マホウのココロのバラ
大谷祐人
「マホウのココロのバラ」
(1)
「まぶしい!」
それは太陽だった。
マホウとして生まれたばかりのバラは、とても眩しい太陽を見た。
バラは育ってゆくにあたって周りから色々な言葉を言われた。
「トゲがあるから怖い」と言われたバラはトゲで他者を刺さないように気をつけた。
「緑の茎はもっと元気な色でなきゃ」と言われたので、もっと元気な色の茎を目指した。
「蕾が実る時は誇らしげも無くさりげなくするのが本物なのよ」と言われたので、蕾が実る時は誇らしげも無くさりげなくすることをし続けた。
やがてだんだんマホウのバラは自分が何なのか分からなくなった。自分が他者を刺したり、元気すぎていばったりする者みたいに思えるようになった。
そうしたうちにどんどんマホウのバラのココロは萎れていった。
永遠の闇のようだった。
(2)
闇の中で過ごしていたバラは祈り続けながら過ごした。
「どうか自分は生きて行けますように」と、自分が何者であるかもわからなくなりながら、ココロを守り続けていた。
ある時、不思議な声が聞こえ出した。それは光と名乗る者の声だった。
バラはココロに悩まされながら、その声に翻弄された。そしてフラフラになった。
バラは意識を保ちながら、これは山登りの頂きにいるのではないかと思った。
祈りが登ることならば、降る方法を行わなければ高山病のようにフラフラのまま命を落とすだろう。
そう考えたバラは世界に代償を求め始めた。
バラは自分のトゲをよく出すことにした。
そして緑の茎も自由気ままに色づけることを意識し出した。
蕾もさりげも無く自信たっぷりに実らせ誇るように意識した。
バラの目標は普通のバラになることだった。
普通の美しいバラになることを想った。
バラは祈りで登った山を代償で降って行った。命を落とさないように大切に命がけで地上に着くことを目指した。一歩ずつ。
バラが地上に降り立った時、世界に一つとして無い、美しいバラとして咲き誇った。
世界の普通のただ一つのとても珍しく美しいバラとなった。
マホウのココロのバラは誰にでも心の中に有るものだよと薔薇が言う。
太陽の光の中で、そうささやきはこだまし続けている。
マホウのココロのバラ 大谷祐人 @U_to_O_tani
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