墓参り

自宅アパートに着き、四階までの階段を登り四〇二号室のインターフォンを押すと部屋の中から声がし扉が開き

「おぉリョウタおかえり。」

と父親が優しく出迎えた

「昼はもう食べてるか?」

「まだ食べてない」

「そうかじゃあ簡単にオムそばとか作れるけどそれで良いか?」

「ああ。俺着替えてくるよ」

リョウタがそう言い汗を流すと着替えてリビングに向かうとキッチンでは父が料理をしており香ばしい匂いが部屋を包む。やがて昼食が出来上がると父親とオムそばを分け合いテレビを見ながら食べる。

「にしても最近このニュース良く見かけるな」

父はそう言い報道されてる「眠り病」のニュースを見て言った。

「それはそうとお泊まり楽しかったか?」

父が焼きそばを啜りながら尋ねる

「勿論、めっちゃ楽しかったぜ」

と父の問いに返すと

「それは良かったな」

とまた嬉しそうにそう言った。それから昼食を食べ終え、皿洗いを終えたのちリョウタが部屋に戻ろうとした際


「あと夕方になったら墓参り行くから準備はしといてくれよ」


と父親が手を拭きながら言うと、リョウタも手を振り自室に戻った。部屋の冷房を付けてベッドに横になりながら郷土資料を眺める。

ダメだ全然頭に入ってこない

本を閉じ、体を横向きにすると幼い頃の自分と姉のサユリが写っている。その日の夕方父の車に乗り途中で花屋で花を買うと墓場まで向かった。墓は傾斜がある坂を少し登ったところにあり、バケツに水を汲むと二人で墓の前に立った。

「母さん、サユリ。今年も平穏な日々が続いてるよ。来年からリョウタも高校生だ。どうかこれからもリョウタの行く末を見守っててくれよ」

父がそう言い生前サユリが好きだったジュースと母が好きだった花を供え

「お前にはいつも苦労をかけるな」

少ししんみりとした口調で言った

「そう言うのナシって話ししたろ、どんな時も何があっても笑ってよ言ったの父さんだろ」

「そうだったな、悪かった。父さんは大丈夫なんだ、唯親としてお前に気負いさせてないかそれだけが気がかりなんだ」

「俺なら心配ないよ、ほら帰り何か食って帰ろうぜ」

リョウタがそう言いバケツを手に取ると来た道を戻って行く。空が夕方から夜に移り変わる中自分はこれまでと何一つ変わりないと暗示をかけながら坂道を降りて行った

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