転生したらビキニアーマーだった俺
日夜 棲家
第1話 真っ暗な場所で振り返る俺
……ん?
ここはどこだ?
暗い。
何も見えない……。
俺はどうなったんだ?
確か、プールの監視員の仕事をしていて……。
溺れた女の子がいたから助けようとして……。
それで……。
……ああ、そうか。
助けた女の子に泣かれて。
母親らしき派手な女性に睨まれて。
父親らしきチャラい男にプールに沈められたんだっけ……。
「うちの子に触るな!」って。
……はぁ。
生きにくい世の中になったものだ。
人命第一で動いたつもりが、セクハラ扱いされる羽目になるとは……。
「女性スタッフを呼びに行け」って?
いや、間に合わなかったらどうするんだよ?
うちの職場、女性スタッフが少ないんだよ……。
あと、キモがられてるみたいで俺と一緒のシフトに入ってくれないし……。
「女の子の身体に触りたかっただけだろ」って?
いやいや、溺れてたの三歳とかそのくらいの子だったし。
俺、ロリコンじゃないからね?
ボン、キュッ、ボンのセクシーな子がタイプだし。
つうか、これ、溺れてた女の子の両親に言われたことなんだけど。
……そこまで言うなら子どもから目を離すなや。
お前ら、女の子が一人溺れてる時、どこで何してたんだよ?
助けた子が泣き出してから五分くらいしてようやくやってきたくせに。
文句ばっかり言いやがって。
で、挙句の果てに、俺の首を掴んでプールの中に突っ込んだんだよ。
……信じらんないでしょ?
俺は監視員やってるくらいだからそれなりに鍛えてはいたんだけど……。
父親、取り巻きがいて。
五人に手、足、首を押さえつけられたんだよね。
もちろん、黙ってやられるつもりなんて毛頭なかったさ。
けど、数の暴力には勝てなかったよ……。
俺は顔を水の中に沈められた。
いや、そんなことされたら死ぬでしょ?
息、吸えなくなるんだから。
殺人は重罪ぞ?
いくらなんでもそんなことしないよな? ――って思ってたんだけど……。
残念ながら、男たちの頭は残念だった。
人を殺したらどうなるか、を考えられなかったんだ。
で、俺にとって不運だったのは、そいつらがいかにも「ワル」って感じの見た目だったこと。
……他のお客さんや同僚は委縮しちゃったんだろうね。
誰も助けてくれなかった。
それで意識が途切れて、気がついたらこの真っ暗な空間……。
……あっ、なんとなく察せられたわ。
俺、死んじゃったんだな……。
だって身体、動かせないし。
声も出せないし……。
考えることしかできない。
来世に行く前に心を整理する時間とかなんかなのかな? たぶん。
なら、ありがたく使わせてもらおうか。
確か、記憶って来世に引き継げないはずだし。
……そうか。
それなりに充実した31年間だった――なわけあるかぁあああ!
最期、あれだぞ⁉
想像力が欠如した奴らに殺されたんだぞ⁉
娘助けたっていうのに!
絶対に許さん!
仕返ししたい!
神様、俺を幽霊にしてくれませんかね⁉
この際、悪霊になってもいいんであいつらを懲らしめさせて!
っていうか、そもそも、なんで誰も助けてくれなかったの⁉
俺、それなりに人のためになる行動取ってたよね⁉
人助けも積極的にやってたし!
なのに、なんで俺、見捨てられたの⁉
怖い思いまでして助けようとは思えない、って判断されたの⁉
……やっぱあれか⁉
俺の顔がちょっとアレだったからか⁉
「近寄りがたい容姿をしてる」って何度も言われたことあるけど!
もしかしてイケメンだったら助けられてたりした⁉
チクショー!
……神様!
来世は絶対イケメンにしてください!
そんでもって、人生をベリーイージーモードに!
もうこんなハードモードの人生なんて御免なんです!
障害があっても全部撥ね退けられるチートスペックをください!
それと、今回の人生は童貞で終わっちゃったからな……。
彼女ができたこともなかった。
女性が寄ってきてくれることもなかったし……。
今度の人生ではそんなことがないようにしてほしい……!
誰かに必要とされたい!
めっちゃ美しくてハイスペックでちやほやされたい!
……って。
最期がこんなのってむなしすぎるよな……。
この時間がどれだけ続くかわからないし、最後くらいは自分を労ってもいいんじゃないだろうか?
……うん、そうだよな。
つらいことも多かった人生だけど、結局は自分自身だからな。
なんだかんだで愛着がないこともなかったわけで。
もう衣笠才じゃなくなるっていうのはちょっと寂しい。
衣笠才だった記憶がなくなるのはなんだか形容しがたいものがある。
だから、その、なんだ……。
まあ、退屈はしない人生だったよ。
ありがとな――と言っておく。
……こっぱずかしいな、これ。
兎に角!
これで別れは済んだ!
もういつでもいいぜ、神様!
……と。
かっこつけたはいいものの――
いつまで経っても転生しないんだけど⁉
いや、そういう流れだったんじゃないの⁉
結構待ったよ⁉
時間見れないから体感でしかないけど、一時間くらい待った!
それなのに意識が薄れていくみたいな感覚が一向にやってこないんですが⁉
どうなってんの、これ⁉
相変わらず辺りは真っ暗なまま!
身体は動かせない!
声も出せない!
神様のお言葉も聞こえてこない!
もしかして俺、神様に放置されてる⁉
ちょっ、おーい⁉
誰か俺の置かれてる状況を説明してくれぇ!
……そう心の中で叫び続けていたら――
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《ステータスウィンドウ》
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『ビキニアーマー』
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……なんか出た。
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