ep42:華蓮視点⑪
遂に来ちゃった。
ソレイユ王国に。
私カレンは6歳になり、ソレイユ魔法学院に入学するため、エトワール王国を出た。
この世界の移動手段は、陸なら馬車、海なら船。
気球とか飛空艇はあるけれど、あまり一般的じゃなかった。
エトワールからソレイユへの旅は、定期航路のクルーズ船がオススメ。
現実世界の船よりも「揺れ」への対策が完璧で、船酔いなんて無い。
お父様は娘の快適な船旅のために、特等船室を予約してくれた。
「クルーズ船って一度乗ってみたかったの。こんなに快適とは思わなかったわ」
「ソレイユはリゾート地として各国に人気がありますからね。定期航路は基本的にこういう豪華客船なんですよ」
展望ラウンジでお茶を飲みながら、海を眺めるのも楽しい。
クレール先生が話し相手になってくれるし、本を読んだりしても酔わないから、私は退屈しなかった。
「そろそろソレイユに着きますよ」
先生に言われて、私は展望ラウンジを出た。
映画で見たのと同じ、海に囲まれた美しい島が見える。
目に映るのは、明るい青色の海、白い砂浜、緑の木々。
花の姿は見えないのに、海の上まで薔薇とは少し違う甘い花の香りが漂ってくる。
例えて言うなら、南国リゾートのスパの香りに似てるかもしれない。
「……いい香り……」
「ソレイユローズの香りですよ。この国の国花でもあります」
甲板に立って、楽園を思わせる香りにうっとりしていたら、クレール先生が教えてくれた。
ソレイユローズ、別名「勇者の薔薇」。
夏空のような爽やかな青色の花びらと、金色の燐光を放つ雄蕊をもつ珍しい薔薇で、ソレイユの領土のみに咲く。
ゲームでは、アストルを描いたスチルの背景になっていたのを覚えてる。
「港の近くにたくさん咲いているんですよ。ほら、あそこに」
「綺麗な青色……エトワールでは栽培できないのが残念だわ」
下船して港を歩いていたら、丁寧に整えられた生垣に青い薔薇がたくさん咲いているのが見えた。
現実世界にもエトワールにも存在しない青薔薇。
ソレイユでは、まるで沖縄のハイビスカスみたいに普通に咲いているのね。
「ようこそ、ミシオン様。どうぞこちらにお乗り下さいませ」
港の前の路上には、青薔薇の装飾が施された馬車が待っていた。
クレール先生にエスコートされながら乗り込んだ馬車は、ミシオン家のより座り心地が良い。
そりゃそうよね。王家が所有する馬車だもの。
お尻にフィットするいい感じのクッションに満足しながら窓の外を眺めていると、映画で見たのと同じお城が見えてきた。
(もうすぐ、転生者かもしれない人たちに会える……王妃様と王太子様の、中の人は誰?)
映画で見た光景が脳裏に浮かぶ。
アストルの誕生日を祝う家族の幸せが、突然降り注ぐ無数の火球に壊されるシーン。
人々はみんな黒焦げの死体となり、アストルだけが生き残った。
あれは、アニメだと分かっていても胸が痛む。
魔族ペリルは、何の前触れもなくソレイユを攻撃した。
高速で飛来する火球群は、小さな島国を一瞬で焦土に変えた。
攻撃が始まってからでは間に合わない。
あの大惨事を防いだということは、王妃様か王太子様のどちらか、或いは両方が、魔族の襲撃を知っていたということよね?
私は、心の中で願いを呟く。
……どうかこの国に、陽太くんの転生者がいますように……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます