第2話「このプレイリストは、何かおかしい」

「再生数は、たったの47回です」

若手社員・佐伯は、プロジェクターに映し出されたグラフを指差した。

「でも、CTRが異常に高い。しかも、広告主の滞在時間が平均の3.7倍。これは……」

部屋に沈黙が落ちた。

広報部長の白石が、腕を組んだまま言った。

「名前は?」

「synapse8989。個人名義ではありません。プロフィールも空白。再生リストのタイトルは……」

佐伯は一瞬、言葉を詰まらせた。

「『誰にも再生されないための音楽』です」

会議室に、笑いは起きなかった。

むしろ、誰もがそのタイトルの意味を、直感的に理解してしまったからだ。

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