2.崩壊

 

……突然だが、画面の前の君は実際にサーカスや


ピエロを観たことがあるか?


観たことがあるなら君は幸運だ。


ネットやゲームが普及した現代では


サーカスやピエロなどの仕事は消えつつある。


しかし中には「そんなことはない」と思う人も


いるだろう。


それがわかっているのに何故話すのか?


それはが実際に直面した事実であり、今も


実際に頭を悩ませているからだ。


「うち、閉園閉まるになるから。今までありがと、じゃね。」


「は?」


そう、失業した。


「おかしいでしょ!?いきなり閉園知らされて、しかもそのまま解雇ってどういうことだよ?」


「仕方ないだろう、雇う金もないんだ。これで勘弁してくれ。」


目の前の無駄に高そうな革張りの椅子に座った女が


机に一万円札を置いて立ち上がる


「じゃあ、またどこかでな。」


「......」


おもむろに金を握りしめ、俺はとぼとぼと家路につい


た。


他に仕事の宛もなく…。


食いつなぐにはコンビニの夜勤バイトや、スーパーの


パートをするしかなかった。


自分よりもずっと若い学生達から馬鹿にされ、


自分の上司となった男に怒鳴られ、


給料も安いのに、誇りと憧れだけで続けていた仕事


は、時代が移り変わると同時に無くなった。


対して貯金も無く、家も家賃を滞納したボロアパー卜


にギリギリで過ごしている。


に、生きる希望はもう無かった。







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