第3話 強硬手段

私はパニックになった。これは異常事態だった。

「えええ⁈ 流石に、それはおかしいでしょう!」

アニメで魔法少女になるのは、いつだってポジティブで明るい女の子だ。私のようなネガティブの底にいる人間ではない。


しかし、その物体は胸を張ってこう言った。

「何もおかしいことなど、ありません。私は楓ちゃんを心配して、再度この世に舞い降りた猫型アンドロイドーーミルク2なのですから!」

「意味が分からないよ〜!」

気味が悪くてクッションを投げつけるも、ひらりとかわされる。

猫だけあって、敏捷なようだ。猫なのか分からないけど。


「どういうこと⁈ どうして猫型アンドロイドが、私に用があるのよ!」

確かに最近はアンドロイドを作る技術が発達していて、死んだペットに似せたアンドロイドを注文する人がいるらしい、というのはニュースで見たことがある。

でも、それが人の言葉を話すだなんて、聞いたことがない。

「ご主人様は、大変楓ちゃんのことを心配しておいでです。

それはそれとして、今世界には危機が迫っています」

「並べるもののスケール、違いすぎない⁈」

だんだん、思考が落ち着いてくる。この猫型アンドロイドは、ご主人様という存在に依頼されて、私のところに来たらしい。

そして、ご主人様とは私についてよく知る人だ。


「分かった! パパとママに依頼されたんでしょ、私を学校に行かせるように!」

こんなことをするのは、両親以外に考えつかなかった。

しかし、その考えは否定される。

「いいえ、ご両親ではありません」

「じゃあ、誰だっていうのよ」

「それは言えません。これは、世界に関わる重大機密ですから」

「さっきから何なのよ、その世界って! 私に解決できる世界の問題なんて、ないよ!」

世界を救ってほしいのであれば、そのご主人様とやらは依頼する相手を間違えている。

私は、自分の部屋から出るのですら怖いのだ。外で戦ったりするなんて、とんでもない。

「いいえ、これは楓ちゃんでないと解決できないのです」

ミルク2は高い声で続ける。


「なぜならば、あなたはーー類稀なるネガティブ・パワーの持ち主だから!」

「ネガティブ・パワー?」

話がどんどんおかしな方向へ行く。

解説の人、どうか画面の下に出てきてください。

「そうです。私は、未来からやって来ました。未来では、人の持つ様々な感情を取り出して、エネルギーに変換する技術が発展しています。

その中でも、人が持つ負の感情というのは、とても強いものです。

そして、今この世で最も負の感情が強いのはーー楓ちゃん、あなたです。

おめでとうございます!」

「何もおめでたくないんだけど……」

人を選ぶのであれば、もうちょっとマシな理由はなかったのだろうか。


「で? その、ネガティブ・パワーが何なの?」

「理解が早くて、助かります!」

「理解はしてないよ、何一つ」

「ご主人様は、ネガティブ・パワーを核運動エネルギーに変換して、敵を攻撃する装備を開発しましたーーそれを身につけた者が、魔法少女なのです!」

「魔法少女なのに、物理っぽい力なんだ」

「ですから!僕と一緒に魔法少女になって、敵と戦い、世界を救ってください!」


なんとなく、流れが分かってきた。

しかし、返答は決まっている。

「嫌ですっっ!!」

「ええ? どうしてえ〜⁈」

「意外そうに言われても、嫌なものは嫌!」

「明日、世界が滅びるかもしれないんですよ⁈」

「敵を倒したところで、明日世界が終わるかもしれないのは変わらない! つまり何をしても無駄! 息をしても独り!」

「これが、最強のネガティブ・パワー……」


ミルク2は、可愛らしく首を傾げた。

「では、強硬手段ですね」

ミルク2が前足を合わせると、そこから光が溢れた。

そして、高い声でこう言った。

「テレポーテーション!」

私とミルク2の周りが光に包まれたかと思うとーー

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