銀河舞踏会 γジュリエット 2nd folio

やまなし

第1話「赤 の 魔女:vs. Edmund single repetition」

chapter 1-1

 月光がまぶしい夜だった。

 静かな夜の森の入り口で燃えさかる赤い長い髪を靡かせながら、彼女は頬を朱に染めた。

「わたし誓います。キューピッドの一番強い弓に懸けて。妖精をも射貫く余剰の矢をその弓に掛けて。フィラメントの壁を突破する使い鳩を架けて、絶望に身を投げた紅蓮の焔のなかを駆けて、あらゆる恋人たちが誓い合ったその数になど比較にもならない、たった一つの願いに賭けて――。ええ、きっと誓います。ロメオ様」

 ロメオは彼女の頬にそっと手を添えると、待ち合わせの誓いに優しく応じた。

「つぎの満月の夜。かならず逢いに行く、戯曲の世界〈ストラトフォード〉で。ジュリエット」

 その誓いは果たされたのだろうか。

 果たされなければ、結果は過去に置き去りに、

 あるいはいまだ到達しない未来の座標に据え置かれ、時間的感覚の日が昇るまで見られない。

 すくなくとも、三次元の存在は。

 ただ確実に宣言できることは一つ。

 現在、という照らされた一点において、状況はまるで誓いとはほど遠いことである――。

 貫通した空や大地から、空気が吸い込まれるように漏れていて、あらゆる物がその穴に落ちていく。空を飛んでいるのか、あるいは落ちているのか――、その判別が付きにくい天と地の狭間で二人は対峙していた。

「収束爆撃〈レーセオン・ベンド〉」ロメオは光を束ねた八本の剣を扇状に展開する。

 対して、ジュリエットも光の剣を顕現する。

「絨毯爆撃〈レーセオン・サルタイヤ〉」それは十字に重なった短剣で、無数に折り重なって、まるで大きな翼となっている。

 それら鋭利な光の刃を、二人は互いの名を叫び合いながら射出した。

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