EtudeⅡ VIOLET

 病室の窓辺に活けられた花瓶の花。それを見ながら君は最期の夢を見る。



 ここはどこ?なんだか懐かしい、あの日の香りがする。


 ここは⋯⋯。ここはいつもの台所。リビングルームにいるあなた。頑張って美味しい料理を作らないと。


 ここは⋯⋯。ここは二階の書斎。あなたの仕事場。紅茶を淹れた。冷めないうちにあなたのもとへ。


 ここは⋯⋯。ここはリビングルーム。窓から外の景色を眺めるあなたの後ろ姿。夕陽、消えていく。


 ここは⋯⋯。ここはケンカをしたベッドルーム。どうせなら笑っていれば良かったのに。



 風が吹く。窓辺の花瓶に活けられた花の芳香が部屋中を彩り、夕陽を見ていたあなたが心地よさそうにこちらを見て私の名を呟く。


『スミレ』


 何故だろう。涙が込み上げた。いつもと同じなのに……。同じ風景のはずなのに……。どうして?



 何もかも変わらずにはいられない。私の過ごした時間はもう思い出でしかない。そしてその記憶ももう……あとどれくらいの命なのだろうか。



 〜スミレ〜


 いつかは枯れる生命いのち



「きれいなスミレ」


「なんだか、しずかだなぁ」



『ピーーーーーーーーーー』《電子音》


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近未来的私小説『永遠は凪いだ空色の味がした』 空花凪紗 @Arkasha

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