異世界で死神と呼ばれてます~私は魔王を呪い殺しただけなのに~
秋葉小雨(亜槌あるけ)
プロローグ
第1話 死神、自省する
これまでの、あらすじ。
私、
みんなのために魔王を倒してから百年後、いつの間にか『死神』と恐れられるようになっていました。
「って……何でそうなるのよ〜っ!!」
「どうかなさいましたか、ご主人様?」
家(ギルドハウス)の掃除をする傍ら、私の専属メイド・ソフィアが不思議そうに尋ねてくる。
この子は、家事だけは本当に完璧だ。家事だけは。
私のことが好きすぎるあまり、突然暴走しだすのが玉にキズだ。
私はどっちかというと、デレ100%よりもツンデレの方が好きなんだけどなぁ。
「ほら、私って死神って呼ばれてて、みんなから怖がられてるでしょ? それをなんとかしたいなぁって……」
「何故です? この世の最頂点であり、世界最強であるご主人様が下々の者から畏れられるのは当然だと思いますわ。それの何がいけないんですの?」
「いや、私はみんなと仲良くなりたいのよ。怖がられてたら、誰とも友達になれないでしょ?」
「ご主人様が友達を作りたいと仰るのなら、わたくしも応援するほかありませんが……はぁっ、どうしましょう。ご主人様にわたくし以外の誰かが近づくなんて、想像しただけで殺意が……!」
黒い大剣をいつの間にか取り出し、フーフーと荒い息を吐きながら文字通り目を光らせるソフィア。
せっかくの美人が台無しだ。ヤンデレは嫌いじゃないけど、別に好きでもない。やめてくれ。
私よりも、この子の方がよっぽど死神っぽいんじゃないだろうか。
この子は役に立たなそうなので、自分で考えよう。ソフィアに相談した私がバカだった。
「……やっぱり、この家もいけないのかなぁ」
前から薄々思っていたが、私が家として使っているこのお城も、みんなを怖がらせる一因になっているのではないだろうか。
ここは、私がかつてマスターを務めていたギルドのギルドハウス——だったはずの場所。
気になって来てみたらも抜けの殻だったので、長らくお家として使っていたのだ。
私のギルドは、一言で言うと痛々しい中二病の集まりだった。マスターの私自身も、当然その一人だ。
私たちがどれぐらい中二病だったか、説明しよう。
創立時のメンバーと一緒に定めたギルドへの入団条件に、これでもかというほど私たちの中二具合が表れている。
条件は二つあった。
一つは、高レベル帯(Lv.90〜)であること。
そしてもう一つが、『
闇属性職業というのは、スキルのレベルアップに『強化珠・闇』を必要とする職業のことだ。
闇属性とだけあって、中二心をくすぐる格好いいものが多かった。
もちろん特定の職業や種族で固めたギルドにバランスなんてあったもんじゃない。こんなおかしなギルドに入る人は当然、もれなく中二病患者だった。
そんな私たちだから、ギルド会議の結果、『ギルドハウスは魔王城みたいなかっこいい城にしようぜ!』と満場一致で決まり。
そして、ハウジング大好きな数名の仲間の尽力によって出来上がったのが、このいかめしい漆黒の城だった。
照明はロウソクだけなので薄暗く、ドラゴンの石像やドクロなど、いかにも魔王城っぽい飾りで埋め尽くされている。
しかも、極めつけはこの立地。
普通の人なら誰も住みたがらないようなその小高い丘に、この城はぽつんと建っている。
ダンジョンと勘違いして門の前をうろうろする初心者が後を絶たなかったのは、今では懐かしい話だ。
「やっぱり、引っ越しするべきかなぁ……」
いや。もしかしたら、このお城以外にも問題はあったのかもしれない。
畏れられるようになってからというもの、私は家の中からほとんど一歩も出なかった。みんなから畏怖の眼差しで見られたらと思うと怖くて。
それと、この真っ黒の
そもそも、いつまでも大鎌を持った
う〜ん……でもなぁ。
ソーサラーは私のポリシーと言っても過言ではない。
いつでも自由に職業を変えられるアルカナムファブラ・オンラインで、ほぼ全く職業を変えたことがないぐらい私は
なぜなら、かっこいいから。やっぱり、ここはどうしても譲れない。
でもきっと、他にも改善できるところはいっぱいあるはずだよね! うん。
よーし、引きこもり生活は今日でおしまいだ。今日から心機一転、憧れの『普通の女の子らしいキラキラ青春ライフ』を目指して頑張るぞ!
そもそも、どうして普通の
そのわけは、今から百年前に遡る。
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