第2話 金髪の少女
翌日。放課後の教室で例の本を開いた。今日はどこまで進めるかなー。
————選択してください
▶︎続きから
▷初めから
ここも選択するの?やり過ぎじゃない?
“続きから”が選択されました。
レムとキョウスケは王都に入って早々、武器屋に向かう。勿論キョウスケの装備を整えるためだ。これから魔物と戦う際に今の装備では歯が立たない。
「今回は私がお金を出しますので、選んできてください」
そう言われ、キョウスケが最初に向かったのは。
▷武器売り場
▷防具売り場
▶︎装飾品売り場
…武器の次に防具でいいか。アクセサリーは後で回ろう。
“武器売り場”が選択されました。
キョウスケは様々な武器が置いてある売場に向かう。身の丈程もある大剣、レイピアのような細い剣、携帯し易い短剣など。
————選択してください
▷鉄の剣 こうげき 10 1500シード
鉄を打った片手剣。丈夫で使い勝手のいい代物。ただし攻撃力は控えめ。
▷銀の剣 こうげき 20 3000シード
銀を打った片手剣。美しい装飾が施されており儀式用としても使える。呪いを無効化する。
▷蛇腹の剣 こうげき 15 500シード
鋼を打った短い刃をいくつも継ぎ合わせた独特な形の剣。慣れないと自分が怪我をすることに。
▶︎グラディウス こうげき 40 500000シード
かつて名高い騎士が愛用していた剣。オリハルコンと金剛石を打ったもの。軽くて使い勝手が良い。切れ味も抜群。
これグラディウス選んだら絶対レムさんに怒られるよな。
値段的に考えると蛇腹剣が一番だけど、扱いきれなくて自滅なんてことも起こりかねない。
………よし。これにしてみよう。
“銀の剣”が選択されました。
剣を手に取って眺めているところへレムがやって来る。そうしてキョウスケの手の中のそれをまじまじと眺める。
「キョウスケさんはなかなか良い目をしていますね。値段に目が眩んで蛇腹を選ぶ冒険者も少なくないというのに。さて、では防具の方に参りましょう」
レムの後について防具売り場に来たキョウスケ。盾に小手に兜など、こちらも色々な防具が取り揃えられている。
————選択してください
▷鉄の盾 ぼうぎょ 10 1500シード
グラナトゥムでは一般的な鉄の盾。剣と異なり、少々重くて使い勝手が悪い。
▷銀の盾 ぼうぎょ 20 3000シード
銀で出来ている美しい盾。軽くて使い易い。主に女性に人気。毒を無効化する。
▷金の盾 ぼうぎょ 25 10000シード
眩い金色に輝く盾。その眩しさで暗闇と石化を無効化する。装備しているととても目立つ。
▶︎ルーンシールド ぼうぎょ 30 5000シード
ルーンが刻まれた盾。杖の力を底上げする。とある杖と合体させることで何かが起こるという話も。
あ〜。あるよな〜そういう系のやつ。問題は合体させる武器が現時点ではさっぱり分からないという点だ。まだこの世界のこともよくわかっていないし、これはやめておこう。
金の盾も性能には惹かれるけど…。あんま目立つの好きではないんだよな。銀の盾にしよう。
“銀の盾”が選択されました。
気になる盾を手に取り、重さを確かめるキョウスケ。隣でそれを見ていたレムは感心したような声を上げた。
「てっきりルーンシールドを選ぶと思っていましたが…。やはりキョウスケさんは良い目をしている」
キョウスケは首を傾げ、理由を問う。レムは微笑んだ。
「最初から装備の性能に頼る人は実力が伸びませんからね。その点で言えばキョウスケさんの選択はなかなか良い線をいっています」
彼女の言葉にキョウスケは…。
