第4話 八百長の由来
六年二組の教室。
担任が授業を進めています。
「それじゃあ今日の国語の授業はインターネットを使わずに語源を調べてくる授業の続きになります。
前回の次の出席番号の針釘崎、発表して下さい」
「はい。針釘崎光流です。僕は八百長の語源について調べてきたので発表します。
八百屋の語源について。明治時代に大相撲の年寄り伊勢ノ海五太夫が居ました。相撲部屋に出入りの八百屋の長兵衛さんが伊勢ノ海五太夫の機嫌を取るために囲碁でいつも態と負けていました。接戦になる様に計算して、バレないようにギリギリの所で負けていました。そうすると気分の良くなった伊勢ノ海五太夫が野菜を多く注文してくれるからです。
伊勢ノ海五太夫(超えられない壁)≫≫≫≫≫長兵衛
ある時、長兵衛さんと囲碁界最強人物の本因坊が囲碁で互角の戦いを繰り広げているのを、伊勢ノ海五太夫は偶然目撃します。伊勢ノ海五太夫は長兵衛さんが態と負けていた事に気付きます。
だから態と負ける事を八百屋の長兵衛さんを縮めて八百長と言います」
「ここからは僕の考察になります」
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長兵衛さんと本因坊の囲碁戦を目撃した伊勢ノ海五太夫は、混乱します(長兵衛さんが自身との対戦では態と負けていた事に気付かなったので)。
え、これは一体どうなってるんじゃ? 儂を含めた三者の棋力を並べるなら、どうなるんだ? つまりこういう事か。
伊勢ノ海五太夫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫(超えられない壁)本因坊≧長兵衛
「儂は、儂は、儂は、この世界で一番囲碁が強いんじゃー!!」
伊勢ノ海五太夫がそう叫んだ瞬間に次元の裂け目が発生しました。伊勢ノ海五太夫が、恐る恐る次元の裂け目に侵入すると、そこは五輪競技の選手村のような場所でした。
体は人間、頭部は黒い碁石の姿をした存在が話しかけて来ました。
「ゴッス、オイラは碁石の精霊だゴ。あんたが一億人目の伊勢ノ海五太夫だから、ここで締め切るゴ」
「一億人目の儂? 締め切る? なにがなんだか、何の話か儂にはサッパリ分からんのじゃが」
「説明するゴ。世界の数は三千世界、即ち千の三乗だから十億の世界があるんだゴ。即ち平行異世界だゴ。その世界の中には囲碁が無い世界、囲碁が発達していない世界、伊勢ノ海五太夫が居ない世界、伊勢ノ海五太夫が途中で死亡した世界、伊勢ノ海五太夫が囲碁に興味の無い世界、人間が居ない世界もあるんだゴ」
「平行異世界は必ずしも同一では無いと言うことじゃな。それで、締め切るとは何の話なんじゃ?」
「この後、一億人の伊勢ノ海五太夫に拠る囲碁大会を行うんだゴ。一億人に拠る総当たり戦で優勝者を決めるんだゴ」
規則が説明された。
伊勢ノ海五太夫一億人に拠る総当たり戦。
持ち時間は一局に付き二十時間ずつの一番勝負。
対局は一局ずつ行われ、同時に対局は行われない。
此処、次元の狭間では現世での時間は経過しないし、死亡することもない。
対局中以外は自由に過ごして良い。
全競技が終了するまでは、次元の狭間から出ることはできない。
一体いつまで此処に居ればいいんじゃろうか?
伊勢ノ海五太夫は全試合が終了するのに要するに必要な時間を計算してみた。
一局が終了するのに掛かる時間が40時間と仮定。
試合数は1億✖(1億マイナス1)÷2だから1億✖5千万=計算したくない。
途方もない時間が掛かるのだけは分かった。
そう、伊勢ノ海五太夫達は今も次元の狭間で囲碁を打ち続けているのです。
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担任の一言。
「針釘崎、途中迄は合っている。だが、後半は完全に蛇足だな。丁度いい、来週のこの時間迄に蛇足の由来を調べてきなさい。後、教室の後ろに立ってなさい」
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