お片付け大作戦です!!

「昔みたいに……僕とゲームしようよ♡」

「おう、いいぞ、ゲーセンでもいくか?」

「ゲーセンもいいけど……」

咲はバックの中をゴソゴソと漁り、バックからガバッと勢いよく、コントローラとゲームソフトを『これ!』とドヤ顔で上げてみせた。

「お前……今日ゲームやる気満々で、持ってきただろ」

「正解!さすが、しんちゃん!なんでもわかってるね〜」

なぜか胸を張り、えっへん、と誇らしげに様子だ。

「いや、もし抜き打ち検査でもされたらどうするんだよ……」

「その時は、この僕の色気でね」

「ね。じゃないぞ」

腰に手を当てて、どこかセクシーポーズめいた仕草を決める咲。

『どう? 可愛いでしょ?』

そう言わんばかりに腰をくいっと揺らしてくるけれど、俺が軽くスルーすると、程なくして、腰に添えていた手をそっとおろした。

「てか、それ据え置き機のコントローラとソフトじゃん。遊べなくない?」

「あれ?しんちゃん家、据え置き持ってなかったけ?」

「いや持っているけど……まさか」

咲がにこりと笑う。嫌な予感しかしない。

「よし、決まりだね!」

「いや、なにが!?」

「よし!しんちゃんのお家に出発〜!!」

咲のたわわが少し当たりそうになりながらも僕の腕を引っ張る。


 「ここがしんちゃんの家か……」

咲はマンションを見上げながら、ぽつりと呟いた。

俺の家は、ごく普通の、少しだけ大きめのマンションの一室だ。

鍵穴にキーを差し込みながら、俺は後ろの咲に念を押す。

「……本当に入るのか?」

「もちのろん!」

即答。迷いゼロ。

「ここから先は……ほんとにやばいぞ、全く片付けできてないから」

「え〜大丈夫だよ〜おじゃましま〜す」

ドアが開くや否や、咲の明るい声が部屋に響き渡った。

「あ!まだ片付けが……」

慌てて言い訳をしようとした俺の横で、咲がぴたりと足を止める。

「えっと……これはすごいね」

視線の先にあるのは、床に転がった食べかけのカップラーメン、脱ぎっぱなしのTシャツ、洗ってない皿の山……。見るに耐えない光景が広がっている。

「言っただろう、だいぶ散らかってるって……」

流石にドン引きしてるよなと思いながら、横目で咲を見ると、咲は小さく息を吸い込み、何かを決意したように洗濯籠を手に取った。散らかりまくった衣類を一枚ずつ、丁寧に入れ始める。なにか手伝おうと衣類に手を伸ばすと咲はぴしっと人差し指を向けて言う。

「しんちゃんは座っていて!」

言われるままソファに座ると、咲の手際のよさに目を見張る。気づけば脱ぎっぱなしのTシャツは片付き、床が見えるほどきれいになっていた。そして洗っていない皿の山も彼女の手によって次々と洗われ、食洗機に収まっていく。まるで舞台裏で仕事をこなすベテランスタッフのような動きだ。

「咲ってそんなに女子力高かったけ?」

「ん?あ〜居候させてもらっている青山おばさんの家の家事全般は僕がやってるからね」

「え、お前、青山おばさん家に住んでるんだ?」

「うん。高校を機にね」

青山おばさんは、咲の母方の妹で、客室乗務員をしており、よくいろいろな国のお菓子やお土産をくれる。

「あれ、青山おばさん家ってだいぶ遠くなかったか?」

「うん、片道2時間ぐらいかかる」

往復だけで4時間もかかるなんて大変だなと思っている間も咲は淡々と掃除を続ける。布巾で皿を拭き、軽く背伸びをしながら棚へしまう。

「ふぅ、これで一通り終わりかな。さてゲームでも……って、やば、もうこんな時間か」

気づけば、あの見るも耐えなかった部屋が驚くほどきれいになっていた。床の上にあったカオスも、人がちゃんと暮らしている部屋らしい景色に変わっている。

「ほんと、ありがとう……」

「いいよ。僕、こういうの好きだし」

咲がタオルで手を拭きながら微笑む。

「じゃあ、夜ご飯にしますか」

「そうだな。出前でも取る? ピザか寿司か……ほら、このチラシ」

そう言って咲にチラシを差し出すと、咲はちらりとそれを見たあと

「出前もいいけど……」

と呟き、口元をそっと持ち上げてにたりと笑った。

「しんちゃんのために、僕が手作りで作ってあげるよ♡」



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ボクっ娘の幼馴染と同棲をはじめました〜 枝豆コーヒーサラダ @0703hayato

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