第4話 変化


そう結論づけて、思考を放棄した。


「ん……」

眩しい日差しが差し込み、まぶたをゆっくり開く。


寝ぼけた頭のままリビングへ足を運ぶと――


そこに、すでに“起きている”リズの姿があった。


窓際に立ち、無表情のまま外を見つめている。

昨日よりも髪は整っていて、借りた服もきちんと着ているのに、それでもどこか“場違いな存在”に見えた。


(……朝からずっと起きてたのか?)


リズは俺の気配に気づき、ゆっくりと振り返る


「ライ様。」


相変わらずの、何一つぶれない呼び方。

俺の眠気は、その一言で一気に吹き飛んだ。


「……おはよう。いや、俺はライじゃなくて……」


言いかけたところで、昨日のやり取りが脳裏によぎる。

何度否定しても通じなかったのだ。


(……今日もダメなんだろうな)


ため息をつきながら近づくと、リズはぼんやりと俺を見つめているだけ。


リズの顔をよく見ると――

その目の下に、薄く クマ が浮かんでいた。


(…寝てないのか?)


「……」

沈黙だけが流れ、相変わらず気まずい空気が続く


(どうしたものか…)

気まずい空気のせいで、どうも落ち着かない


「…はぁ」

相変わらず、リズは襲ってもこなければ動きもしない。

仕方なく、俺は朝ごはんを作り始める。


朝食を作りながら、ふと考える。

リズの言う「ライ様」とは誰なのか。

そして、どうして俺をその人物と勘違いしてるのか。


(そもそも、あいつ女のくせに俺を襲ってこないのも……はぁ、ダメだな)


考えれば考えるほど疑問が湧き出し、結局、考えるのをやめた。

そんなことを考えているうちに、気づけば朝食ができていた。


「…食べろよ」

リズの前に朝食を置くと、リズは相変わらず箸が下手でフォークで食べていた。


昨日に引き続き、女と二人でテーブルを囲むなんて、まずあり得ないことだった。

ついに俺は、誰かと一緒に食事をする経験を初めて味わった。

 

いつもなら、女に怯えながら生きている俺だが、不思議なことに、リズとなら何も恐れずに食事ができる。


(俺が怖がりすぎてたのか?)


そんなことを考えていると、テレビでは今日も相変わらずの報道が流れていた。

男が襲われ、女たちが争い、死人が出た――そんなニュースだ。


(…よくわからないな)


テレビやこれまでの人生の経験では、女は俺を無理やり襲ったり、攫おうとする存在だった。

だが、リズのような人物は、生きていて初めて見た。


表情を伺うようにチラチラとリズを見ていると、彼女は相変わらず真顔で、無言のままもぐもぐと朝食を食べていた。


その瞬間、ガンガンッ!とドアが激しく叩かれる音が鳴り響いた。


遅れてしまい申し訳ないです!次の投稿は多分水曜日の21時半くらいです!コメントしてくれたら嬉しい!

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