詰んでいますね
「むむ……」
ピエンが眉間にしわを寄せる。
「い、いや、そんな顔をされてもな……」
魔王が戸惑う。
「……魔王さま」
ピエンが魔王をじっと見つめる。
「な、なんだ?」
「……ご健闘をお祈り申し上げます……」
ピエンがその場からそそくさと離れる。
「お、おい! ま、待たんか!」
「来ますよ!」
「むっ!?」
「魔王め! 食らえ!」
「があっ!?」
勇者の片手剣による攻撃を受け止めきれず、後退する魔王。
「……はあっ!」
「ぎあっ!?」
ツインテールの女剣士の斬撃を魔王は腹部に食らう。
「『雷撃』!」
「ぐあっ!?」
眼鏡の女性僧侶による雷魔法を魔王は右肩に食らう。
「……!」
「げあっ!?」
弓を持った女エルフの放った矢を魔王は左肩に食らう。
「はっ!」
「ごあっ!?」
槍を持った女エルフの突きを魔王は右脇腹に食らう。
「おりゃあ!」
「やあっ!?」
斧を持った女エルフの攻撃を魔王は左脇腹に食らう。
「どりゃあ!」
「ゆあっ!?」
ハンマーを持ったドワーフの打撃を膝に食らった魔王は膝をつく。
「……ふん!」
「よあっ!?」
フェアリーのパンチを顎に食らった魔王は仰向けに倒れる。
「よし、追い打ちだ!」
「ええい!」
「うおっ!?」
勇者パーティーが倒れた魔王に一斉に群がろうとしたが、魔王は衝撃波を発生させ、勇者パーティーを後退させる。魔王は体勢を立て直す。
「お、おのれ、調子に乗りおって……反撃といくぞ……!」
「……はっ!?」
魔王がどこからか大剣を取り出して、大きくふりかぶる。
「魔剣の切れ味をとくと味わえ!」
「なんの!」
「なにっ!?」
魔王の振り下ろした大剣は戦士が盾で受け止めてみせた。
「むうん!」
戦士が魔王の大剣を押し返してみせる。
「くっ!? そ、それならば……」
魔王が左手を掲げ、大きな黒い球を発生させる。
「……むっ!?」
「我が暗黒魔法を食らえ! はああっ!」
魔王が黒い球を勇者パーティーに向かって投げつける。
「そうはさせん!」
「な、なんだと!?」
老賢者が杖を掲げると、紫色の半球型の壁が発生して、魔王の放った魔法を防いでみせる。
「よし、いいぞ、この調子だ!」
勇者が声を上げる。
「む、むう……」
「魔王さま……」
ピエンが声をかける。
「あっ! き、貴様……! 逃げおったな……」
「それはこの際どうでもよろしい」
「ど、どうでもよろしくはない!」
「物理攻撃も防がれ、魔法攻撃もはね返されてしまいましたね……」
「あ、ああ……」
「そもそもが10対1という多勢に無勢……この状況は魔王さま……もしかしてなのですが……」
「……なんだ?」
「私の杞憂であれば良いのですが……」
「いいから早く申せ」
「詰んでいますね」
「そんなこと言われんでも分かっておる!」
「お分かりでしたか」
「ああ! そ、そのようなくだらんことを言うために戻ってきたのか!?」
「いいえ、まさか。提言をさせてもらおうかと思いまして……」
「提言?」
「魔王さま……スキルを用いるのです」
ピエンが眼鏡をクイっと上げる。
「ス、スキルだと!?」
「はい」
「そ、それはひょっとしてアレか?」
「ええ、勇者パーティーが用いているアレです」
ピエンが頷く。
「む、むう……?」
「勇者たちはスキルで以って、己の能力や技量を底上げしております。本来の実力以上のものを発揮出来るようになっています」
「な、なんとなくは知っておったが……不公平だな!」
「ですから、魔王さまにもスキルを用いていただくのです。これで条件は公平になります」
「し、しかし、スキルと言われてもな……」
「こちらをご覧ください……」
ピエンが半透明の表を空中に表示させる。魔王は目を丸くする。
「な、なんだそれは?」
「スキル一覧表です。ここから、お好きなスキルをお選びいただきます」
「! え、選べるのか!?」
「ええ、今なら格安でご提供することが出来ます……」
「か、格安!? 金を取るというのか!?」
ピエンの言葉に魔王は啞然とする。
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