滅んだ世界をもう一度

たまごっと

第0話 滅びの記憶

──初めから、分かっていた。


私たちじゃ、あれ には敵わない。

どれだけ剣を振るっても、どれだけ魔術を重ねても、

黒い嵐のように広がる“異形”の前では、全部──無意味だった。


初めから、分かっていた。

私にはみんなを守る力なんてなかった。

鼓動が震え続けるほど怖くて、

それでも前に立つしかなかった私には、何もできなかった。


目の前で、大切な人が死んでいく。目の前で、助けたい人が死んでいく。


私のせいで、みんなを助けられなかった。

逃げろと言われても、後ろを振り返れば泣きながら手を伸ばす仲間がいて。

それでも私は助けることができず、ただ足を動かすことしかできなかった。


あいつらに対抗できると思った私が間違っていた。

選ばれた者のつもりでいた浅はかな自分が、今でも胸を刺す。

背負うには重すぎた。

背負ってはいけなかった。

それでも背負ってしまった──だから、全部壊れた。


あの夜、世界がひび割れる音を聞いた気がした。

空が赤く染まり、光が飲み込まれ、

誰かの絶叫が消えるのと同時に、私の心も終わった。


あの時の光景が、焼きついて離れない。

助けられなかった手。

呼ぶ声。

届かなかった願い。

そして最後に残ったのは、私だけだった。


……私は、あの日の私を許さない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

滅んだ世界をもう一度 たまごっと @kou1118

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