▷ありがとうございます。
▷バランスがいいと思ったので。
▶︎本当はもっと良いのが有れば…。
人に金を出してもらう分際でなんつぅ選択肢選んでいやがる。
“バランスがいいと思ったので。”が選択されました。
キョウスケは色合わせが良いからと告げる。その言葉にレムは再度感心したような声を上げた。
「なるほど、色合いを考えて選んだのですね。確かに、同じ材質の方が統一感も出ますからね。ではキョウスケさん、あなたに差し上げた杖を一旦お預かりしてもよろしいですか?」
首を傾げたものの、キョウスケはレムに杖を手渡す。彼女はそれを受け取り、店主の方へまっすぐ歩いていく。
「店主、失礼します。こちらの杖に銀加工を施していただけますか?」
「お、レムちゃんじゃねーの。この杖に銀加工だって?お安い御用だぜ。但しちょっくら時間が掛かるがな」
「構いません。夕方くらいに取りに参りますので、それまでにお願いします。その時にこの方の武器と防具の値段もお支払いします」
「あいよ。任せな」
レムは店主に頭を下げた。それに倣い、キョウスケも頭を下げる。そんな彼を、店主はじっくりと眺めた。
「……さっきから居るその男はレムちゃんの彼氏か?随分ひょろっちぃけどよ」
その人の言葉にキョウスケは…。
「いえ。この方はとある事情があり王に謁見に参った者です。私はただ案内をしているだけです。そういった関係ではありませんし、これから先もそういう関係になる事はありません」
…選択肢すらぶち壊すとは。レムさん、なかなかやるな。
彼女の言葉にキョウスケは…。
▷苦笑する。
▷悲しげな顔をする。
▶︎「こっちも願い下げです」
めげない選択肢でありブレない選択肢だ。
でもずっと真面目なやつばかりだとアレだよな。ちょっとここは遊んでみよう。
“悲しげな顔をする。”が選択されました。
キッパリとした彼女の物言いに、シュンと項垂れるキョウスケ。その様子を見た店主は何も言わないが、鼻で軽く笑う。
レムはその人に再度頭を下げると、踵を返して扉へ向かう。彼女の後に続こうとしたキョウスケの背中に、店主は声を掛ける。
「元、王国一の女騎士だ。落とすのは大変だろうが、頑張れよ、坊主!」
彼は軽く頭を下げて店を出る。先に出ていたレムは城へ足を向けた。
「ついてきて下さい。ご案内しま…」
言葉は続かず、彼女は倒れかけた。キョウスケは咄嗟に抱き留める。何事かと思っていると、彼女は穏やかな寝息を立てていた。
調べた限りだと急に眠り込むらしいけど、本当にその通りなんだな。これは確かに、前線から外されても仕方ないな。
————行動を選択して下さい。
▷お姫様抱っこ
▷おんぶ
▶︎担ぐ
※因みに彼女はノースリーブのブラウスにタイトなミニスカートという服装である。
最初の選択肢の時に華奢な肩が云々って言っていたのはそういう事だったのか。
担ぐのはマズイよなぁ。おんぶもちょっとな…。でもお姫様抱っこか…。
えぇい消去法じゃ!
“お姫様抱っこ”が選択されました。
キョウスケは暫し逡巡し、彼女をその腕に抱き上げた。ぐっすりと眠っており、起きる気配がまるで無い。
このまま城に向かってもレムだけ回収されて門前払い、ということにもなりかねない。考えあぐねているところへ声が響く。
「あれー?レムと、どちら様?」
振り返れば甲冑姿の少女が首を傾げながらキョウスケ達を見ていた。金髪のツインテールがよく似合う。
———何か尋ねますか?
▷少女の正体
▷宿屋の場所
▶︎フリーか否か
この子が幾つなのかは知らねーけど!そこまでゲスじゃないわ!!!
