現実悪夢
チョコしぐれ
◇
俺はよく悪夢を見る。
不気味な人に追いかけられたり、ビルから落ちたり、ナイフで刺されたり。
そんな夢ばかりを見てきたせいか、いつしか夢の中でも痛覚を感じるようになった。
ナイフで刺されたら、起きても少し腹が痛い。
ビルから落ちたら、体中痛い。
そのせいで俺はもう寝るのが億劫になってしまった。
それでも、寝ない生活など続くはずもなく、いつの間にか寝てしまうことがよくあった。
ある日、久々に悪夢ではない夢を見た。
それは現実そっくりで、町の外装や、内装までしっかりと作られていた。
が、空を飛ぶことができる世界だった。
でもまぁ、感覚はあるので、十分その感覚を楽しんだ。
満足して夢から起きる。
お茶を飲もうと一階に降りると、そこには黒ずくめの男がいた。
ああ、なんだよ、また悪夢かよ、そう思い、もうどうでも良くなってその男に近づいていった。
案の定、胸を刺され体中に激痛が走る。
あれ?いつもより血の描写がリアルだ。
倒れた後、流れていく血を眺めながらそう思っていくと、だんだん視界がフィードアウトしていった。
ああ、ようやく起きられる。
しばらくして、夢から覚めるとまたのどが渇いた気がした。
1階へお茶を飲みに行くと、またそこに黒ずくめの男がいた。
まだ夢なのか。そう思いまた刺されに行く。
正直、感覚があるから、こんなことしたくない。
だが最も早く起きられる方法がこれしかないのだ。
案の定、胸に激痛が走り、倒れ込む。
視界がフィードアウトする。
ここまで説明した通り、俺はこのクソみたいな悪夢を無限ループする羽目になった。
毎回毎回激痛を受け、もう嫌になりそうだ。
そして、この夢を何十周もしたとき、異変が起こった。
........あれ?おかしい。今度は起きられないぞ。
血が衣服に染み込んでいく。黒ずくめの男の口元がニヤリと笑っている。
おかしい。おかしいおかしいおかしい。
今までの夢ならそこまで細かく描写できないはずだ。
外から悲鳴が聞こえる。
胸の激痛が一向にやまない。
息が苦しい。
夢から起きない。
そこで俺はようやく勘付いた。
ああ、これ、現実なんだな。
気がつくと、そこには見慣れた天井があった。
ああ、あれもまた、夢なのか。
ホッとした俺はベッドから腰を上げる。
すると目の前に、あの黒ずくめの男が立っていた。
...口元が、にやりと笑っている。
ははは、もう、どうでもいいや
現実悪夢 チョコしぐれ @sigure_01
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます