第17話 深まる疑惑
時間は少し戻り
忍が北の森で肉切り包丁、改め血刃包丁の【鑑定】をしている頃、オークの集落の後始末を終え、ギルドマスターは冒険者ギルドに帰還していた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ギルドマスターside
俺は今ギルド長室で状況を確認していた。
「状況の整理をするか。俺が留守の間のギルドに問題はなかったか?リュック」
彼は副ギルドマスターのリュック、主に事務仕事をしているが、俺がいない間は、ギルドの全件を任せている。
「ギルマスも多少は聞いたと伺ったので省きますが、例の彼女······シノブさんが持ち込んだ、オークと武具で解体職員や鑑定士職員がテンヤワンヤなこと以外、いたっていつも通りです」
アイツが現れてから、まだ2日だと言うのに、これで領主様が推察した、アイツのスパイ容疑は多少晴れるだろうな。
ここまで注目を集めて、スパイにとってはデメリットしかあるまいよ。
「で、そのシノブはどこにいる?この後、領主様からシノブを連れてこいと言われてるんだが?」
「シノブさんでしたら、もうギルドにはいませんよ。オークを出した後、武具の鑑定を見学して、自分が貰う武器だけ持って用事があると言って早々に出ていったみたいですから」
俺は額に手を置き、天井を見上げた。
「ギルマス!どうされました?」
「いや、なんでもない。言い訳にしかならんが、想定外なことばかり起きて、シノブに伝えなかった俺のミスだ」
「ギルマスも大変ですね」
リュックは笑っているが、俺にとっては冗談ではない。
「俺はこの後、シノブが持ってきたオークと武具を確認しに行く。領主様に今回のことを報告しなければならないからな。その間に、アンリにランドー商会に行ってシノブを連れてくるように伝えてくれ。アイツは今、あそこで世話になってるみたいだからな」
リュックは『わかりました』と承諾し、ギルド長室を出ていった。
シノブが来る前にアイツが持ってきた物を確認しないとな。
どんなにヤバイのか、楽しみではあるが心配になってきたな、だが大丈夫なはずだ!······大丈夫だよな?
うっ、胃が痛くなってきた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
シルside
シノブさんと別れた私は、残りの仕事を終わらすために、急ぎ足でランドー商会へ戻りました。
事務所に戻り、残っていた仕事も、後少しで終わるところで誰かが来られました。
コンコン
「どなたですか?」
『店長、度々すみません』
どうやら先ほど、シノブさんをお連れした子が来たみたいです。
「どうされました?」
『冒険者ギルドの方がシノブ様をお探しのようです。何か知っていれば伺いたいそうです』
シノブさんを?
「わかりました。話を伺いますので応接室へ案内してください。残りの仕事を終わらせますので、少し遅れる事を伝えて、お客様にはお茶菓子をお願いします」
『承知しました。失礼します』
シノブさんに、何かトラブルにでもあったのでしょうか?
残りを早く終わらせ、応接室へ向かいました。
コンコン
「失礼します」
ノックをして中に入ると、見知った方が居られました。
「これは、アンリさんお久しぶりです。遅くなってしまってすみませんでした」
「こちらこそ忙しい中、急に来てしまってすみません」
「シノブ様をお探しと伺いましたが?」
「ギルドマスターの指示でこちらにシノブさんは居るから連れてきてくれと頼まれたのですが、この分ではいなさそうですね」
アンリさんは残念そうに、耳としっぽが垂れてしまいました。
「シノブ様でしたら、1時間ほど前までは、一緒にいられましたね。最後に見たときには、北門のほうへ向かわれていたと思います。·········シノブ様はお金を持っておられないので、ひょっとしたら、外へ行ったのかもしれませんね」
アンリさんは、確定ではないがシノブさんの情報が出たことに嬉しいのか、しっぽを揺らしていました。
「ありがとうございます。すぐに門へ向かいたいと思います」
「お気をつけください」
アンリさんは部屋を出ていき、私もシノブさんに頼まれた服を、仕事でお世話になっている仕立工房へ発注しに向かいました。
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ギルドマスターside
シノブが置いていったオークと武具を確認するために、解体場となっている、訓練所に向かっている最中だ。
大事に、ならなければいいんだがな。
そんな心配をしている内に目的地に到着した。
解体の状況を聞こうと、アルベール親方のもとへ向かった。
「よう!親方、解体の方は順調か?」
「おや、誰かと思えば、ギルマスではないか、ギルマス自らこんなところに、視察にでも来たのかい?それとも暇なのか?」
失敬だな。
「暇ではない、これも仕事の内だ!」
親方は『ガハハ』と笑いだした。
「で、どうなんだ?」
「あ~····順調なのは間違いない。もう半分は終わったからな。後1組あたり1体、解体したら今日は上がる予定だ」
「ほう······腕を上げたな、いい解体効率でも見つけたのか?」
「いや······それがな」
なんだ?そんなに言いづらいことなのか?
