第2話 森でのはじまり

第2話 森でのはじまり


「ふぅ……さっきの爆発、ほんとに私の……?」


まだ掌がじんじんしている。

それに疑問がたくさんあって戸惑っている。


(魔法……って思ったけど、あれ魔法なの?

ていうか、ここどこ?私、夢見てる? いや夢にしては痛かったし……)


頭の中がぐるぐるしている。

記憶も、なんだか霧の中みたい。


制服。夕焼け。バスの揺れ。


「……顔も、名前も……思い出せない……」


胸がズキッと痛む。

大事な何かを落としてきたような、そんな感覚。


「……ううん。今は考えてもわかんない。

とりあえず、生きなきゃ……!」


ぐぅぅぅぅ──。


「……あ、はい。まずはごはんですね、了解です胃袋さん……」


持っていたはずの鞄が近くにあるか周囲を探してみるけど、全然

見つからなかった。

落ちていた木の実っぽいものを拾ってみる。

くんくん。……酸っぱい草っぽい匂い。なかからは何かがドロッと垂れてきた。


「うん、これ絶対お腹こわすタイプのやつ……!

はい、没収~~!」


そっと地面に置く。

転生(?)一食目が毒とか、さすがに悲劇。


しゃり……しゃり……。

自分の足音だけが森に響く。


(……ひとりって、こんなに心細いんだ)


木漏れ日の道を、とぼとぼ歩く。

焦げた匂いがまだ風に残っていて、さっきの爆発を思い出す。


「……あれって、夢じゃないんだよね。

だって、この匂いリアルだし……。ていうか火事とかになってないよね!?森さん生きてる!?」


慌てて周囲を見渡す。

幸い、燃えている気配はなかった。


「……セーフ。よかった……私、環境破壊系になるとこだった……」


小さく息を吐く。

そして、ふらふらと歩いていく。


空を見上げると、光の粒がふわふわと漂っていて綺麗で、でも少しだけ寂しいような切ないようなそんな気持ちが沸き上がってきた。


「……誰か……いるのかな、ここに。

家族とか、友達とか……。いたはずなのに、思い出せない……」


胸がぎゅっと縮む。

涙が滲むけど、ぐっと我慢して頬をぺちぺち叩く。


「元気出せリリア! ……って誰? あ、私か! うん、私、リリア! 名前覚えてた! えらい!」


ひとりボケツッコミをしながら拳を握る。


「よし、ごはん探し再開! 倒れる前に見つける!

……できれば毒じゃないやつでお願いします神様!」


どんぐりっぽい実を拾う。

じーっと見つめる。


「……どんぐりって生でいける? いや、リスは食べてるけど……リスはリスだし……人間じゃないし……」


悩みに悩んで、そっと木の根元に戻す。


「……命、大事に……!」


そして、また歩き出す。

空腹と不安を抱えながらも、ほんの少しだけ前を向いて。


泣きそうでも、足は止めない。

夢なのか現実なのかもわからないけれど――

それでもリリアは、生きようと思った。

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