【短編】オッカケイチゴウ
雨なのに
第1話
私はバンドに憧れる17歳。高校生。
憧れるけど楽器は弾けなくて。歌もそんなにうまくない。だけど、バンドをやってる人たちのキラキラした目。緊張してるのにそれを吹き飛ばすように大きな声。大きな音。
せめて、ライブハウスに通う女の子になりたいな…なんて。安いチケットを探して通っている。
前座のバンドは、まだ練習中で音楽を聴くと言うよりは、みんなで応援しようみたいな雰囲気。でも最近、ライブハウススターダストのバイトのお兄さんが新しいバンドを組んだらしく、そのバンドは全然上手くて、プロになれるんじゃないの?くらいのクオリティ。
ギターはバイトの透真さん。ロングソバージュがとっても似合う細身のお兄さん。
そのお友達でドラムがすごくかっこいい蟹江さん。蟹江さんは蟹とか蟹くんて呼ばれていて、紹介の時も蟹ポーズをしてくれる。すごく気さくなお兄さん。
ベースはすごく静かであまり喋らないクール系美青年の海老名さん。海老て呼ばれてて蟹海老コンビだなぁと思うけど、ステージではメンバーとあまり絡まない。
ボーカルは晶叶さん。
かわいい。とにかく。細くて、タンクトップを二枚重ねで着てる。みかんみたいなオレンジ色のマッシュで、前髪で目を隠してるけど、ステージ下からは見えてて、タレ目の瞳がすごく私にささる。
新人のバンドの前座でSODA FISHは演奏する。
スターダストでのライブチケットは、新人のバンドが初めてのワンマン!だと安い。
SODA FISHの演奏は2曲だけ。
最初に透真さんが
「まだ持ち歌無くて、Room Rec.にお世話になってます。レンタルスタジオRec.よろしくね。」
とMCをする。最初は意味がわからなかった。
持ち歌がないから、Room Rec.というバンドの歌を歌っているということ?レンタルスタジオRec.と関係あるのかな…。
1週間ずっと考えているうちに思いついた。
スタジオRec.の店長さんがRoom Rec.のギタリストだったのだ。
これは放課後にチェックしなければ…。
土曜の授業の後、忘れないように手帳に書いた。
「Rec.▷アキさん調査にいく!」
【短編】オッカケイチゴウ 雨なのに @amenanoni
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