第9話怪盗Xからの挑戦状
【プロローグ】
その知らせは、警視庁に激震を走らせた。
――世界的怪盗・X(エックス)から、予告状が届いたのである。
《12月某日、貴警視庁の重要データをすべていただく。
東京、いや日本を大混乱に陥れるとしよう――怪盗X》
警視庁内は蜂の巣をつついたような騒ぎだ。
だが重要データは、
本庁地下50メートル、完全オフラインの保管室に収められ、
八重のセキュリティと鉄壁の警備で守られている。
普通なら盗めるはずがない。
だが――相手は怪盗X。
芋三郎刑事は、怪盗の魔の手から重要データを守り切れるのか!?
【解決編】
広瀬「大変なことになりましたね、芋三郎さん!」
芋三郎「ああ……怪盗Xは今まで狙った獲物を一度も外していない。
先月もルーブル美術館から絵画を盗み出したばかりだ」
広瀬「ひえぇ……」
芋三郎「まずはセキュリティの再チェックをしよう」
広瀬は資料を広げる。
広瀬「重要データがあるコンピュータールームは、本庁の地下50メートルです」
芋三郎「50メートル……深いな」
広瀬「そこに至るまでセキュリティチェック8回、監視カメラ200台、
警察犬300匹が並ぶ超厳重態勢です」
そこへ、ヒール音を響かせながら一人の女性が現れた。
「まだあるわよ」
芋三郎「きみは……科捜研の柳玲子(やなぎれいこ)君じゃないか」
玲子「ごぶさたしてますわ、芋三郎刑事」
広瀬「えっ!? “美人すぎる科学捜査官”で有名な!?」
玲子「今回は科捜研からも協力するわ。
これを見てちょうだい」
玲子がボタンを押すと、携行型の奇妙な装置が光った。
玲子「超高熱レーザー照射網。コンピュータールームの周囲に張り巡らせれば
――誰一人として侵入は不可能よ」
広瀬「科捜研ってそんなことまでやるんですね」
◆ 予告当日 ― 警視庁前
怪盗X(長官に変装中)「ふっ……警察が三千人はいるな。
だが私の変装を見破れる者など存在しない」
堂々と長官の顔で入り口を突破し、
あっさりと地下へ向かう怪盗X。
すれ違う警官たちが次々と敬礼する。
警官A「長官、お疲れ様です!」
怪盗X「うむ(低音ボイス)」
セキュリティゲートも音声認証も、
“長官”なのでノーパスで突破していく。
◆ コンピュータールーム前
怪盗X「あらあら……レーザーセキュリティとは。なかなか面白い」
装置を5秒眺め――
コンセントを抜いた。
フシューン(レーザー消失)
怪盗X「……甘いな。電源式とは」
堂々と部屋の中へ入る怪盗X。
◆ 一時間後
本物の長官「やあ、皆の者。ご苦労!」
広瀬「長官!? さっき地下へ行きましたよね!?」
芋三郎「……しまった。あれが怪盗Xだ!」
二人は全速力で地下へ向かった。
バンッ!(扉を開く音)
そこには、パソコンの前で肩を落とす怪盗Xの姿があった。
怪盗X「……盗めなかった……この私がだ……」
広瀬「なぜだ!? ここまで侵入できたのに!」
芋三郎「怪盗Xほどの実力者が、何に苦戦したというんだ?」
怪盗Xは、机を指さして叫んだ。
「なんでこのパソコン……
**5インチ フロッピーディスクしか対応してねぇんだよ!!」」
USBメモリを壁に投げつけ、
ブラウン管テレビを蹴飛ばす怪盗X。
怪盗X「いつの時代の環境だよここはっ!!!」
そのとき、老人の管理者が段ボール箱を抱えてやってきた。
老人「だってさぁ……まだ使えるからって、新しいの買ってくれないんだよ……」
大量のフロッピーディスクが入った。段ボールには「重要データ」とマジックでデカデカと書かれていた。
広瀬「……怪盗X、窃盗未遂の容疑で現行犯逮捕します」
芋三郎は落ちていたフロッピーを拾い上げる。
芋三郎「……懐かしい。スーパー大戦略じゃないか」
広瀬「なんすかそれ……?」
こうして事件は解決した。
――が、護送中に手柄を横取りしに来た神奈川県警ともめている間に
怪盗Xは逃走したという。
警察官「……あの県警、またかよ……」
怪盗X「くそぅ…次はこうはいかないぞ!」
――FileNo.09 完。
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