第3話 お楽しみ会での漫才

 放課後、公園に居る三人の小学生。

 帰宅途中なので、近くにランドセルを置いている。

 男子生徒の一人は針釘崎光流。

 男子生徒のもう一人は回山陽郎であり、光流の幼馴染み兼親友である。

 女子生徒は布舞スミレ、光流の女友達では一番仲が良い。

 三人は同じクラス、六年二組。


 光流が口を開いた。

「明後日のお楽しみ会で漫才を披露するから、練習の成果を見せるんで可笑しい所があったらスグに突っこんでくれ。と言うか、漫才は意図的に可笑しい事をやってるんだから、可笑しくなきゃ、可笑しく無い事が可笑しい事になるな。まぁイイヤ、兎に角やってみるからさ。

 じゃあ始めるぞ。

 どうもどうも銀行でーす」

「どうもどうもどうも強盗だお」

「二人合わせて銀行強盗でーすだお」

光流と陽郎の声がハモった。



「はい、可笑しい可笑しい。

 何、銀行強盗ってコンビ名なの? 違うでしょ? 違うんでしょ。コンビ名って、A助です、B助です、二人合わせてAB助です、みたいな感じじゃないの?

 大体、銀行って建物でもあるけど施設名でしょ。企業名でもあるけど。今回の場合は施設ね。一方の強盗って、法律違反の犯罪行為でしょ、即ち行為。

 施設と行為は足し算出来ないのよ。単位の違う物は足しちゃいけないの。

 それに銀行が、強盗からの被害者のはずなのに、いつの間にか悪の一味みたいになってるでしょ。元々グルだった訳じゃないんだったら、意味が分からないわ。完全に可笑しいわよね」

 スミレが的確に突っ込みを入れた。


 光流が、納得した表情を作り、話し始める。

「分かった、この件は一時保留にして次のアイデアをいくぞ。

 フォッーフォッフォ、我は大王であーる」

「ハーッハッハッハ、余は鬼神なのじゃ」

「二人合わせてダイオキシンであーるなのじゃ」



女「はい、これも可笑しい可笑しい。

 それを言うんなら、そこは大王鬼神でしょ。

 ダイオキシンって有毒物質の事よ。

 意味が完全に変わってるじゃないの。

 それに大王の単位は人間だから人、鬼神の単位は神だから柱、単位が違うから足せないって言ったでしょ。ちゃんと理解してよ。先刻言ったばっかりだから急には直せないのは分かってるけど、一応、ツッコミとして言っておくわ」



「そうか、それじゃあこの件も保留にしよう。

 次のアイデアを披露するから、聞いててくれ。

 ハイハイハイハイハーイ、みなさん、みなさーーーーーん、聞いてくださいよ、この前ビックリした事があるんですよ。何があったと思いますか? 慌てなさんな、スグにお知らせしますから。耳の穴かっぽじってお待ちください。

 先日の日曜日の休みの休日に大都会の歩く歩道を歩いて居たら、すぐ近くの道、即ち道路を赤ん坊が超大型の軽自動車を運転していたんですよ。

 もうビックリビックリして目玉が飛び出して、オムライスになるかと思いましたよ」

「これが本当のベビーカーってね」



「やかましい、上手くもなんともないわよ。

 休みの休日って、頭痛が痛いと同じで二重表現だからね。日曜日も付いていたから、前代未聞の三重表現よ。

 そもそも歩く歩道って何よ? 歩く道って書いて歩道でしょ。歩道は普通に考えて歩くのが正解。一般的にはそう感じる筈よ。

  言いたいのは多分動く歩道ね。

  目玉が飛び出したら目玉焼きでしょ、ってコレもちょっと違うと思うけど。

 どっから『焼き』が来たのって思うでしょう。少なくともオムライスは関係ないわよ。御飯の要素が無いもの。

 ベビー+カー=ベビーカーって意味が違うわよ。

 何回も言うけど、足し算の仕方が間違ってるの。人と台は足せないの。単位を合わせなさいよ」

 スミレは少し呆れている。



「じゃあこれも保留で、次が最後。シンプルに行くから。

  ホームランです」

「バーだよ」

「二人合わせてホー○ランバー」



女「アイスでしょ。

  単位を合わせなさいよ。ホームランは本塁打だから単位は本。バーは棒だから単位は本。

  本と本で・・・・・・合ってるわね」 




 結局、お楽しみ会での漫才は、三人で行う事になった。

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