第3話 案内人だそうですよ。
ゲートを抜けた先はレンガで出来た家々が立ち並ぶ西洋の町だった。
周りにいる人々は活気に溢れ、老若男女問わず町を行き来しているのが見える。
また道は石畳で整備されているが、中世の世界観の割に近代と遜色のない歩きやすさのように思える。
また目の前には大きな噴水が存在している。そしてそこから円形に道が分かれており、ここが町の広場であることが伺える。
「すげぇ。」
人々の活気。肌に触れる風。匂い。目に映る光。全てが現実と殆ど変わらないことをダイレクトに伝えてくる。
また建物や地面。街並み。その隅々から確かな歴史を感じ取ることができる。少なくともCGで作った物体をただ置いただけじゃ表せない存在感が確かにあった。
VRとはここまで進化していたのか。という驚きがオレの中に飛来する。少なくとも世界初のVRだというのにありえないと思えるほどに完成度が高かった。
「すみません。ノヴァさんでしょうか。」
声がかけられる。その声に驚いて、体をびくっと跳ねさせてしまう。そして振り返ると可愛らしい少女がいた。彼女は茶髪であり、顔立ちは子供特有の利発さと柔和さが混じった顔であり優しさと元気がであった。また服装は服と一体型のスカートであり色は白と茶色が混ざった色であり少々ボロいと感じた。服に傷も軽く見えるのもそれを加速させた。しかしそれでもしっかりと手入れがされていることがわかる。それが清潔感を持たせ少女を引き立たせる服装であるのは間違いなかった。そんな可愛らしい少女であったが気になる点が一つ。
それは・・・
「君は?それに、そのチュートリアル係、と書かれたタスキは?」
そう今日の主役!とでも書かれてそうなタスキを掛けていたのだ。これはとても目立つ。すくなくとも中世の町娘がつけていたらシュールな笑いが起きるのは確実だ。
実際にオレは笑いそうになりながら質問をしている。
「あ、これは異邦者の皆さんにわかりやすいようにって渡されたものなんです。」
そのように彼女はタスキを持ち上げながら喋る。その姿は小動物を連想させ可愛らしく映る。
「まずは自己紹介ですね。私はミリアといいます。ちゅーとりあるの間よろしくお願いします。」
そういって彼女は握手を求めてか手を差し出してきた。
「あぁ、よろしくお願いするよ。オレはノヴァ。チュートリアルといってもどうすればいいのかな?」
オレはそれに応じて握手する。瞬間、目の前にメッセージが現れる。
『クエスト:チュートリアルの始まり 難易度☆0』
彼女とクエスト情報からチュートリアルを完了させよう。
※クエストが進んだら音がなるから注意しよう
なるほどこのようにすればいいのか。
「クエストが発生したのですよね?したのならばギルドまで行きましょう。そこで更に詳しく説明が入るはずです。」
「わかった。じゃあそこまで道案内できるかな?」
その言葉が終わるぐらいにだろうかピロンという機械音が聞こえた。
クエスト情報の更新だろう。
情報については歩きながら確認しようと考え、ミリアと共にギルドに向かう。
そして更新されたクエスト情報を見ると、クエストの目的地を示すマーカーを出せること。移動の際にスタミナといったものは消費されないことが書かれていた。
「ゲームでスタミナ消費しながらダッシュするのめんどくさいからこれはありがたいな。」
「?」
「ああいや、なんでもない。」
しかし住人の反応がリアルだと感じる。AIも進化したものだ。これなら従来のRPGのように遊ぶのではなく、常にロールプレイをして遊んだほうが面白いだろうな。
そうだチュートリアルが終わったらどのようなロールプレイをするのか考えてみるのもいいかもしれないな。
そんなことを考えながら周りを見渡してみる。
どうやら武器や防具といった戦いのために必要なものが多く売られているように見える。それはミリアが進む先に行くほど多くなっているような印象を受ける。
ギルドといえば戦い。そういったものが必要になった時に近い方が買いやすい。そういった理由だろうか。
また少年少女がおり楽しげに遊んでいる姿も見える。ふと別の場所をみれば猫があくびをしていた。塀の上でうたたねとはお猫様は呑気なものだ。また別の場所を見れば妙齢の女性が談笑をしているのが見える。ふと聞こえてくる内容からして下世話な話なのだろう。ゲームでも現実でもおばあ様方が集まれば噂話であるのは間違いない。
周りを見渡していて思考が巡ったのが悪いのだろうか不気味な考えが頭をよぎった。軽く見渡しただけでも多くの情報があり、それらが本格的なリアルさを演出していた。普通は凄い、面白いといった感想を抱くのだろうがそれにオレは恐ろしいさを感じた。いわゆる不気味の谷現象とでもいうのだろうか、作り物の世界だというのに本物と変わらない。本当に生きているとしか思えなかったのだ。偽物だと解っているのにそれでも本能や心が本当にあると囁くのだ。それがなんとも奇妙なバランスで存在しており、無限の思考に囚われそうになる。本物じゃないのか、いや違う。まるでそれはアイデンティティの喪失とも似通っており、トラウマを呼び起こしそうになる。
ふと日差しが目の前をチラつき、思考から解き放たれる。
無事に目的地らしき場所に辿りつく。
そこは大きな木造の建物であり、周りが石で出来た建物であるためか場違いという感想がでる。しかしこれぞファンタジーとでもいうべきだろうか、異世界の冒険者ギルドといえばの風情を確かに感じる。
ウエスタンな映画でしかみたことのないような両開きの扉に、大きな看板。どこからどうみてもギルドであることは間違いなかった。
これを作ったやつは余程、アニメや漫画をみていたに違いない。
「ここがギルドかい?でかいな。少なくともここら辺にある建物3つ分はあるぞ」
「はい、そうです。では中に案内しますね。」
そういわれてオレはギルドの中に入る。
──────────────────
はいどうもsinimukuroです。
ちょっと発狂していたノヴァ君ですが、可哀そうでしたね。
でも実際リアルなVRMMOがあったら怖さが出てくると思うのですよ。といっても今回彼はアイデアでファンブルしたんですね。可哀そう。正気度喪失1ね。
本来なら現実的な世界だからキーアイテムが必要でも別の解法がだせるようになってるのでは?というヒントを上げるイベントなのに。
マンチキン御用達なのに。
今日の設定開示 『ギルド』
ギルドといばどのようなものが思い浮かぶだろうか。大昔では組合、つまり利権の塊ともいうべき団体だったそうだが、現代ではファンタジーで登場するなんでもや斡旋所というべきだろう。しかも何故か戦力を国に依存しないで持っているとかいうアホアホな場所である。この世界のギルドはそんなアホ設定なギルドである。つまりみんな知っているあのギルドなのだ。
ふわふわファンタジーギルド 爆誕!
どうやってそんなギルドつくったのこの世界?
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