親方はアゴに手を当て言い淀んでいた。
「嬢ちゃんの倒した方が異常だ」
「どういう事だ?」
「20体、全てのハイオークが寸分違わず眉間に人差し指ほどの穴が空いていて、30体が全身に穴だらけだ」
いったいどんな戦い方したんだ?
「それにな、ないんだよ」
ない?
「何がないんだ?」
「······どのオークからも、1滴たりとも血が出てこないんだ」
·········はっ?
この時、背筋が凍り付く感じがした。
俺はここで一旦話を終え、親方に労いの言葉を伝えて、武器の鑑定をしていた、鑑定士のニコラスの元へ向かった。
考えるのは後だ、いくら考えたって答えはでん、今はできることをしよう。
俺は自分に言い聞かせた。
一瞬、頭に浮かんだ疑念は考えすぎだと。
深刻そうな顔をしていたのか、ニコラスは話しかける前に先に『ギルマス?大丈夫ですか?』と心配して話しかけてきた。
はっ!
「ああ······すまない、なんでもないんだ」
「そうですか?具合が悪いようなら、今日は早退したほうがいいですよ」
「ありがとう、その時はそうする。で、どんな感じだ?シノブが持ってきた武器ってのは?」
ニコラスは『それがですね』と困惑していたが、案内してくれた。
「まずこちらからですね。大半がオークが使っていたこともありボロボロですが、素材としてならいいものなので、武器としてではなく素材にするほうが良いと思います」
頷き、次に行くように急かした。
「こちらが今回の目玉です」
ニコラスに渡され、見てみたが外見は、いたってシンプルでそこまでのものには見えなかった。
「いたってシンプルだな」
そうとしか言えなかった。
「確かに外見はいたってシンプルです。ですが中身が国宝級です」
『はっ?』と素で答えてしまった。
内容を聞いて納得してしまった。
アイツ!なんて物を押し付けてんだ。
そこで俺は気づいた。
「これがオークキングの使っていた武器か?」
「いえ、これはジェネラルの武器だそうですよ、もう1本ありましたけど、シノブさんが気に入ったらしく、こちらだけを譲ってくれるそうです」
おいおいマジかよ!
確かアイツ、キングの武器も報酬として貰うとか言ってたよな!
これだけでもヤバイのに、これと同等もしくは、それ以上の武器が後、2つもあるのか!?
そこへ、アンリが帰ってきた。
「ギルマス只今、戻りました」
「随分、時間掛かったな?······シノブは来ていない様だが、いなかったのか?」
「それがですね」
アンリの報告を受けた俺はギルド長室に戻り、シノブの行動について考えていた。
北の森に行っただと?
あそこは、ブラッディーベアーの縄張りがある、無闇に近づかなければ、襲ってくることはない、だからギルドも、積極的に討伐しようとは思わなかった。
シノブ、頼むから余計なことをしてくれるなよ。
一方その頃、忍は。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
忍side
「もふもふ最高ーーーゲヘヘ♥️」
ヨダレを垂らしながら、アカツキをもふもふしていた。
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