再生されない少年

synapse8989

第1話 プレイリストは見ていた

僕は、何のとりえもない音楽好きの高校生だった。

放課後、誰にも見せないプレイリストを組むのが、唯一の趣味だった。

ある日、何気なくそのリストを公開した。

タイトルは『誰にも再生されないための音楽』。

翌朝、Googleの社内Slackがざわついた。

「このリスト、何者だ?」

「再生数は低いのに、広告主の動きが異常だ」

「アルゴリズムが“感情”を検出している」

その日から、僕の知らないところで、

ユニリーバ、KADOKAWA、Spotify、TikTok Japan、そしてMeta Japanが、

僕の“発見者”を名乗るための水面下の戦いを始めた。

だが、僕は何も知らない。

ただ、次のプレイリストを組むことだけを考えていた。

これは、制度がまだ気づいていない“詩の力”に、

世界が静かに侵食されていく物語である。

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