましょう。


・ステータス

能力を表す数値の事です。基礎ステータスとクラスステータスがあり、基礎ステータスはHP、耐久、力、速さ、魔力があります。クラスステータスはクラスによって違います。どちらも数値は最大999。最大値まで目指して行きましょう。


・スキル

それぞれ、経験やレベル上げなどに生えます。スキルが着くと、出来ることが大幅に増えていきます。弓兵や暗殺者などは最初からスキルが1つついていたりします。


・魔法

魔法使いや魔法剣士が持っている固有能力のことです。敵を攻撃したり、仲間をサポートすることが出来ます。

魔法には属性があり、

・壊すことが得意な火魔法

・治したり変化したり何でも出来る器用貧乏な水魔法

・物を作るのが得意な土魔法

・操作が得意な風魔法

・世界の力が使える光魔法

・そして、レアである闇魔法

があります。どの属性が得意かによって、出来ることも変わっていきます。魔法は魔導書を読み、練習するもしくは誰かに教わることによって習得することが出来ます。

自分がやりたいことを選び、魔法を練習していきましょう。


・補正

補正は最初からクラスごとについています。例えば、剣士だったら基礎ステータスである力と速さに補正がつきます。これによって、そのステータスはほかのクラスよりも出来るようになるのです。また、クラス次第ではほかのクラスより一部のステータスが低くなる傾向があります。


・装備

装備は店に行ったり、冒険で敵を倒したりすることによってもらえます。最初は選んだクラスに適した初期装備がもらえます。何度でも変えられるので、いろんな武器を試してみましょう。


*****


「あっ、クラス自分で選べるんだ」


 裕はそう思いつつ、どのクラスで行こうか考える。今まで色んなゲームを遊んだ経験から暗殺者と弓兵、あと魔法使いは近距離や基礎ステータスが低そうだ。クラスによって一部のステータスが低くなるというのはおそらくだがそこら辺だろう。


 裕としてはある程度、正面戦闘でも強そうなクラスがいい。そうでないと、攻撃が当たったりしたらすぐに死んでしまいそうだから。


「まぁ、避けたりすればいいだけだろうけど」


 説明を見る限り、プレイヤーは自由に動かせる。だから、回避とかも出来るんだろう。が、裕としてはそれでもある程度基礎ステータスが高そうなクラスが良かった。


「そうなると、剣士か魔法剣士、あと槍兵もありか?」


 その辺は踏まえて、クラスはこの3択。この中から裕は一つに決めないといけない。クラスは一度選んだら、変えられない。慎重に選ばないきゃいけない。


 さて、基礎ステータスだけ見れば、この3択。が、裕はもう1つ考慮したいことがあった。それは出来る事である。例えば、戦闘時なら戦うだけでなく、ある程度仲間をサポートできるようなのも欲しい。

 というのも、このゲームはあらすじにも書いてあるように仲間と共に戦うようだ。どんなことが出来る仲間か分からない以上、一点特化というのもなぁと裕は思う。

 

「このクラスにするか」


 色々考えた上で、裕はあるクラスに決めた。それは魔法剣士である。魔法が使えるクラスなどで接近戦も仲間のサポートも出来る。器用貧乏と言われればそうだが、出来ることは多いのがいい。そう思って、裕はこのクラスに決めた。


 どのクラスか決めた裕は意気揚々とゲームカセットを入れ、出来るまで待つ。その間、説明書をさらに読み進めていく。


 どうやら、ゲーム世界ファンタジアには様々な国と人種が存在するらしい。普通の人間はもちろんいる。が、それ以外にも翼をもつ天空人の国やエルフの村が多くある国など様々な国が多種多様な特徴を持ってあるようだ。


 しばらくは平和に暮らしていたが、千年前に魔王が突如現れ、魔王の配下の魔物や魔人たちと共に侵略しているそうだ。実際、ある国は魔王の侵略がによってほぼ壊滅状態だそうだ。ほかの国も魔王たちとギリギリの戦いをしているという、絶望的な状況。


 そして、そんな絶望的な状況を打開するために主人公プレイヤーはストーリーで仲間を集め、魔王と戦う。


 大まかなあらすじを理解した裕はこう思う。この世界の魔王めちゃくちゃ強いな⁉と。どうにも、様々な人々が何千年間挑んだが、その度に敗北したようだ。おそらく、かなり手ごわいのだろう。

 でも、そこもいいなと裕は思う。推定、ラスボスだしそのくらいであった方がやりがいがある。


 そう思っていると、画面に明るくなる。どうやら、出来るようになったみたいだ。裕はヘッドフォンをつけ、ゲームを開く。


*****


 性別は男にしますか? 女にしますか?


*****


 どうやら、開始早々から操作キャラを決めるらしい。裕は迷わず、男を選ぶ。次はクラスのようだ。説明書に書かれていた通り、7つのクラスがある。裕はこれも事前に決めていた通り、魔法剣士を選択した。


 裕はそのまま次々と決めていく。装備に関しては、武器は最初はあらかじめ決められている。が、服は何種類の中から決められる。無難に冒険者セットを選ぼうとしたが、最後にあった学ランにする。


「こっちのが面白そうだし」


 どうせ、自分でキャラを設定できるなら、自由に設定したい。そう思った裕は学ランを選択した。

 

 そして全ての操作を終え、そろそろOPかなと思っていた時だった。


*****


コンニチハ、プレイヤーサマ。


ゲームヲ始メル前ニ、名前ノ入力ヲ、オ願イシマス。


*****


「えっ、もう?」


 その画面を読んだ裕は驚いたように呟いた。この場面で名前を聞かれると思っていなかった。ただ、今回のは先行抽選でやっているし名前を確認しておきたいのだろうか。そう思い、裕は本名を入れる。


         ユウ・ハヤマ


 自分が打った文字とは少し違くなった。その文字に裕はうん?と疑問に思いつつも、まぁいいやとなる。まぁ、外国の人みたいな名前になったが、まぁ間違ってはない。

 そして、そのまま決定ボタンを押した。その瞬間、ヘッドフォンから音楽が流れてくる。たぶん、有名な歌手の声。その歌声を聞きつつ、裕は画面を凝視する────────


*****




          おはよう、ユウ・ハヤマさん



 はそんな声が聞こえて、目を覚ました。目に映ったのは、一面の青、つまり空。


「あれ、部屋は?」


 よく分からない光景にユウはそう呟く。これが、ユウ・ハヤマの異世界での最初の言葉だった。


               


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