第3話 霊峰ラマニル山へ
こうして三人は霊峰ラマニル山へ登ることになった。
三人は馬車で麓まで送ってもらった。
「三人とも、気をつけてな!危険を感じたらすぐに戻るんだぞ!」
「分かったわ、お父さん」
「はいはい、行ってきまーす」
「任せろ、村長!」
三人は食料を背負い、山へ一歩踏み入れた。
★登り始めて一時間後
「つ、疲れた〜!頂上まだぁ〜?」
ハリールはすでに虫の息。
「お前な、まだ一時間だぞ?」
マーハーが呆れ声。
「そうよ。そんなに早く着いたら観光名所よ」
ファティンも容赦なく刺す。
「いやでもさ、この道見てみろよ。永遠に続いてんぞ?なんかこう…“初心者お断り”って書いてある感じするんだけど?」
「書いてないわよ」
ハリールの弱音は、徐々に3人のイラ立ちを刺激していく。
★三人のギスギスが始まる
また数十分歩くと――
「なぁマーハー……俺、帰ってもいい?」
「ダメだ」
「ファティン……おんぶしてくれ」
「殺すわよ」
「なんでだよ!?仲間だろ!?」
「仲間=便利な移動手段じゃないのよ!!」
(第一、体重重そうだし…)
ファティンの心の声は辛辣である。
しかしハリールは気付かない。
★さらに険悪に
その後もハリールは愚痴を連射。
「腹減ったー」
「さっき食べたでしょ」
「喉乾いたー」
「水あるわよ」
「足痛いー」
「それは知らない」
ファティンの怒りゲージ:70% → 85% → 120%
※怒りが閾値を突破した。
ファティン
「いい加減にしなさいよハリール!あんたが一番体力あるんじゃなかったの!? “俺に任せろ!”って村で叫んでたの誰!?」
「そ、それは……その……勢いというか……若気の至りというか……」
「若気って何よ!?まだ昼よ!?若気するほど若くないでしょ!!」
マーハーは慌てて止めに入る。
「まあまあファティン……落ち着けって」
「マーハーは黙ってて!ハリールを甘やかすと調子に乗るのよ!」
「え!?俺そんな扱い!?」
★険悪からの追い討ち
さらに登っていくと、遠くに“頂上らしきシルエット”が見えた。
「おお!見えたぞ!!あれあれ!あれが山頂だろ!!」
急に元気になるハリール。
「本当だ……!」
マーハーも嬉しそうに言う。
しかし。
実際にはまったく距離が縮まらない。
登山あるある、見えているのに全然近づかない罠である。
三人
「…………」
ハリール
「……ちょっとさ、あの山、逃げてね?なんか遠ざかってね?」
ファティン
「山が逃げるわけないでしょ!!!!」
怒号がこだまする。
「もう無理……」
ハリールが地面に座り込む。
「おいハリール、座るなって。動けなくなるぞ」
マーハーが手を引っ張る。
「ちょっと待ってくれ……
リュックが……なんか……軽くなってる……!」
ファティンは振り返って眉をひそめる。
「軽くなってる? どういうことよ?」
ハリールは焦りながらリュックを開けた。
「……あっ……」
「何よその『察した』みたいな声は」
「……食料袋……落としてきた……」
ファティンの顔が一瞬で曇った。
「はあああああ!?
山の中で食料落とすなんて、何してんのよ!!」
「し、しょうがねぇだろ!登りながらパン食べてたら袋がスルッて……!」
「まず登山中にパン食べるなぁぁぁぁぁ!!」
険悪度マックス。
しかし――
そんな言い合いをしながらも、
なんだかんだで三人は歩き続け、夕暮れ近くにようやく石造りの神殿へと到着した。
ハリール
「……ついた……俺、今日頑張ったよね……?」
ファティン
「ギリギリ“足手まとい未満”だったわね」
マーハー
「成長……したのか?いや、してないのか……?」
そんな微妙な空気のまま、三人は神殿へと足を踏み入れるのであった。
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