“少女の正体”が選択されました。
キョウスケは軽く自己紹介をし、少女に何者かと尋ねる。ぱちぱちと瞬きをしつつ、少女も自己紹介を始めた。
「アレアの勇者ってあなただったんだー。あ、私はニーナ。レムの同期の女騎士でーす。15歳でーす。よろしく〜」
非常に緩い彼女の挨拶に今度はキョウスケの方が目をしばたたく。彼のイメージする騎士の姿からかけ離れているためだ。
「ところでレムを抱えているという事は、その子はまたぶっ倒れちゃったのかな?」
言いながら彼女はスタスタと歩み寄ってくる。至近距離まで近づくと、むにむにと彼女の頬をつまみはじめた。
「この子ねー、病気になる前はほんっとのほんっとうにデキる騎士だったんだよ。でもカッチリした性格だし、あんまし遊んでくれなかったから、寝てる時にこうやっていたずらするんだー。スラってしてる癖にほっぺたフニフニなんだもん。触り心地最高だよ〜」
ニーナと名乗った少女は遠慮なくレムの頬をつまみ続けている。ある程度して落ち着くと、キョウスケを見上げた。
「ところで勇者くん。まさかそのまま王様に謁見するつもり?」
質問の意図がわからないまま彼は頷く。ニーナは大袈裟に首を振った。
「ノン!ノンノンノン!!!そんな田舎っぽい格好で謁見できるほどグラナトゥムの王様は落ちぶれてないよ!!ほい回れ右!」
彼女の剣幕に圧され、キョウスケは先程まで滞在していた武器屋に戻る。彼の後に続いて店に入ったニーナは、店主に声をかけた。
「へい店主!パラディンアーマー一式貸して!」
ちょうど客が切れて一段落していたその人は、ニーナとキョウスケを交互に見た。
「今度はミーナちゃんまで連れてくるとはなぁ。お前さん、なかなかやるねー」
「ミーナじゃない!ニ!ー!ナ!ほんでこの田舎っぺ男子に王様に謁見できるようなパラディンアーマーを一式貸してってば!」
「王に謁見できるような鎧は他にもあるんだが」
「いーから早く!!」
「はいはい。んじゃ坊主、レムちゃんちょっとミーナちゃんに預けて俺についてこい」
はたしてわざと間違えているのか。疑問に思いながらキョウスケはニーナにレムを預ける。ムッとした顔で「ニーナだって何度も言ってるのに」と言いつつ、彼女は友人を受け取った。
その後、キョウスケは店主が去っていった方に足を向ける。店の奥へと続く廊下を歩いていくと、二階へ続く階段が見つかった。
上がってみれば、そこは様々な鎧が置いてある倉庫になっていた。しかし店主が見当たらない。
———選択して下さい。
▷大人しく待つ
▷見て回る
▶︎気になる鎧を試着する
………グラディウス並みの値段の鎧がわらわらとあるなら、この選択肢は絶対に絶っ対に絶っっっ対に選んだらダメなやつだ。
“見て回る”が選択されました。
迂闊に触れないように気をつけながらキョウスケは鎧を見て回る。竜を模したもの、全身真っ黒の鎧、白を基調として所々青で装飾してあるもの。色や形は様々だが、どれも丁寧に造られている。
ふと、キョウスケは一つの鎧の前で足を止める。決して派手ではないが、どこか存在感を醸し出しているそれに魅入っていると、背後から声を掛けられた。
「すまん坊主。ちょいと遅れちまったが…。ん?お前さん、それが気になるのか?」
店主はキョウスケの隣に立ち、腕を組んでその鎧を見上げた。
「これはなぁ、最強と謳われた冒険者が愛用していた鎧を模したものなんだ。“大地の鎧”って言ってな。世界一の防御力を誇った鎧なんだと。ま、これはレプリカだけどな」
店主の言葉を反芻するキョウスケ。名前を呼ばれたその鎧は、一瞬だけ光ったように見えた。
「さて坊主。お前さんに貸すパラディンアーマーはあれだ」
店主は一つの鎧を指さす。そこには“聖騎士”の名に恥じない鎧が置かれていた。
思うに金剛石とオリハルコンで造られている鎧だ。思わずため息が漏れるほど美しい。
「試着室は階段の横にある。中に着る服もその中に入ってる」
店主に礼を言い、試着室に入ったキョウスケ。慣れない鎧に四苦八苦しながらもなんとか着替えを済ませる。試着室から出てきた彼を見、店主は目を丸くした。
「なんだ坊主、意外と様になってるじゃねぇか」
再度店主に礼を言い、時計を確認する。時刻は間もなく正午になろうとしていた。
その後、店主の後についてレムたちの元へ戻る。
「おーい二人とも、坊主の着替えが終わったぞー」
店主の言葉に店の中を回っていた二人は振り返る。レムも目を覚ましていたが、何故か顔が赤い。
———何か尋ねますか?
