幕間(魔法少女)

「やはり逃げられたか...」


「申し訳ありません。」


とある一室、本部長と1等魔法少女である蓮華 結が対面していた。


「いや、我々が対応を間違った。人智の外は警察にも協力を仰ぎにくいからな。」


「そんなことは...私が奢っていた部分もあります。彼の策略にまんまと乗せられてしまいました。」


「いや、もういい。次の対応を考える。それよりもだ。」


彼は真剣な眼差しで言葉続ける。


「ヤツはお前を見るや否や、あの街でも指折りの古株である龍山喜神社へ走っていった。神同士のいざこざ、あっち側領分を知りえている。」


「推定やつは妖術師だろうな。」


「妖術師...ですか?」


彼女はその言葉をフィクション作品でしか聞かない単語に拍子が抜けた。魔法少女も大概にフィクションであるのだが...


「異世界の異能力者を魔法少女と呼び、日本古来の化け物共を妖術師という。神事、呪、モノノ怪に至るまで何でもござれの変人集団だ。」


苦虫を噛み潰したような表情をする本部長は、若干取り乱したことを自覚したようだ。

直ぐに言葉を直す。


「いや、すまん気にしないでくれ。怪獣の対応は2級相当以下の彼女らに任せるが、引き続き情報が入り次第”田中 太郎”の対応は結に頼む。」


「分かりました。」





「んで、あの彼が妖術師だって?」


3時のティータイム。

本部にあるカフェにて、彼と最初に接触した2等魔法少女である及川 椿は、納得のいかないように言葉をこぼす。


「本部長曰くそうらしい。ただ妖術とかそういう情報はデータベースに無かったし、何より職員の人も聞いたことないって。正直言ってよく分かってない。」


「彼普通にただの人っぽかったけどなぁ。問題あるのはあの元魔法少女の方だと私は思うんだけど。」


カフェオレを飲みながら椿は続ける。


「彼を連れていこうとした時に現れたあの女、私に嬉々として殴り込んできたんだよ?あの発言もにわかには信じがたいって。」


「そうはいっても本部長が彼女を必ず取り返すと意気込んでるからな。最近ずっとこの件ばっかりで、傍から見ても凄い執心だ。」


本部長はさておいて、


「奴と対面したが頭の回転は相当なものだろう。私ともあろう者がしてやられた。」


「まぁ、確かに私の時もすごい冷静ではあったけどさ。」


「敵である可能性が濃い以上、警戒は怠らないし尋問にはかけるべきだ。奴が逃げる限り私たちも対応を変える訳にはいかない。」


「真面目だねぇ結ちゃん。」


笑いながら椿は空にしたカフェオレのグラスを持って揺らす。氷の音がカランカランと鳴った。


「まぁ、怪獣に関しちゃ任しといてよ。実力は今ん所No'2なんだからさ。」


彼女のいつも通りのノリと発言に安心する。

暫くは平和を任せてもいいと思えるくらい、椿とは背中を合わせて戦ってきたのだから。

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