ep07:美月視点⑦

 シナリオ通りには進まないと心に決めてから、私はアランと共に生きる準備を始めた。

 私のステータスには、ゲームでよく使った魔法も記載されている。

 でも、魔力が初期値なので、ほんの一部の初級魔法以外は、名称の横に「使用不可」の文字があった。


(魔力切れ寸前まで魔法を使い続けていれば、魔力量の上限が増える筈)


 私は初級魔法の「水球」を使い続けた。

 魔力切れ寸前になると眠くなるので、就寝前にコッソリと。

 魔法で出した水は飲料水として使えるので、調理場の水瓶を満たすのに役立てた。


「あれ? 水瓶がいっぱいになってる」

「誰か汲んできてくれたのかしら」


 孤児院の調理スタッフたちが不思議がっている。

 でも、まさか幼い子供が魔法を使っているとは思わなかったらしい。


 ゲームでは、幼少期のルナはまだ魔法を使えなかった。

 ルナはチュートリアルの終わり頃、生まれて初めて魔法を使う。

 使う魔法は、光属性の治癒魔法だ。


 チュートリアルシナリオでは、チンピラからルナを守って大怪我をしたアランを助けるため、ルナは無意識に治癒魔法を使う。

 それを街の人々や駆け付けた孤児院スタッフに見られたことで、光属性持ちの孤児がいるとの情報が公爵の耳に入り、養子として迎えられることになる。


 私は、そのシナリオを回避したい。

 だから、治癒魔法を使わずにアランを助ける計画を立てた。

 その計画のために、魔力量上限を増やしている。



 ◇◆◇◆◇



 あっという間に3年が過ぎて、アランと私は5歳になった。

 ゲームのチュートリアルで見た幼年期と同じ、いつも一緒に遊ぶ仲良しコンビだ。


「ルナ、誕生日おめでとう」

「アラン、誕生日おめでとう」


 孤児院では、同じ歳の子供たちはまとめて誕生日を祝われる。

 それは、私みたいに赤ん坊の頃に捨てられて、誕生日を知らない子への配慮でもある。

 私と同じ歳の子はアランだけなので、誕生日パーティの後に2人きりでプレゼント交換をする楽しみもあった。


「はいこれ。プレゼントだよ」


 アランは、シャンス草を干して編んだミサンガをくれた。

 シャンス草は運を少し上げる効果があり、あちこちの家の庭で栽培されている。

 孤児院の庭にも植えられていて、スタッフや子供たちが編んだ物をバザーで販売したり、誰かの誕生日に贈ったりしている。


「ありがとう。私からはこれね」


 私もアランに自作のミサンガを渡した。

 そのミサンガには、土属性の支援魔法を付与してある。


 土属性魔法・トゥッシェ・デュ・ボワ


 初級の魔法で、不運を避ける効果がある。

 戦闘では敵の攻撃を回避するという、ありがたい支援魔法だ。

 付与した者の魔力量に比例して、その効果は高くなる。

 毎日魔力切れ寸前まで魔法を使ってきた私は、5歳にして神官や魔導士並みの魔力量まで上がっていた。


 いずれ発生する筈の、チンピラたちのイベントに備えて。

 アランが怪我をしないように、私は回避効果をもつお守りをプレゼントした。

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