性別と自己を問い続けるピアニストの生を描いた短編。音楽は逃避ではなく告白であると感じました。誰にも理解されなくても、それでも生きることを選ぶ結末に惹かれました。
拝読しました。これは短編で終わらせるには、あまりにもテーマが深く、そして今、書かれるべき物語だと感じます。ここの描写、経緯、入り混じる、世界観における個々の感情と境遇、そして音に対する重み。呼吸や指先の震えまで描写等。ぜひ、長編化を検討してほしいです。お勧めしたい作品でした。ありがとうございます
ピアニストの奏に、百合子と恭一郎が想いを寄せますが、奏には事情があって二人の気持ちには応えられません。その理由が何とも言えないもので、奏が“自分らしく”生きるにはといった問いかけが出てきます。百合子と恭一郎も奏への想いは誠実なものですが、その想いが奏を苦しめるのが切ないです。時代背景もあり、奏のような人をひとりの人間として愛することが世間的にも難しいのもあると思いました。そんな奏はどういう道を選ぶのか、そこまでの様子がピアノの楽曲を交えて丁寧に表現されています。おすすめです。
静寂の中で、鍵盤に指を落とした瞬間に響くピアノの音。減衰していくその儚さと、幾度も打ち付けるような激しさに心が揺さぶられる、そんな作品でした。
これはただの恋愛小説でも、歴史小説でもありません。音楽・時代・身体・アイデンティティ、そのすべてを一つの旋律に編み上げた完成度の高い文学作品です。大正という時代の抑圧を背景に、「男でも女でもない〈奏でる者〉」の生を真正面から描き切る覚悟と誠実さが圧倒的。三人それぞれの視点が重なり合い、すれ違い、最後に“音”だけが真実として残る構成は見事の一言です。派手さに頼らず、感情を煽らず、それでも確実に心を打ち抜く。読み終えたあと、しばらく月光が頭から離れません。