現実悪夢

チョコしぐれ

俺はよく悪夢を見る。


不気味な人に追いかけられたり、ビルから落ちたり、ナイフで刺されたり。


そんな夢ばかりを見てきたせいか、いつしか夢の中でも痛覚を感じるようになった。


ナイフで刺されたら、起きても少し腹が痛い。


ビルから落ちたら、体中痛い。


そのせいで俺はもう寝るのが億劫になってしまった。


それでも、寝ない生活など続くはずもなく、いつの間にか寝てしまうことがよくあった。


ある日、久々に悪夢ではない夢を見た。


それは現実そっくりで、町の外装や、内装までしっかりと作られていた。


が、空を飛ぶことができる世界だった。


でもまぁ、感覚はあるので、十分その感覚を楽しんだ。


満足して夢から起きる。


お茶を飲もうと一階に降りると、そこには黒ずくめの男がいた。


ああ、なんだよ、また悪夢かよ、そう思い、もうどうでも良くなってその男に近づいていった。


案の定、胸を刺され体中に激痛が走る。


あれ?いつもより血の描写がリアルだ。


倒れた後、流れていく血を眺めながらそう思っていくと、だんだん視界がフィードアウトしていった。


ああ、ようやく起きられる。


しばらくして、夢から覚めるとまたのどが渇いた気がした。


1階へお茶を飲みに行くと、またそこに黒ずくめの男がいた。


まだ夢なのか。そう思いまた刺されに行く。


正直、感覚があるから、こんなことしたくない。


だが最も早く起きられる方法がこれしかないのだ。


案の定、胸に激痛が走り、倒れ込む。


視界がフィードアウトする。


ここまで説明した通り、俺はこのクソみたいな悪夢を無限ループする羽目になった。


毎回毎回激痛を受け、もう嫌になりそうだ。







そして、この夢を何十周もしたとき、異変が起こった。



........あれ?おかしい。今度は起きられないぞ。

血が衣服に染み込んでいく。黒ずくめの男の口元がニヤリと笑っている。


おかしい。おかしいおかしいおかしい。


今までの夢ならそこまで細かく描写できないはずだ。


外から悲鳴が聞こえる。


胸の激痛が一向にやまない。


息が苦しい。


夢から起きない。


そこで俺はようやく勘付いた。


ああ、これ、現実なんだな。





















気がつくと、そこには見慣れた天井があった。


ああ、あれもまた、夢なのか。


ホッとした俺はベッドから腰を上げる。




すると目の前に、あの黒ずくめの男が立っていた。

















...口元が、にやりと笑っている。










ははは、もう、どうでもいいや






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現実悪夢 チョコしぐれ @sigure_01

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