昼下がり
翠ヶ丘第二中に到着した後、各々解散した。時刻が日中に差し掛かる中、アオイはナナミと帰路に向かっていた
「ナナミ、お腹空いてる?。空いてたら何か作るけど」
「そんなに空いてない。あと今日の夜ご飯は私が作りたい。」
とナナミが言い
「じゃ昼は軽く冷うどんにするね」
と提案したアオイの問いに軽く頷いた
ここ最近ナナミの表情が少しだけ表情が豊かになった様な気がする。それは嬉しい事であったが、同時に昨日芽生えたここ最近感じていた疑念に対する答えが心の隅で疼いている。昨日の夜リョウタに疑念を打ち明けてから一度は廃校に行こうと言う話になったが、帰り際その話には触れず直ぐに解散してしまった。その折携帯から通知音が鳴り開くと
母からの連絡が来ていた
「アオイどうしたの?」
不意に足を止めたアオイにナナミが尋ねる
「お母さんから連絡きて」
「お母さん?」
「うん。今日の夜一旦帰ってくるからって」
「私邪魔じゃない?」
「大丈夫。お母さんには友達が泊まりに来てるって伝えておくから」
「アオイが大丈夫そうなら私はいいけど」
「私は全然。むしろ出来る事ならこのまま...」
「アオイ何か言った?」
「何でもない、ほら早く帰ろ」
そう言い再び自転車を押しながら家を目指した
家に着くと簡単に昼食を済ませリビングで横になると心地よい睡魔が襲ってくる。その折母の部屋からピアノ音色が聞こえてきた。曲はリョウタと初めて廃校に行った時に聞いた「亡き王女のためのパヴァーヌ」で儚く美しい旋律が空間一帯を魅了する。アオイはあの時と同じ様に吸い寄せられる様に音の方に向かうとナナミが弾いていた。そしてアオイ気づくと
「ごめんなさい。勝手に触っちゃって」
「謝ることないよ、寧ろピアノも使ってもらって喜んでいると思う」
「このピアノはアオイのピアノ?」
「どっちかと言うと母のものかな」
「お母さんの」
「そう。昔はよく弾いてくれたんだけどね」
「どうして?」
「私にもよく分からない」
「そうなんだ」
「それよりもっと色んな曲聞かせて」
「別に良いけど」
ナナミがそう言いピアノに視線を戻し、アオイも壁に凭れ掛かりながら旋律に耳を澄ますと、何でも夏の日の昼下がりがピアノの音と共にゆっくりと過ぎていった。
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