理不尽少年のコロシアム~力と鉄の棒でぶっ飛ばせ! 突き進めればなんとかなる!~
バゥママ
序章
森の奥に建てられたマンション。そこで一つの戦いが行われていた。その戦いは、素手による喧嘩ではない、武器による戦いではない。
”能力による戦い”だ
マンション五階の一角が爆発し、一人の男性が出てきた。裸足、焦げたズボン、濡れたワイシャツ、必死な形相、七三分けが乱れている。両手に赤色のビー玉を作り出して床に落とし、爆発させて逃げている。
「あ、あんなクソガキとまともに戦ってられるか!!」
男性が走りながら爆発させ一番端っこへ。階段を登り、下で爆破が起こっているのが分かる。そう、相手が下から来ると思っているからこその行動。だからだろうか。
目の前で突然、壁を壊して鉄の棒が飛んできた。それを腹部に突きで当てられ、登り階段と降り階段の間に背中から衝突する。
「見つけたよぉ~~~。おじさ~~ん」
鉄の棒が壊された壁の方へ戻っていき、土煙と瓦礫の中から一人の人物――少年が現れた。
オリジナルの野球服、短髪頭の童顔、そして鉄の棒。分かりやすい子供の特徴だ
「元ひきこもりのおじさ~~ん。おじさんの能力ってさぁ『魔法を付与したビー玉の生成』でしょ? どんな魔法が使えるのか追い詰めたけど~~」
男性が起き上がろうとすると、少年が地面を一定のリズムで叩きながら近づく。
「火でしょ~? 水でしょ~? 風にぃ~、土~? それ以外はないんだけど、いわゆる、四大元素ってやつ? 爆弾魔だったら、火と風だけで終わらせればいいのにぃ」
「クソガキが! 俺はこれでも前回大会ベスト8になった男だぞ!」
立ち上がり両手を挙げた。その両手の指の間にはビー玉が挟まれて――
「ってい!!」
少年が鉄の棒を横に振れば、男性の両手首が地面にポトリと落ちる。
「――――――っへ?」
両手から血が噴き出ている。それに男性は素っ頓狂な顔をしている。
「奇麗な断面だねぇ~~、おじさん!!」
少年が思いっきり鉄の棒を振って顎を砕く。同時に両手で鉄の棒を掴み、引き抜く。それだけで仕込み刃が出現し、男性の両太ももに刺し、
「どうしてさぁ、悪い事をしちゃおうと考えたのかなぁ~~。爆弾――ま~~~!!!!」
両足を連続で刺していき、男性が地面にお尻から落ちる。少年は腹部と胸部にぶっ刺し、真ん中の紐を足で押していく。男性が痛みに耐えながらの表情と、苦痛の表情が混じった、なんとも言えない顔をしている。少年は口許を笑みにして、
「さてさて、悪い事をしたのはなんでかなぁ? 引きこもりは、引きこもりらしく、もっと違う事に活力を見出して外に出てきなよ。じゃないと、人生無駄になるよ?」
「う……るせぇ……。こっちの気持ちを分からねぇクソガキが……大人を馬鹿にーーーーー!!!」
もう無くなっている両手首から大量の赤いビー玉を銃の様に少年に向かって撃つ――、
「っほい!」
いつの間にか引き抜いていた隠し刃を引き抜き、両肩から斬り落とす。それだけで肩から血が噴出し、男は声をあげた――――――ので、
「うるさい!」
隠し刃にて首を斬り落とし、頭を掴んで階段を登り始める。先程撃っていたビー玉が戻ってきて男性の首なし死体へ。少年が首を持ちながら上の階へ移動を完了すると、下から大爆発が起こる。
片方には鉄の棒でリズム良く壁を叩き、もう片方には男性の頭を持って。
▼
モニターがズラリと並んでいる大きな部屋がある。そこの部屋には監視員と呼べる恰好として最適な警備員の服装、サングラスといった装飾品を付けた者達が椅子に座り、事の顛末を見た。少年は斬殺した死体の頭を持って周りを見渡す。
「勝者、
「予想外だのなんだの、そんな話しじゃねぇよ。あのガキの動き、どれもこれも解析したくても映像にのってねぇから出来やしねぇ。こっちの死角を見事につきやがった」
「死角、ですか?」
「ドローンがない場所だよ。そこから映し出されているとされている場所を確認、特定して動いた。こっちで得られた情報は、いつの間にか違う階層で歩いている姿と、鳴り響かせてた鉄の棒の音だけ。
「
所長と呼ばれた男性は、同じように警備員の服装をしているが、肩には腕章が付けられており、所長と巻かれている。上着にもいくつかの勲章のような装飾品が付けられており、地位が高い事を差している。所長は一段高い位置の椅子に座っており、全体が見える位置で全ての映像を確認。
左側では先程の戦いの解析が、真ん中では気分が悪くなったのか女性職員がダウン、右側は質問を飛ばしてきた若い社員と年配の社員がこちらを見ている。背もたれに身体を預けて一息。
「彼女は、この戦いでベストな性格の持ち主を連れてきたようだ。ただ少し、おいたが過ぎる様だがな」
「おいたが、過ぎる?」
若い職員が首をやや傾げると、一人の職員が、あ! と声を上げた。
「どうした?」
「ドローンが一つ、先程亡くなられた
「……おいたが過ぎる、では済まないな、これは」
所長の発言の後に、左側の職員達が解析を一度やめて映像を片っ端から見ているが、所々で映像が砂嵐になっている。それを見た所長は身体を前に出し、机に両肘を置き両手を合わせて、
「全てのドローンを今すぐ回収しろ。現場のスタッフは勝利した事を伝えて、丁重にお帰り頂いてもらおうか。言葉には、次の戦いに備えておくように、と」
冷静に言葉を発すれば、全てのドローンがその場から離れる映像が流れるが、その数秒後に全てが砂嵐になり、ドローン全てが破壊された事を意味する状況を、今の現場に与えた。
「……えっと、所長。あのドローンの価格って――」
「聞くなって」
紀美代君は、本当にベストな性格の持ち主を見つけて連れてきたようだな。
▼
「お帰り、大我君」
「ただいまぁ、紀美代さん。最後にちょっと、物当てをしてきたよ。折角の殺しなのに音がうるさくてうるさくて。嫌になっちゃうね」
紀美代と呼ばれた女性は、スーツ姿の若い女性。車の中に入って来た大我を見て、シートベルトをちゃんと付けたのを確認し前へと走り出す。
「どうだった? 最初の戦いとしては」
「そうだねぇ~……、まぁまぁだったよ。というより、まぁまぁ楽しくなかったかな。力を貰ったとはいえ、こんなんじゃねぇ~。楽しめないよ」
「そう。……出来そうかしら? 私の期待には」
「答えられるんじゃない? 僕には最後まで分からないけど、紀美代さんの願いは叶えるよ。それが、白濱家、なんだからね?」
一台の車が森林に囲まれた道路を走っていく。それは場所が都会ではないと一回で分かるほどの、一台も車が通ってこないような場所。そんな場所に少年を連れてきた。
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