異世界が 地球に来ちゃった 来るなボケ by地球人 心の詩

過ごす

第1話 さて、異世界がやってきたぜ!

いやはや、異世界滅亡とは唐突に来るものである。


さて、今は2100年。記念すべき22世紀である。

ちょっといろいろ滅んでるけどそこはご容赦を。


2095年、異世界がやってきた。何を言ってるのかわからねえと思うが、事実だ。どうしようもない。しかも、2個。


カオスだね。


機械に異能に魔法。もうやめてくれぇと叫びたいところではあるが、叫んだらレーザーで撃たれ、魔法で燃やされる。よって不可能。Q.E.D.


異世界転生で有名な日本からすれば、「お前らのほうからやってくるんじゃねえボケ!」といった感じである。


自衛隊が無双している漫画もあるが…てかあいつらやったが…冷静に考えろ。自分たちより発展している文明にどうやって勝てと?アドバンテージゼロじゃねえか。


―——5年前、いきなり3つの世界がつながった。原因?知らんね。文明が未熟な地球人にわかるわけなかろうが。


他の世界から異世界人が侵略してきた。それに合わせ、天変地異が地球を襲う。多くの国が滅びた。


世界は大混乱。2つの世界にとって地球は当然警戒対象だった。…最初だけ。すぐに地球は未発達の文明だと気づかれる。どうやら2つの世界は地球に割り込む形で転移して来たらしい。


太平洋上に二つ大陸が増えたときはびっくりしたもんだ。


機械文明が発達した『機界』

魔法が生活の一部として用いられる『魔界』


この二つが地球とつながった。


異世界「ちょっとゴメンね☆わりこむね!」

地球「何してんじゃワレェ!」

異世界「はぁぁぁ!?うるせぇな〇ね!」

地球「はぇ?」

みたいな感じ。


そして実力行使。外交は大失敗。ファンタジーにもSFにも地球は勝てないのさ。


でも、どうやら故意でこちらに来た訳ではないらしい。でもまあそりゃ弱いやつがいるんだったら搾取するよね、という話である。


どの世界も弱肉強食。平和ボケした地球など敵ではないのだろう。

おまけに異世界転移の影響で気候やその他様々が世界中で狂ったらしい。畑は育たず異常気象も止まらない。


異世界「じゃあ土地頂戴!」

ボコされ地球「スゥーッ、アッハイ、ドーゾ」

異世界「うーんでも生ぬるいかなぁ?じゃあ滅ぼしとくか!平和だね!」

ボコされ地球「はぇ?(爆死☆)」


イマココ。


地球の主だった国は既に天災により崩壊し、生き残った人々はなぜかゲリラ戦を続けている。地球〇衛軍かな?ちょっと違うか。


んで土地を残りの二世界で取り合ってるのが現状です。残りの地球人なぞ恐るるに足らん!て感じかね。


でもなぜか挫けないのが日本だ。マジで本土決戦戦やろうとした修羅の国ですからね。


世界トップクラスの技術力でもって相手の技術を解析。何とか劣化版を作るまでたどり着いた。日本はちっちゃい島国だ。攻撃の目標としては一番最後に回されていたらしい。


そして反撃開始ィ!!!ではなく。フツーに国は崩壊した。技術の粋を集めた兵器が効かなかったとき、総理大臣がパニクって「転生者を呼んで来い!」と国会で叫んだのはいい思い出だ。


よく考えるべきだ。戦争で全力出さないアホとかいるわけがない。てかまず劣化版が効くはずないのはわかってただろうに。


まあ終わったことはしゃーない。いまだに総理の発言は生存者の会話の中で擦りまわされてるけど。もはや可哀そうだよ。


侵略を生き残った人々は隠れ暮らしている。それでも、奴らは侵攻してくる。だから、戦い続けている。


滅びた首都、東京の一角にある廃ビルの屋上でコーヒーを淹れながら、そんなことを考える。


「まあ、そう簡単には死んでやらねえよ!あいつらがいなくなるまで生き残―――


ドン、と音がする。それと同時に腕が吹き飛ぶ。


「がぁッ!?なっ、どこからっ!」


男が辺りを見回すが、それらしきものは見当たらない。

2回目の銃声。そして、男の頭が吹き飛んだ。


―――――


「ターゲット、排除。」


男のビルから数キロ離れたビルで、少女がつぶやく。


「1発外しちゃったか。―――『レールガン排熱バルブ、開放』」

ガンメタルの銃身から、熱気が噴き出す。そのライフルは少女の腕と一体化していた。

「『変形機構メタモルフォーゼ』…よし、回収するか」

ライフルが変形し、銃鉄色の腕の形を成す。


少女は転生者であった。チートはない。『機界』出身である。

機界には『帝国』と『共和国』の二つの国が存在する。


この二つの国はいつも国境で争っていた。


『帝国』は身分重視の国で、皇帝を長とし、皇族や貴族、占領された国の民族などは奴隷階級として生きている。身分の差による階級制度が覆ることは、決してない。


―――――


転生したときは、何かあるのではないかと期待した。チートでもあればいいと思った。まあそんなものはなかったけど。


小さいころから農作業や軍需工場に従事し、体と精神をすり減らすだけの日々。神様とやらがいたならば随分と残酷なのだろう。だが、私には美しさがあった。


もしかしたら、神様に会った時に『うつくしさ』に全ステを振ってしまったのかもしれない。…いや、ないな、ないない。そんな自己承認欲求の化け物ではなかったと信じたい。


まあ、子供ながらにしてそこらの女性より飛びぬけて面がよかった。それが災いしたのだろう、貴族の令息に目をつけられた。これが9歳のこと。


逃げようとしたが捕まり、奴隷として嬲られる日々。その令息は随分と加虐的な性格で、私の手足を切断したり、目をくりぬいたりと、ずいぶんと苦労した。最初のほうはずっと絶叫していたものだ。