▷どうしたんですかその顔
▷顔真っ赤ですけど何かあったんですか
▶︎俺に見惚れてるんですか〜?
これ、キョウスケ本人が目の前にいたら無表情で顔を殴りたくなる。いや殴る。無茶苦茶ウザいし俺の一番嫌いなタイプだ。
“顔真っ赤ですけど何かあったんですか”が選択されました。
キョウスケはレムの顔色について言及する。しかし彼女は一層顔を赤くして俯くだけ。そんな同期をニコニコしながら見ているニーナ。キョウスケは彼女に事情を尋ねた。ニコニコ笑顔を崩さず、ニーナは説明を始めた。
「やー、なかなか目を覚さないものですからね〜。むにむにしてるところをむにむにしたり」
「覚醒する手伝いをしてもらっただけです。さぁキョウスケさんの準備も整ったようですから城へ向かいましょう!昼食はそのあとでよろしいですよね!?」
ニーナの言葉を途中で遮り、レムはズカズカと出口へ向かう。軽く謝りながらその後にニーナが続き、キョウスケも次いで外に出た。
「今度こそついて来てください。きっちりしっかりご案内します」
レムは言い、城の方へスタスタと歩き始める。ニーナとキョウスケはその後をついていく。
暫く歩いても彼女の顔色はまだ赤い。キョウスケはもう一度ニーナに理由を尋ねた。もちろん小声で。
「んー?勇者くん、気になるの〜?うふふふふ、どこをむにむにしたと思う〜?」
悪戯っぽい目で見てくる少女に、キョウスケは。
▷頬
▷二の腕
▶︎胸
………突っ込まねぇ。絶対に突っ込まねぇ!
“頬”が選択されました。
少し考え、頬だと答える。ニーナは不服げに口を尖らせた。
「なんだぁ勇者くんつまんないなぁ。正解だけどさー、もっとほら、なんかこう、あるじゃん!やーんえっちーみたいなさぁ!」
どういう答えを期待していたのだろう。キョウスケが首を傾げたその時、前方にいるレムが二人を呼ぶ。
「ニーナ、キョウスケさん。我らがグラナトゥム城に到着しましたよ」
言われるまで気づかなかったが、確かに城は目の前だった。
門番と暫く話をし、レムは二人を振り返る。
「私とキョウスケさんは玉座の間まで行くけれど…。ニーナはどうするんだ?」
「私も付いてくー」
「そうか。分かった。ではキョウスケさん、このまま私に続いてください」
彼女に従い、入城する。ロビーを通り抜け、廊下を真っ直ぐ進む。いくつかの部屋を通り過ぎたのち、突き当たりに一際立派な扉があった。
「この扉の先に王がいらっしゃいます。心しておいてください」
レムの言動からは緊迫感が感じられる。背筋の伸びる思いでキョウスケは居住まいを正した。
———今日はここまでにしますか?
▶︎はい
▷いいえ
気付けばもうそろそろ最終下校時刻だ。もう終わりにしよう。
さて、ちゃちゃっと支度して帰るか!もうじき5月とはいえ夜は結構冷えるしな。
もーほんとこの時期は何着れば良いのか分からんわ〜。ま、学校には制服着て来るわけだけど。
そんなことを考えていると腹が鳴った。今日は珍しく母さんが早く帰ってくるんだったな。帰宅部なのに遅くなったら心配するだろうから急いで帰らないと。
今夜の晩飯は何だろな〜なんてことを考えつつ、帰路についた。
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