私が世界を支配するためのワンチャン転生者になった話

トアニ

第1話

ここはどこ……?

見渡すとそこはどこかの国の王宮のようだった。

『よくぞ来てくれた!』との声。

この国の王様らしき人物からいきなり歓迎された。

どうやら私はこの国に「救世主」として呼ばれたらしい。


この世界では、20年に1度行われる神からの選別を受けられた国が、世界の盟主となれるというルールがあり、その選別とは「自分の国における最強の人間を1人選び、その最強の人間どうしが戦い、最後まで残れた人物の国が神からの選別を受けられる」というもの。

この選別は【神前試合】と呼ばれている。


この【神前試合】に勝つために世界中の国が最強の人間の育成に奔走しているのだが、この私が呼ばれた国では、代々この神からの選別に、異世界からの召喚者、(この国では「救世主」と呼ばれているんだか。)その「救世主」に戦ってもらうというのが伝統らしい。

その「救世主」として呼ばれたのが私だったということだったのだ。


いや私ただの一般人だぞ?と自分にこの国を救えるほどの力があるか怖がっていたら、

『安心して欲しい!』と叫ぶ王様みたいな人の声。

その人によれば、「救世主」は必ずその出身元の世界における「すごい奴」を1人呼べるらしい。

呼んでみなければ誰を呼べるか分からないので早く呼んでみてくれと促される。

来い!と叫ぶと自分の目の前に魔法陣が現れる。

魔法陣から出てきたのは、少し歳を取っており、口の上にたっぷりと髭を蓄え不敵な笑みを浮かべる男だった。

普通こういう時出てくるのは戦国武将とかじゃないの!?と思っていたところに自己紹介の声。


『やあ、私はジョン・メイナード・ケインズ。あっちの世界では、しがない学者をやっていた。』

ケインズ?なんか政経の教科書で聞いたことあるような。

なんで「すごい奴」として呼ばれたの?と、この男に聞いてみると

『自分が何をなしたかをわざわざ答えなければいけないような人間はすごい奴と言えるのかな?』

……なんかこいつ嫌な奴じゃないか?


すると王様らしき人物がこのケインズとかいう男に丁寧に挨拶していた。

ケインズもさらっと返しており、王様相手の礼儀も身につけているようだった。


王様らしき人物に、このケインズという男の凄さが分からないなら、見てみれば良いじゃないか?と言われた。

どう見るんだ?と思っていると

ステータスを見れるだろうと言われた。

するとケインズとかいう男が「自分のことを見られるのは恥ずかしいな。」とか言い出す。

いやもうほんとなんなんこいつは。

まあ良い、ステータスオープン!


【ステータス】

名前:ジョン・メイナード・ケインズ

職業:学者、投資家、イギリス代表団、ジャーナリスト、皮肉屋

能力:破壊力→G、耐久性→E、俊敏→C、影響力A、魔術→A、固有才能→A

《A←G》


この固有才能ってなに?と思っていたら

「すごい奴」それぞれが1人1個だけ持つ、世界を揺るがしかねない凄い能力や、もしくは世界を滅ぼしかねない武器などを指すものだと、ケインズとかいう男が教えてくれた。


多分Aが1番凄いんだろうから、このケインズという男の固有才能とやらもめちゃくちゃ凄いということか?

てか固有才能ってなんだ?

見てみるか。


固有才能:自らの著書でもある「雇用・利子およびお金の一般理論」。

経済学の常識をひっくり返したこの本は、人間の常識や認知、思考、行動に至るまで、ケインズの意のままに支配することが出来る。


なんだこれ。要は「人を操れます」ってことか?めちゃくちゃ凄いじゃん、この人って単なる学者じゃないのか?

何をしたかも見れるということで見てみた。



為したこと:主には経済学者として活躍。「有効需要の原理」「乗数効果」「流動性選好」など数々の功績を残した。その中でも最大の功績は「失業は政府が解決出来るもの」と、それまで頑強に根付いていた「戦争でもしない限り失業や不況は解決出来ない」という常識を覆したことである。

そうした数々の功績を産み出した自らの著書でもある「一般理論」が、世界で最も危険な本のランキングで上位に入選している。


は?長い文書くなや。あんま凄さが分からん。とりあえず世界を変えた人なのね。てか危険な本ランキングで上位入選!?この人「すごい奴」ってよりやばい奴なんじゃないの!?


『安心してくれたまえ。私は別にクーデターをしでかした訳でも、人々の心を操り独裁者になったことがある訳でもない。ただ単に私は経済学は人々を救えると示しただけなのだよ。』とやけにうざったらしくこのケインズという男は言う。


でもなんだか違和感。

経済学とやらは最初から人を救うための学問なんじゃなかった?なんでそれを示しただけでこんな偉そうに出来るんだ……?


色々考え込みそうになったところに王様らしき男の声。

『これでケインズ氏のことは理解出来ただろう?それではこの国のため、粉骨砕身、頑張ってくれたまえ。』


まあどうでも良いか、どうせ来ちゃったんだ。

このケインズとかいう男と一緒にこの国を救うことだけ考えよう。


『ちょっと待ってくれ。僕の紹介はしたが、君の紹介がまだだ。君は誰だ?それとも君もステータスオープンとかいうものをしてくれるのかな?』

ケインズとかいう男に言われた。


仕方ない。自己紹介しよう。

『私の名前は』


『菊池東子よ。』


『これからよろしくね。』


なんだかこの自己紹介、カッコつけすぎだよな。

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