1年程がたち10歳を迎えたころ、私は用済みになった。ポイ捨てされたわけだ。まあ1年もあんなことをされれば瀕死になるのは目に見えている。


しかしながら殺すのは面倒だったようで、私は首都まで同じような境遇の少女達と共に不衛生なトラックにすし詰めにされて送られた。そして、軍の兵器開発のための実験台ラットになった。


あの時はこれ以上の地獄はないと思っていた。だが、そこからが一番の地獄だった。


プロジェクト『自動人形オートマタ』。生身の肉体を機械に置き換え、屈強な兵士を作り出すプロジェクトだ。


当時、サイボーグ化などはかなり行われていたが、それでも人体実験は禁忌とされていた。


それに真っ向からケンカを売ったのがこのプロジェクト。


そこまでの精密さと力強さを持たないサイボーグ化と違い、脳に義肢の操作を直結させ、特殊な機能を持つ人工内臓の移植などを行う。


女性は男性に比べ痛みに強いという事と、もし成功した場合を考え、成長性のある子供で行われた。壮絶な痛みだった。脳を直接弄られる体験はしてみないとわからないだろう。


およそこの世のものではないと思われる苦痛を要するからこそ、奴隷階級、つまりは人権を持たない者たちによって行われたのだ。


牢につながれ冷たい金属製の床で、実験を受ける少女たちの絶叫に耳をふさぎながら震えていた。あんな記憶は思い出したくもない。だが、あの実験を受けて尚、私は生き残った。


私は1代目の成功例。理性を失わなかった100体程の完全成功体だ。廃人になった失敗作は生ごみの廃棄場に捨てられたらしい。


そのあといきなり『兵器実験』と称して戦場に放り込まれたが、そこも何とか生き残ることができた。


その後も何度か改造を受けつつ最前線で戦ってきたが、首都では2代目、3代目と実験は続けられ、そのたびに新しい『自動人形』が共和国との戦線に送り込まれてきた。


私が古参として扱われるようになった18歳位のころに、世界がつながった。いや、私たちが迷い込んだというべきか。


血の染み込んだ戦場は休戦協定により空っぽとなり、国総出での地球への侵略が始まった。私は、最初アメリカへの遠征を命じられた。そこで爆撃を受けた自由の女神像を見つけ、初めてここが地球なのだと知った。


故郷に戻りたかった。親や妹に会いたかった。しかし其れは叶わない。監視装置がある以上、反逆や命令違反は死を意味する。脳を焼き切られるのだ。


そんな間に日本は崩壊した。世界中にゲリラ戦力が残っては居るが、全体で考えると人類の文明は滅亡したに等しいだろう。


しかし敵はゲリラだけではなく、魔界の者たちも含まれる。領地を取り合わなければならないのだ。


肥沃な土地を保有するようになった地球の中でも、日本は並外れていた。異世界が迷い込んだことにより奇跡的に作物を育てるのに究極まで適した土地。当然、取り合いになる。


ゲリラも無視はできない位に戦力を拡大していった。2つの文明はお互いに技術を盗まれないよう気を付けていたが、地球は警戒外だった。よって技術は盗まれ、融合される。劣化版と劣化版でも、合わせれば脅威となる。帝国はゲリラ、魔界、そして共和国の三方向の戦いを強いられることとなった。


そして私は日本に派遣され、今に至る。単身で送り込まれたため、かなり孤立している。今は通信もきかず、単独行動で命令された敵勢力の殲滅を行っている。


やれやれだぜ。本当に、地獄しかない。おまけに脳をいじった副作用で体の成長が14歳ほどで止まっている。身長は150センチも無い。ストレスで髪も真っ白だし。実際は23歳なのだが。よく妹が生理は辛いのだと話していたから、生理が来ないことについてだけは感謝する。


妹にも会いたいが、どこにいるのかも分からないし、この惨状ではもう死んでしまっているだろう。そう考えると吐き気がしてくる。


意識を現実に戻す。

「『スラスタ、起動』。」

機足からジェットが噴出し、大きく跳ぶ。男の死体があるビルまで何度か跳び、屋上に着地する。


「『物質倉庫ストレージ、展開。錬成ケミストリー超振動ソニックナイフ』。」


特殊な物質を、体や武器の代替物質となる『代替物質マテリアル』として保存する特殊技術。私たち自動人形オートマタは子宮を物質倉庫に置き換える手術を受けている。帝国の技術の粋だ。


その特殊物質を組み合わせ、自ら振動する物質を作り出す。それを刃物の形に形成しているというわけだ。要するに、疑似3Dプリンター。以上。


その強力な性質故に長時間形を維持することのできない物質だが、その破壊力は鋼鉄をゆうに切り裂くほど。


そのナイフで男の体をバラバラに切り分ける。

「はーあ、今日も人肉焼きかぁ…」


んぇ?大分倫理観が死滅してきてるなぁ…男の尊厳なんかは一瞬で消滅したけど。前世から持ってきたものがどんどん消えてるぅ…おっと、子供のころの人格が出ているな。


有機代替物質バイオマテリアルは有機物からしか接種できない。最初期の実験体であり、日々自壊と再生を繰り返している欠陥品である私の体は有機代替物質バイオマテリアルを消費しなければ維持できないのだ。


一度死んだ身でありながら、醜く生に執着する。


まだ死ねない未練ばかりがある。そうやって沢山の命を犠牲にしながら生きていく。己のことながら、醜さに反吐が出そうだ。

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